第4話 良きいつメン

生ナカはイイ。


女性とスキンの1枚も隔てずに結合して擦り上げて、なんの遠慮もなく胎内に放出する快感。

密着感というか結合感みたいなのが全然違ってて、物理的にもイイし、なんだか相手を自分の好きにしているような妙な征服感が、精神的にもスバラシイ。



元カノとの関係の果てに得られたのは、そんなどうしようもなくクズい知見と、歪な女性不信の心だけだった。


何の関係もない相手と実行してはいけない危険な行為だ。

万が一にも子どもがデキてしまったりでもしたら、自分だけじゃなく、周りの人達にも被害が及ぶ可能性があるくらいの将来設計への甚大な被害が生まれてしまう。


本人たちだけの問題じゃないからね。


幸か不幸か、俺の外面と能力はほどほどによかったらしく、女友達は結構言い寄ってきてくれた。

その中から、自分のゲスな欲求を満たしてくれて、かつ、女性不信な心を刺激しないでもらえる相手を見繕わせてもらった。


高校の間に何人もの子たちに告白してもらったりしたけど、本気そうな子には丁重にお断りして、身体だけの軽い感じの子たちとだけ、ヤることをヤるだけの関係を築いてきた。


もちろん、ちゃんとクスリ飲んで生でヤれるやつで、万が一の場合でも責任取らなくてもいいって合意してて、そんで、お互い本気にならないって約束できたやつとだけ。


絶対に強要はしない。

そのために、最初に関係を持つときはしつこいくらいに確認するようにしてきた。


俺と付き合ったりするために身体を差し出そうとしてるならやめるようにと。


当然、一部の子たちは俺の説得に応じて、余計な純潔を散らさずに去っていってくれた。




それでも関係を持ってくれたのは、高校時代から数えたら、全員で30数人くらいかな?


ヤるだけのフレンドができては解消して。

中には高校1年の頃から最近まで繋がってた子とか、大学に入って関係を始めた子もいる。


自分と同い年の子から、街でナンパされてついていった大人の女性まで。

なかなかバラエティに富んでいて、どの人の身体も、それぞれ違った良さがあったな、なんて。


って言っても、つい最近まで繋がってた子ってのは、ほんの4人だけだったんだけどね。


他はみんな、離れるときに決別の連絡をくれて、ちゃんと彼氏を作ったりして幸せそうにしてる。素晴らしくてイイことだ。

ぜひとも、俺と関係ないところでずっと幸せにしててくれ。


そう願ってるけど、ときどき俺のところに帰ってきてしまう子がいる。

まぁ、そんなときは、遠慮なく吐き出させてもらうんだけどさ。





ただ、最後まで残ってた4人は、連絡もなく、ここ数ヶ月なぜか連絡が取れなくなってる。


こういう話は吟嶺ぎんねたちには話してない。

かすかも、告白してくれたときに「俺が他の子とデキたりしたら、消してしまうかも」みたいなことを言ってたし、告白されたのが彼女らと連絡がつかなくなってからでよかったかもしれない。


けど、おかげでアッチの方はすっかりご無沙汰してる状態。



俺は大学に入ってから、吟嶺ぎんね五行ごぎょうかすかの3人といるとき以外は、フレの子たちの中で暇そうな子を見つけてヤッてることが多かった。

大学で出会ったかけがえのないいつメンの3人と違って、4人は別に失っても痛くない関係だからこそ、抵抗なくヤれた相手たち。


まぁそもそも不自然で歪な関係だったし、突然居なくなるのも別に不思議はない。

俺にとってもそんなに悲観するようなダメージのある事態ではない。


一応、知り合いにはなってたわけだし、何度も俺の種を胎の中に収めてもらった間柄なんだし、適当にどっかで幸せになってて欲しいとは思うけどね。




来る者拒まず、去る者追わず。


もともと俺自身、自分から女性を誘ったことはなくて、近寄って来た子とヤるだけだったし。

最近はあんまりそういう欲求も湧かなくなってきてる。


ただ、もともと週3くらいのペースでいつメンで集まって、別の週3はフレと部屋でヤることが多かった。

高校までは実家ぐらしだったから、いつも違う女の子を自分の部屋に連れ込むのも気が引けて、自分の家でってのは少なかった。


バイトで稼いだ金を、ホテル代とピル代につぎ込んで捻出したり、相手の家におじゃましたりして凌いでた。

大学に入ってからは一人暮らしをしてるから、かなり金が浮いて嬉しい限りだ。


それで、土曜はいつも、居酒屋のバイトにロングで入ってるから、一日潰れて終わり。


今働かせてもらってる居酒屋は、高校の頃からバイトさせてもらってる店の系列店で、たまたま大学の近く、つまり俺の家の近くに新店舗を出すということで、オープニングスタッフとして起用してもらってる。


