第11話 簡単に堕とされた

「ふーん、やっぱり四谷よつたにくん、何か余計なことをしゃべっちゃったんだね。あーあ、これで明稀端あけはちゃんは妊娠しちゃうかもね。もちろんあたしも。そうなったら、結婚してくれる? そしたら、たてが望むように、4人で居られるよ?」



しまった......。


かすかが四谷と呼ぶ男、つまりは俺が昨日一緒に風呂に行った相手である吟嶺ぎんね

俺が「ある程度予想してた」なんて、下手に口を滑らせてしまったから、吟嶺が俺に秘匿すべきだったことをバラしてしまったことが幽&五行ごぎょうサイドに漏れてしまったらしい......。


このせいで吟嶺が望んでいた『五行に緊急避妊薬を飲んでもらう』っていうプランは多分パーになったんだろうな......。

ごめん、吟嶺......。

頑張って良いパパになってくれ......。



それはそれとして、幽と結婚という話。

正直、現時点でほとんどかすかの覚悟に堕とされてしまってる自分がいるし、万が一吟嶺が五行と結婚するみたいな話になるとしたら、それでもなおみんなで愉しい時間を過ごせる楽な関係でいるってことのためには、悪い話ではない......というかかなりイイ話に思えてくる。


でも、今までくだらない意地を張って、頑なに断ってきた経緯があるだけに、素直に付き合い出すことにOKするっていうのも、何ていうかちょっと気恥ずかしいとか思っちゃうなぁ。

............って、ちょっと待って。


「え、今、『あたしも』って言った? ......幽、妊娠するつもりなの......? え、今は子作りしてるって言っても、ただ単に俺を堕とすために覚悟を見せてくれてるだけだよね? さすがにあとでクスリ飲むつもり、あるよね?」


吟嶺たちの方はともかく、っていうのも酷い話かも知れないけど、俺たちの方までマジで子ども産む気でいるの?

いやいや、俺はそんな覚悟できてないよ? 幽と一緒になるっていうことはいいとしても、子どもを含む家庭を養っていくのはもうちょい先にしたいんだけど......。


「いやいや、考えてもみてよ。あたし、不法侵入して、寝てる間に襲って、今こうしてほとんど無理矢理に繋がってるんだよ? そこまでしておいて、妊娠を拒んだりするはずないよね? おクスリなんて、飲むわけないでしょ? まさかここまで目を覚まさないなんて思わなかったけど......それも都合良かったよ♡」


「待って待って、いや......確かに考えたらそりゃそうか......? いや、でも......俺......まだ............」


「あはっ♪ やっと楯が狼狽えてくれた♪ そっかそっか、あたしが最終的には避妊するだろうと思ってたから、あんな余裕そうな態度を取ってただけなのね? よかった〜。大丈夫だよ、楯。あたし、もしデキたら、ちゃんと産んで、しっかり育てるよ? うちの実家にサポートしてもらえれば、お金の心配も、楯の将来だって安心だよ?」


「い、いやいや、マジでなんも良くないし、安心できないから! それに俺たちはまだ付き合ってすらないっていうか......」


「それも心配ないよ。楯? あなた、あたしの目が節穴だとでも思ってるの? もう2年も毎日みたいに一緒にいて、楯のことばっかり観察してるんだよ? あなたの気持ちなんてお見通しだよ♪」


「な、なにが......?」


「何って、楯ってば、もうあたしに絆されちゃってるでしょ?」



......っ!?

バレてる......?


「ふふっ、その顔、やっぱりだよね。ほら、このタトゥーとか血塗れのアソコとか見て、四谷くんからいろいろ聞かされて、あたしが一生楯専用のお嫁さんになる覚悟があるってわかってくれたんでしょ?」


まじか。

思ったよりも俺のことをわかってるらしい。


わかられすぎてて怖くなるレベル。

心を読まれてると言っても過言じゃない......。


「いや、えっと......」


「あたしが、絶対に楯の昔のお便所ちゃんみたいにならない、絶対に楯のこと裏切らないって信じてもらえれば、赤ちゃん産んでもいいんだよね?」


「そ、そこまでは言ってない! 幽と付き合ってもいいかな、とは言ったけど......」


今はさすがに子どもまで産み育てるなんて無理無理!

ってか、こんな問答してる場合じゃなく、早くクスリ飲ませないと!


