第43話
守の背中に乗せられてあゆみと真奈美は初めに集まった祠の地点に戻ってきた。
あの襲い掛かった沢山のヘビ達は住人達達が撃滅に成功していた。しかも、倒してしまった後にはその姿を消してしまい影も形もなくなってしまったという。
そして、ヘビ達と一緒に襲い掛かってきた望月イノリはビニールシートの上、目をつむったまま動かない状態で仰向けに倒れていた。その横にはあさかが心配そうに付き従っていた。
これは別に相手をしていたメアリーやあきな等との格闘によるものではなく、二人とやりあってる真っ最中に突然操り人形の針が切れたかのようにコテンと倒れたのだという。
「アタシはてっきりヘビをあんたらが倒したんじゃないかって想ったんだけどね」
あゆみ達に向かって襲い掛かってきたイノリの様子は明らかに正常なものではなかった。恐らく何らかの形で催眠状態や洗脳状態になり操られていたのは明白だ。
また、襲い掛かってきたヘビの群れも何らかの術によって生み出されたものだったのだと想われる。
「残念だけど、とても仕留めたとは言えない状態だよ。それどころか、ひみかがヘビに呑まれちゃったんだよ」
彼にとってそれは言い憎い言葉ではある。が、しかしその場にいるものに、まず報告しなければならない内容であることは事実だった。
「え! ちょっちょっと。どういうこと、それ?」
耳ざとくそれを聞きつけたらしいいまりがあゆみの傍に駆け寄ってきて言った。彼女にとってひみかは一番大事な幼馴染であり、友人である。流石に取り乱してあゆみの身体に寄せて言った。
守や真奈美など事情をしっている物以外の面子も各々驚きの声を上げて彼の方を見つめている。
「ほ、本当はボクが呑まれる所だったんだ。それを、かばって……」
それに対して彼は心の底から悔しそうに言葉を振り絞りながら言った。両手は固く握りしめられてブルブル震わせている。
幼馴染であり長年の想い人である彼女を目の前で奪われたのだ。その胸の内は察して余りある。
いまりも含めて他のみんなもそれに気づき、途端にかける言葉を一瞬失う。が、あいりはそ
れでも、
「ぶ、無事なんだよね」という言葉を振り絞りだした。
「…………」
あゆみとしてもそれを信じたい所だった。「うん、大丈夫だよ」と答えたかった。でも、そ
う返事できる確証がなく沈黙を返すしかない。が、そこで二人の言葉に思いがけない声が言
葉を返してくる。
「ええ。無事よ。少なくとも生きてはいるみたいね」
それは更屋敷あきなの声だった。彼女の周りには二つの人魂がふわふわと揺らめいていた。
「あ、あきなちゃん。な、なんでそんな事がわかるの?」
「まさか。勘とか言わないよね?」
あゆみといまりの不審げなそれでいてどこか期待まじりの言葉をぶつける。
「違うわよ。あゆみ、あんたらん所にあたしのともしび。人魂が付いてってたでしょ」
「ああ、そういえば。あきなちゃんが付けてくれたんだよね。ありがとう助かったよ。って……」
そういえば、その人魂の姿が見えない。置いてきてしまったのかと、沼の方を見た。薄暗い中だ。人魂が灯っていれば分かるはずだが見当たらなかった。
「ひみかと一緒についてったんだよ。でね、あちらにある人魂とこちらにある人魂を繋いで情報を探る事ができるのよ。集中すれば音と映像も見れるわ。ひみかの姿は確認できたし声もポツポツ聞こえるの。少なくとも生きていることは間違いないわ」
彼女は皿屋敷のお菊が妖怪と化した姿だ。たんなる一か所に出る幽霊ではなく、あちこちにある皿屋或いは更屋敷と呼ばれる複数の場所にまつわる存在として具現化した。だから、複数の土地で起きている事象を把握できる術を編み出した。それが人魂を発信、受信装置として使えるというものだったのだ。
「じゃあ生きて……るんだね」
「良かった、本当によかった」
その言葉を聞いあゆみとあさか初めその場にいたモノ達は涙を流さんばかりに喜んだ。さらに、あきなはこんなことを言った。
「ちょっと待ってね。みんなにも見えるようにできるかもしれない」
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