第2話 決勝戦
グラウンドに着いたのは俺が最後だった。
「おせーぞ蓮!」「もうアップ始まんぞ!」
とチームメイトが急かしてくる。
背番号10がつけられたユニフォーム着てソックスを履く。NIKEのスパイクを履きルーティーンの右から紐をきつく縛り監督の待つ場所へ小走りで向かった。
集合すると丸く円になり後ろに手を組み、監督の話を聞く。
「よし、全員集まったな。
おはよう!」
全員に呼びかけた。
「「「「おはようございます!!!!」」」」
全員の気の入った挨拶を聞き、監督はニヤリと口角を上げた。
「気合いは十分だな──
今日は待ちに待った決勝だ。これまでの相手よりも遥かに強いFCバンズ。全日優勝候補のチームの一つだ」
そう言うと監督は選手一人一人の目を見ていく。
「気持ちで負けるなよ。まずは声で勝て!!」
「「「「しゃあぁッッッ!!!!」」」」
選手達は勢いをつけFCバンズに負けない声量でアップに取り掛かった。
集中してアップを始めて30分。
体を温め終わり荷物をベンチに運んでいる。
今日の俺のボールタッチは完璧。
足に吸い付くようにボールが乱れない。
他の選手も目立って調子が悪い奴はいない。
俺たちなら、出来る。
これに勝って全国に出てやる。
「おい、あれJユースのスカウトじゃね?!」
何人かそれらしき人達が立っている場所を指さしている。
「おい蓮!見に来てるぜお前のこと!!」
青いスタンドの上の方に二人で見に来てるのが多分そうだ。
「さすがJユース…見る目あるじゃねぇか」
鼻の下を擦りながらふざけたように言うと「調子乗んなよ蓮!!」と背中をバンっと叩かれた。手跡ができてそうだ…背中がジンジンするぜ。
蓮は右手で背中を擦りながらそのまま歩いた。
荷物を運び終え、ベンチに着くとさっきまでのふざけあった会話は無くなった。
選手一人一人から「必ず勝つ」という強い思いがベンチいっぱいに放たれていた。
それはもちろん応援に来ている親、そしてここまで選手を指導してきた監督も。
───これに勝って全国だ。
監督が戦術ボードを持って前に立つ。
ボードには準決勝と変わらないスタメンが書かれている。
フォーメーション 3-1-2-1
GK 今大会無失点の
CB 背の高いキャプテン
SB 体力お化けの
AN スーパーパサーの
CMF スピードスターの
FW 俺
監督がマグネットを動かして最後の確認をする。選手達は静かに、闘志を燃やしながら集中して聞いた。
『ピピーッ!!』主審が笛を鳴らした。最後のミーティングが終わる合図だ。
監督はミーティングを終え、チーム全員で円陣を組んだ。
「頭は冷静に、プレーは熱く。
笛がなるまでやめるなよ。
最後までやり切って勝ってこい。
よぉしっ!行ってこいッッ!!!!!」
両隣の背を全員バシンッと叩いた瞬間──
「「「「「行くぞッッ!!!!!」」」」」
キャプテンの大西が大声を出して弾けた。
俺たちはハーフラインの外側に向かい列を作って並んだ。番号、爪、レガース、スパイクを審判に見てもらってから主審の合図で緑色の芝生の中にチーム揃って足を踏み入れた。
コートの真ん中まで行き、ベンチ側に挨拶、反対のスタンド側に挨拶をする。主審と副審に握手をしてから手を合わせる程度で相手チームとも挨拶を交わす。
両チームともキャプテンだけが審判の所に残りボールと場所を決める。
俺たちは先に円陣の形を組み大西を待つ。
「相手ボール、コートはこのまま」
大西が来て輪の中に入る。
「気合い入れていこう!」
「声出してこ!」
「気持ちでまず勝とう!」
「立ち上がり集中!」
「まず一点!」
「走りきろう!」
「全部勝ちきろう!」
「──行くぞッッッ!!!」
「「「「「「しゃあッッッ!!!!!」」」」」」
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