「違うでしょ?」


「......え?」


幽は俺の言葉を否定しながら、目元に愉悦の色を浮かべて、舌なめずりして続ける。

ぶっ刺さったままの部分が軽くキュッと締まる感じがする。


「楯はね? あたしに絆されたら、楯の方からあたしに土下座して赤ちゃん産んでくださいってお願いします、って約束してくれたんだよ? ね? 楯はパパになるんだよ?」


いや、そういえば確かに、俺が幽のこと信用できるようになったら俺から交際のお願いを土下座でしても良い、とは言ったかもしれないけど......。


「俺、まだ結婚とか幽を養うとかそういうのは......『心珠しんじゅ』......できない......え?」


「心珠、だよ。そろそろ名前で呼んでくれないかな? あたしたち、夫婦になるんだよ?」



あー、もう幽の中では付き合いは決まってるわけね......。

まぁいいけど......。


けどなぁ。

このままヤラれっぱなしとか、どうなん? って思っちゃうんだよねぇ。


「わかったよ。それじゃあ......心珠?」


「はい♡」


「どうか俺のセフレに......「言い忘れてたけど」......」



あんまり意味があるわけじゃないんだけど、一旦なんとなく抵抗してみる。

恋人じゃなくて、セフレになってくれるか? なんて聞こうと思って。


そうして途中で、幽......じゃなくて心珠の言葉に遮られた。


「もしも冗談でもあたしのこと、他のお便所ちゃんたちと同じように扱おうとしたら、あたしと一緒に死んでもらうよ?」


ニコッと微笑みを零しながらめっちゃ恐いことを言ってくる心珠。

口元は笑ってる風だけど、目元とか表情全体は全然笑ってない。


これまでの強行からも、それくらいの凶行に及んでもおかしくないと思わせる力が篭もってる。


言い切った後に、薄っすらと細く開いた眼も、なんとも言えない威圧感を放つ。



「あ、え、その......そんなことするわけないじゃん......」


「ふーん。それじゃあ、さっきの言葉の続きはなんて言おうとしてたのかな?」


いやいや、そこはスルーしてくれるところじゃないの?

俺を追い詰めてそんなに愉しい?



「いやぁ、その、どうか俺のセフレに............なんてならないで、一生、俺と愛し合ってください。心珠のことが大好きです............って言おうと、思って......ました」


思ってなかったけど、そう言うしか無い雰囲気だから......。

それに、『さっき言おうとしたことは』そうじゃなかったってだけで、心の中で思ってることとはそうかけ離れてない部分もある。



「まぁ、楯ってば♪ ふーん、そっかそっかぁ。あたしと末永く愛し合いたいんだね〜。う〜ん、ずーっとアプローチしてた念願が叶って嬉しいなぁ♡」


......どうやら心珠は俺の答えに満足してくれたらしい。

威圧感の混じっていた表情が柔らかくなって、一転、口元を軽く手で隠してニヤニヤとした目で見つめてくる。


その表情がやけにイヤラシくて、程よく膨らんだ胸元、血塗れで痛そうだけどそれだけじゃない液体にまみれてテカる結合部、全身の肌の柔らかさも相まって、女性ホルモン的な何かがビンビンと漂ってきている気がする。

そこに、口からでまかせみたいな形だったとは言え、一度、「大好き」だなんて言葉を発したせいか、それが自分の気持ちとしてスッと心の中に入ってくる感覚もある。


やばい。

そのせいか、時計の針が1秒進むごとに、心珠のことがどんどん可愛く思えてくる......。


なんだこれ......。

いままで誰と繋がっててもこんな苦しくなるような感情が湧くことなんてなかったのに......。


やばいやばい、ここに来て一気に心珠沼に沈められてる。


あと、好きな気持ちが昂ってきてるせいで、下半身の気持ち良さも増すばかりだ。



「......ごめん、そろそろ出そうなんだけど......」


ちょっと真面目な話をしているところだったけど、ここまでずっと挿しっぱなしで、心珠がときどき刺激を与えてくるせいで、心珠いわく本日3発目の限界が近づいてきた。



「あらあら? あたしのナカは、『まぁまぁ気持ちいいだけ』なんじゃなかったの〜? あたしのことが大好きだって気づいて、どんどん気持ちよくなっちゃったのかなぁ〜?」


クスクスと含み笑いと一緒に腰をグリグリと押し付けてくる心珠。


そんな一挙手一投足まで可愛く見えてくる。


やばい。まじでやばい。なんだこの可愛い生き物。

俺、ちょろすぎるでしょ。


なんでこんな素敵な人が、こんな犯罪まがいな不法侵入とかをしてまで、俺のことを手に入れようとしてくれてるんだ?


俺、幸せすぎないか?

ここまでやってくれる人、裏切らないでしょ......。っていうかもはや、いつか裏切られたとしても、それは俺のせいだったって割り切れるんじゃね?


あぁぁぁぁぁぁぁ、やばい、気持ちいいし、まじで好き過ぎる。



「心珠......心珠! 愛してるっ!」


「ふふっ、楯ってば、カワイ♡ もうガマンしなくていいよ♪」



とまぁ、そんな感じで3回戦も終わって、二人してヘトヘトでドロドロのまま、心珠が俺の上に重なるように身体を預けてくる。

そうして心も身体も満足感に満たされた状態で、そのまま眠りについた。

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