そのおかげもあって、シフトとかはかなり自由度が高いのと、人間関係がよく知れてる気安さみたいなのがあって、かなり助かってる。

って言っても、今は割と従業員も多くて、人手が足りてるから、あんまりたくさんシフトを入れてもらえはしない部分もあるんだけどね。



土曜日以外の日も結構バイトには入ってるけど、夜中だけとかだから、それ以外の時間は誰かと遊んでることが多かった。

つまり、ここ数ヶ月は、いつメンで集まらない週3は暇を持て余してるってわけ。


欲求を満たしてくれる子らがいなくなって、吟嶺たちいつメンの存在が自分の中でさらに大きくなってるのは感じている。


なんで彼らをそんなに失いたくない、大きな存在だと感じてるのかは自分でも上手く説明できない。

けど、俺のわりとゲスい本性を知っても、いつもと何も変わらないダラッとした空気で過ごし続けてくれてるってのはデカいと思う。


優しくしたりするんじゃなく、当たり前みたいに適当に過ごしてくれるっていうのがキモだ。






彼ら以外の反応とは全然違ってた。


大学に入ってからはあんまりないけど、閉鎖されたコミュニティを形成している高校時代は、噂が回るのも速かったらしい。

自分から他人に話したりはしてこなかったけど、どこかから噂を聞きつけてくるやつは必ず居た。


低用量ピルは生理が重い女性にとっては、ある種の助け舟になる側面もあるとはいえ、女性に負担の掛かる可能性のあるクスリを使ってまで生でハメる俺を糾弾してくるやつが一定数いた。


他のやつも、すぐに同情したり、引いたり、怒り出したり、無駄にいじったりと、何かしらのマイナス感情がちょっとでも表れたりした。

まぁ、それが普通なのかもしれないけどさ。


俺に気を持ってくれてる女の子だったら「私もその輪に入れてくれる?」だとか、「私が癒やしてあげる」だとか。

そういう、ありがたいんだけど、ありがたくないことを言ってくる子もいたもんだったんだけど。






こいつらは違った。


出会って1年くらい経った頃、いつまでも黙ってるのが心苦しくなったからか、酒が回りすぎてつい口をついてしまったのか、俺の過去と現在を全部話した。


そのころから、幽からなんだかラブな波動は受け取ってたから、下手に告白とかされてしまって、グループ自体が壊れてしまわないような、牽制のつもりって部分もあった。

......結果としては意味なかったんだけどね。



ともかく、その話をしたとき、吟嶺と五行は「ほーん、スケベだな」とか「どんまいどんまい〜」とか一言草を生やして適当に流しただけで、酒を煽ってくれやがった。


幽だけは、完璧に『無』だったように思うけど。

本気で何考えてるのかわからない顔して、「そっか」とだけ。

マイナスもプラスも何もない感じ。


3人とも、それ以降もなにも変わらない、悪く言えば無関心にも思えるテキトーな態度を続けてくれちゃってる。


でもなんか、そういうオモテウラのない、俺の心の古傷を無駄に開かないような雑な反応がなんか嬉しくて、居心地良く感じてる。

だからこそ、下手に付き合ったりして失うんじゃなくて、大人になっても仲良くしてたいって思ってるんだと思う。多分。


俺は欲求を満たしあえるセフレと、ほんの少人数の大事な友だちだけいればそれでいい。








今日も、飲み会が無事にテキトーな雰囲気で終わって、ハッピーな余韻に浸っていたところだったんだ。

幽とは『いい友だち』でいたい。俺はそう願ってる。


ただ、幽は俺と同じ考えではないみたいで。


「せめて抱いてくれたら終わらせられるのに........................」



俯き加減で、随分殊勝なことを言ってる幽。


......のように聞こえるけど、決して勘違いしてはいけない。

幽は結構ヤバイやつだ。


幽が『終わらせられるのに』と言ってるのは、彼女の恋心とかそういう可愛いもんじゃない。









「楯の人生............」




そう、こいつは事あるごとに俺の人生を終わらせようとしてくるヤバイやつだった。

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