第3話 彼女は作らない理由
俺はセフレは作っても彼女を作る気はない。
別にいい人がいないとかいうわけじゃない。
幽にダメな部分があるとかじゃない。
単なる個人的で精神的な、そんで割としょーもない問題が理由だ。
それさえなかったら、今頃、
幽と出会う前に、他の子と付き合ってた可能性もあるけど。
中学の最後で3年付き合った彼女の浮気がわかって別れてから、俺は『女性と付き合う』ってことへの抵抗感が凄い。
もしそういう関係になったら、裏切られたときのショックがめちゃくちゃデカイことを、昔に思い知ってる。
身体の関係だって、それが終わるときには諸々の関係すべてを清算しないといけないことは、この数年何度も経験して知ってる。
下手に深い関係になってしまったら、ダメージが大きくなる。
なら、適当な浅い関係を築いておけばいいじゃないか。
高校に入ってからはそう考えるようになった。
同じように、もしも幽と付き合ったりしたら、いつメンで集まるのも難しくなるときがくるかもしれない。
だから俺は幽とそういう関係に進むことはしないつもり。
俺と幽がくっつけば4人でダブルデートみたいな感じになるかもしれないけど、それでも自分から関係の形を変えることは避けたいと願ってる。
いろいろ言い訳みたいなことを並べはしたものの、幽と付き合う気がない一番の原因は、俺が若干の女性不信だってだけ。
普通に仲良くしたりするくらいは関係ないけど、付き合ったら女性は裏切るかもっていう強迫観念みたいなのが、
俺が女性不信気味になった原体験。
あれは今思い出しても割とムカつくというかやるせないと言うか......。
卒業式の後、彼女と一緒にウキウキ気分でホテルに行って、彼女がシャワーを浴びてる間にたまたま見かけてしまった携帯端末の通知。
そこには、見知った同級生の男の名前と『昨日の中学最後のXXXX、めっちゃ気持ちよかったな! 高校行ってもよろしく!』という一言。
ドクドクとどんどん早く脈打つ心臓。
ダメなことだとわかってても止められず、勝手にロックを解除する指を止めることはできない。
アイツはバレてないつもりだったかもしれないけど、いつも携帯を触ってる手元を見てたらわかる。
ロックは暗証番号。数字は『0702』。俺の誕生日。
問題なく開いてしまったソイツとのトーク画面には、それはもう浮気を示唆する
当たり前のように気分が悪くなって吐きそうになった。っていうか帰ってから吐いた。
けど、その場ではなんとかギリギリで食い止めて、別に必要もないかも知れないけど一応、証拠としていくつかは写メって保存しといた。
少なくとも彼女の携帯のカメラロールにはハメ撮りとかそういうのはなかったおかげで、辛うじて精神崩壊は免れた。
けど、相手の男の端末にはどうなのかはわからない。見たくもない。証拠は十分だし、見る必要もない。
ともかく、端末に一覧されているメッセージの履歴を眺めただけで、俺の心は急速に萎えていった。
ついさっきまで抱いていた愛情が、一瞬で蒸発するように根こそぎ消え去って、無関心へと変わっていくのがわかった。
復讐とかそんなことをしようとは思わなかった。
漫画やドラマなんかだと、裏切られた人が恋人に復讐したりする描写を見かけたりするけど、俺の場合はそんなことへの熱量すらも湧かない、ニュートラルな状態になってた。
ただただ、どうでもいい。
そのへんのゴミを見て抱くのと同じような感情を抱いてた。
ただ、一応念の為、自分の保身のために、証拠は必要だと思った。
別れた後、原因は俺のせいだった、みたいな嘘を(元)彼女が同級生たちに吹聴するかもしれない。
なんせ、小学校の最後のころから付き合ってて、俺にずっとラブラブだと思い込ませてきた嘘つき女だ。
それくらいのことをしでかしても、何ら違和感はない。
だから、裏切られた上にハメられて周囲に悪く思われるだなんて最悪の事態に陥らないように、『俺が裏切られた』って事実を周囲の公認にしておくことにした。
そのために、彼女がシャワーから出てくる前に、口の軽い女友達に浮気の証拠画像と一緒に悩み相談風のメッセージを送っておいた。
......ともかく、そういう思考ができるくらい、なぜか瞬間的に冷静になれた自分が居た。
とりあえず、最後にちょっとでも愉しんでやろうと思って、楽しそうに鼻歌を歌いながらシャワーからでてきた(元)彼女をソッコーで押し倒した。
そんで、これまではしっかりと着けてシてたゴムも使わないで全部生でぶちまけてやって、疲れて限界が来るまで続けた。
当時は生でヤる経験はなかったし、クスリもなかったから、1発目に果てた後に垂れてきたモノを見て、万が一妊娠でもしたら......と、正直かなりビビってた。
けど、それもこれも間男野郎のせいにすればいっか、と割り切って2発目以降は憂さ晴らしする感じで思うままにヤッた。
明日には自分とは無関係になる裏切り者が相手だと思えば、罪悪感とかほぼなくなってた。
今思えば、さすがに悪いことをした気もするけど、当時はどうでもよく思えたんだよな。
全く以て頭の悪いガキだったわ。
ともかく、荒々しく、ただただ獣欲をぶつけることだけを考えた交わりを続けた。
コトの最中も事後も、アイツはめっちゃ喜んだ風にキスしたがってきたけどなんだかんだで躱してやった。
さすがに他の男、しかも俺の友だちと交わした口と粘膜接触するのは気持ち悪くて。
けど結局、俺の演技がうまかったのか、アイツはもともと俺のことなんてそんなに見てなかったのか、終わった後も俺に浮気がバレてることには気づいてない様子で、俺の腕に抱きついて頭を擦りつけてきた。
数時間前までなら可愛くて愛おしさしか感じなかったその振る舞いも、なんか全部がうざくてキモくて。
善は急げとばかりに、帰りに別れを切り出してやった。
なんか泣いてたし、いろいろ言ってたし、縋り付いてきたけど、流石に俺も心身ともに疲れてたから無視して帰った。
後日、何度か俺の家に来やがったけど、俺自身あって話をするつもりも別になかったし、両親にも事の顛末は伝えて、下手に接触しないでいいって言ってもらってたから、居留守で無視し続けたら来なくなった。
後々知った話、やっぱりアイツは俺が浮気した悪いヤツってことにしようと根回ししようとしたらしいけど、俺が先手を打って置いたおかげでそんなことにはならず、俺への風評被害は、「浮気された可哀想な男」っていうレッテルで、軽く同情されるくらいで済んだ。
それはそれでウザかったけどさ。
結局、何で浮気されたのか、俺より相手の男のどこがよかったのか。
そんなことは知らない。興味もない。他人のことだしな。
俺に落ち度があったのかもしれないけど、そんなことはどうでもいい。
元カノのことはかなり信用してたつもりだったから、裏切られたショックもヒトシオだった。
この経験で学んだことは、女性は裏切るかもしれないってこと。いや、男だって裏切るかも知れないけどね?
なんにせよ、それ以来、「女性と付き合う」ってことに嫌気が差すようになって今に至ってるってわけ。
ただ唯一の誤算は、最後に元カノとヤッた生ナカの素晴らしさを、はっきりと身体が覚えてしまったことだけ。
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