第60話
それに対してあゆみは杖の先で迫ってきた石を突き返した。
ゴンッ!
鈍い音が響き渡り石は天高く跳ねあがる……。が、石から黒いモヤが噴き出したかと想うとフワッと石を包み込んで受け取める。
「中々の攻撃だな。しかし、それだけの力を使っているという事は身体の方にも相当負担がかかっているのだろう」
「くっ!」
その言葉を聞いてあゆみは呻きながら地面に片膝を付いてうずくまる。
「ふははははははははは。やはり相当効いていると見える。漸くだ、漸く、ここで巫女への復讐を果たすことができる。貴様の中に流れる巫女の血が己を苦しめる事になるとは思いもよらなかったであろうな」
ヘビは己が金鞠に放った呪が効いていると見て
「あ、あゆみっ。だ、大丈夫かい?」
「ひ、ひみか。だ、大丈夫、心配しくていいよ。君は陰に隠れててくれ」
「で、でも……」
「ふん。そうだな、まずは雪女の小娘から片付けてやるとしよう」
ぐるるるるっるるるるるるるるっるる……
凄まじい唸り声が辺りに響き渡ったかと想うと、黒いモヤの中から1メートル程のヘビが八体現れてひみかの元へと襲い掛かかる。
「させるか!」
天から彼女の元へ襲い掛かかろうとしてくるヘビの集団を飛び上がると向かいうつ構えを見せた。
「きしゃっ~!」
甲高く声を上げながらウネウネと身体をくねらせている。
あゆみはその中に飛び込んでいき、まず二体同時にまとめて横一閃する。そちらに気を取られている間にもう一匹横から飛び掛かって来たが、それを今度は上から振り下ろして打ち倒した勢いに任せて真下から迫りくるもう一匹の頭に突き立てる。が、それらの相手をしている間にヘビの内の三体が既にひみかの傍まで近づいてしまっていることに気づく。
「うわっ。あ、あゆみ~」
「ひみか! させないぞ」
あゆみは手に持っていた剛霊杖を彼女に迫るヘビ達に向かって放り投げる。すると杖はグルグルと回転しながらヘビ達を撃破していく。
一方杖を失い無手の状態となったあゆみに向かって一体のヘビが正面から飛び掛かって来た。が、彼は慌てず騒ぐことをしない。
その場で「霊威闘拳!」と叫んで左手に力を込めた。それは霊力を身体の一部にこめる彼の必殺技の一つだ。
「ぐるぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
光の拳によるアッパーカットがヘビの顔面真下にぶち当たりたまらずノックダウン状態となる。残るは最後の一体を残すのみだったがそれも放物線を描いて戻ってきた杖が難なく打倒して、ヘビ軍団は壊滅する。
「ひみか! 無事だった?」
「うん。大丈夫だよ。でも、情けないね。自分の身も守れないなんてさ。君に負担をかけてしまってすまない」
申し訳なさそうな顔をして言うひみかにあゆみは力強く言葉を返す。
「何いってんのさ。今まで沢山助けて貰ったんだ。今度は僕がひみかを守る。僕を信じて安心して任せてよ」
「うん。勿論さ。信じてるに決まっているじゃないか」
言ってひみかはあゆみに身を寄せる。そこへ割り込むようにヘビの声が間近に聞こえてきた。
「はははははははははは。面白い、面白いぞ。金鞠の巫女よ。よくぞ私の分身たちを倒したな。しかし、それで身体が持つかな」
気が付くと黒のモヤを纏いすぐ近くまでヘビの石が近づいてきている。
「お前。まさか、それが目的だったのか」
ひみかを背に守るよう、彼女の腰に手を当てて半身を抱くようにしながらあゆみはヘビに険しい顔を向ける。
「ふふふふふふふふ。小娘を先に倒せればそれでよし。貴様が無駄に能力を使って身体をすりへらすならそれはそれで好都合という訳よ」
「くっ……」
嘲るようなその言葉にあゆみは一瞬呻いた後顔を下に向ける。
「ここまでのようだな。金鞠の巫女よ。もう抵抗しようにも出来まい。雪女の小娘と共に食らいつくしてくれるわ」
ブワッ
ヘビの叫びと共に黒いモヤの纏う闇が一層濃くなり、ひみかとあゆみの二人をつつみこんだ。
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