第41話

すると突然、バチンッ


という鈍い音が響き渡ったかと想うと、何かが強い力がぶつかった衝撃を身体の表面に感じた。そして一瞬遅く身体の表面に鈍い痛みが伝わってくる。


ヘビは沼の下に潜り込んでいたのだ。そして下から穴をあけると尾を突きだして打撃を加えてきたのだろう。あゆみはそのまま跳ね飛ばされそうになった。が、すぐに空中でグルン身体を一回転させるとその場に踏みとどまった。


「あゆみ~どうしたの? 大丈夫かい?」


少し離れた位置にいた彼女の側からあゆみの姿をはっきり見る事はかなわなかったが、何らかの攻撃を受けたらしい事は感じ取っていた。


「ヘビは氷の下に潜んでいるんだ! ひみかも気を付け……」


言い終わらない内に、


ガッチャッガッチャガッチャン……


先ほどより更に大きな音が響き渡り、氷の表面が振動と共にきしみを上げてヒビが入る。


気が付くとひみかの目の前に氷の下から巨大なヘビの頭が顔を出した。


「で、デカい」流石のひみかも一瞬ひるんでしまう。


頭だけ見てもその姿が水族館で見た時よりも更に巨大化しているようだった。


「ぐるぅううぅうううううぅぅぅぅぅう」


そして、大きな口をパックリと開けると黒い霧を吐き掛けようとした。



「させるか!」


そこへあゆみが駆け寄って来てひみかの前に立ちふさがると杖を大きく振りかざした。スパッと煙が真っ二つに切り裂かれる。


「さんきゅっ。あゆみ、次は私が反撃するよ」


言ってひみかは両手を広げたかと想うと金属バットくらいの大きさにした氷柱を出現させる。


「エイッ、エイッ、エイッ、エイッ」


ドンドンドンドン……


掛け声と共に右、左、右、左と計四本がヘビの眉間に向けて放たれていった。


「きしゃあああああああああああああ」


全て命中させられたヘビはたまらず身をうねらせて沼の下に再び沈ませた。


「倒せて……はいないよね」


「うん、多分。当たってはいたようだけど……」


そういうあゆみに返事をするように、ドンっと下から氷に衝撃音が響く。


「沼を凍らせたのはまずかったかな。逃げ場ができちゃってるよね」


氷の幕が張られた更にその下を覗いてみると、たたえられた水の中でヘビが動いている為か、闇その物が蠢いているような錯覚に見舞われる。


それを見ながらひみかは申し訳なさそうな表情を浮かべていった。


「いや、そうともいえないよ。向こうは逆に言えばこの中に閉じ込められたわけだからね。既にある穴から出てくるにしても、新しい穴を開けるにしてもこちらにはアドヴァンテージがある」


言っている所へ、ドカーンとど派手な音を響かせてヘビが頭を覗かせた。が、


すぐにあゆみは杖を光らせて水平方向への打撃を食らわせようとする。


しかし、ヘビもそれに気づいてすぐに頭を沼に潜り込ませた。と同時にその長い舌だけを延ばしてあゆみの身体に巻き付いた。身体の自由を失いそのまま穴の方へじりじりと引っ張られていく。


「しまった!」


両手の自由も利かないため杖も使えない。あゆみ穴とは別方向に向かって足を踏ん張り何とか抵抗する。


「あゆみ! ヘビめ、あゆみは連れてかさせないぞ」


ひみかはそう叫びあゆみの傍までかけよると、氷で作り出した鋭い刃先でヘビの下をざっくり切り離した。


「ひみか、ありがとう」


ヘビの舌から解放されて振り向いたあゆみ。


しかし、彼の目に飛び込んできたのは信じれない光景だった。


沼に潜りこんだと想われたヘビが再び顔を覗かせてひみかの身体をパック

リ飲み込んだのだ。

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