第1章〜学園一の美少女転校生が、休み時間の度に非モテのオレに話しかけて来る件w〜⑥
しかし――――――。
クラスメートが一斉に、転入生への歓待の意をしめす中、教室の窓際最後方に位置する男子二名は、《我関せず》と言った感じで、
「おい! クローバーのヨツバちゃんが、ご指名だゾ!? 壮馬!!」
竜司が、前の席に座る相棒をイジるように語りかけると、壮馬は、後ろの席の相方に、ニヤリと笑顔で返した。
「ナニ言ってんの? 『竜馬ちゃんねる』の主な顔出し担当は、竜司だろう? きっと、ヨツバちゃんも、竜司のあの動画を視てくれたんだよ」
会話に夢中の二人は、黒板の前に立ち、自分たちの方に視線を送っている新たなクラスメートの微笑が一瞬、引きつったことに気づかない。
「素晴らしい自己紹介だったわね。みんなも、白草さんが早くクラスに馴染めるようにしてあげてね。じゃあ、白草さんは、紅野さんの後ろ、空いてる席に座って」
生徒から、親しみを込めて、『ユリちゃん』と呼ばれる谷崎教諭の一言で、転入生紹介の儀式も無事に終了し、四葉は、指定された自席へと向かう。
四葉が席に着こうとすると、前の席に座る紅野アザミが、後方に振り向き、
「白草さん、私、去年のクラスではクラス委員をしてたから、わからないことがあったら、何でも聞いてね」
と、穏やかな口調で声を掛けた。
「ありがとう! 紅野サンだっけ? 親切なヒトが近くの席に居てくれて良かった」
しかし、満面の笑みで返答した四葉が、続けた一言に、発言者を中心にした半径一メートルの空気が凍りつく。
「わからないこと、と言うか……ちょっと、気になることがあるんだけど……黒田クンが、春休みにアップしてた動画で言ってたフラレた女子って誰なんだろう? 紅野サン、知ってる?」
「あっ……え、え〜と……私は、その動画を視ていないから、ちょっと、わかんないかな……」
転入生の無遠慮な詮索に、なんとか答えを返したアザミの困惑した様子に気づいたのか、隣の席の天竹葵が、初対面の転入生にも物怖じせず、ピシャリと言い切った。
「新しいクラスの話題に興味を持ってくれるのはありがたいですけど……プライベートな話題にクビを突っ込むのは、あまり誉められたことではないと思いますよ、白草さん」
「あっ!? ゴメン! そうだよね……ワタシったら、気になることがあったら、つい周りが見えなくなっちゃって……こういうところ、気を付けないと、『ヨツバは天然なんだから……』って、良く言われちゃうんだ」
まるで、「てへっ!」というフレーズが聞こえるかのように、四葉は、可愛らしく舌を出し、愛嬌のある表情を作る。周囲の男子は、
「天然じゃ、仕方ないよな」
「ちょっと、スキのあるところも、また良き……」
納得の表情で、彼女の言動を受け入れるが、一方のアザミを含めた女子たちは、
「あ〜、そうなんだ……」
と、乾いた笑みで応答し、四葉にクギを刺す発言を行った葵は、無表情のまま、転入生の様子の観察を続けた。
白草四葉の自己紹介が終了しても、しばらく落ち着かない様子のクラスを見渡たしながら、担任教師の谷崎ゆりは、教卓に置いた教職員用のノート・パソコンを起動して、オンライン・ミーティングの準備を始める。
社会情勢を鑑み、始業式もデジタル端末や教室内に設置された大型ディスプレイを利用して、オンライン形式で行われることになっている。
教室の後方では、壮馬が、同意を求めるように竜司に声を掛けてきた。
「式や行事の度に、わざわざ講堂や校庭に集まらなくて良くなったのは、数少ないメリットのうちの一つだよね?」
「そうか? オレは、全校生徒が集まる方が、始業式や終業式って雰囲気があって良いと思うけどな?」
付き合いの長い友人は、サラリと、異議を唱える。
その言葉に、苦笑しながら、壮馬は、
「ハァ……竜司らしいや……けど、夏休み前後の炎天下の校庭とか、冬休み前後の酷寒の講堂に集まることを考えたら、教室内で式を済ませてくれた方が良くない?」
と、持論を展開する。
すると、竜司は、アッサリと、友人の意見に賛同した。
「それは、確かに一理あるな……考えてみれば、暑さ・寒さをまったく感じない全校集会は、一学期の入学式と始業式くらいのもんだもんな〜。ここは、オンライン技術に感謝だ」
二人が、雑談交じりの会話をしていると、やがて、午前九時になり、教室に設置されたデジタルテレビの画面に校長があらわれ、始業式が始まった。
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