第49話 テスト結果が帰ってきた。1
うちの高校では最終日は金曜日で、土日を挟んで月曜に一括して答案が返却され、上位五人と赤点ラインが明示される。
中間の赤点では追加の課題で済むが、期末となると夏期講座があり、両方で赤点を取っているとさらに追加の課題まで出されるので、可能な限り赤点は避けたいところだ。
「答案返すぞー、追加の一枚は赤点ラインと成績上位者だ。確認しておくように、テストの解説は各々の教科で詳しくやるからな、順番に呼ぶぞー、相原」
担任が一人ずつ名前を呼んで、答案を返していく。
「よっしゃ! 赤点回避!」
石倉がガッツポーズして教室の笑いが起こる。教えた人間として、石倉が成果を出してくれたようでホッとする。
「次、碓井ー」
呼ばれたので受け取りに行く、大体の教科は九〇点以上を維持しており、これなら面目も立つだろう。
「……」
そして、わずかな期待をもって総合成績上位者を見る。俺の名前は……クラス一位、学年二位か、古文が八七点だったから不安はあったが、満足できる出来だった。
「田中ー」
「は、はいっ」
白崎は、俺が結果を確認しているうちに受け取ったようで、一人で苦々しくテスト結果を見ていた。それから視線を逸らして田中へ目を向ける。彼女は緊張の面持ちで答案を受け取り、点数を一枚一枚確認し、統計の書いてある紙を見て、目を輝かせていた。
「……!!」
嬉しそうな顔で田中がこちらを見たので、俺は無言で親指を立てた。どうやら満足のいく結果だったらしい。
「穂村ー」
「はいっ」
千桂が席を立って、ぎこちない動きで答案を受け取って戻ってくる。結果はどうだろうか……
彼女は答案をまとめた紙束を慎重にめくり、一枚一枚に一喜一憂しながら統計を見比べて、溜息をついた。
「ふぅー」
ど、どっちだ……?
「よし、全員にいきわたったな、各自確認しておくように、次の時間からさっそくテストの解説だから準備しておけ―」
そう言って担任は教室を出ていく。それを見計らって、クラスメイト達は周囲の仲のいい友人と結果を見せ合い始めた。
「どうだった? 俺は何とか赤点は一教科だけだったわ」
「赤点取ってんじゃん、私は半分くらい平均点以上取れてたよ」
「うっはー優等生じゃん」
そんな話を聞きつつ、俺は石倉と田中の方へ向かう。
「おっ我らが救世主じゃん」
「ありがとうございます。碓井さん」
「その話しぶりだと、悪くなかったみたいだな」
俺がそう言うと、二人は顔を見合わせてから満面の笑みを浮かべ、答案用紙を俺に見せてくれた。
石倉は消しゴムで擦った後が激しい一教科を除いて平均点よりちょっと下、その教科は赤点ギリギリという、危なっかしい結果だった。
一方の田中はと言うと、軒並み平均以上、古文に至っては九〇点を取っていた。
「二人とも何とかなったな」
「おうよ!」
「まさかこんな点数取れるとは思っていませんでした!」
なんにせよ、これで一安心か、千桂は……見回すと、席に座ったままこちらの様子を窺っていた。話しづらいけど、後で結果を聞かないとな。
「っと、そうだ、碓井、お前千桂ちゃんに何か――」
「あーあー! 碓井がクラス一位かよ!」
石倉が言いかけたところで、白崎のイラついた声が響いた。
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