第31話 面倒なことになる予感がした。
「それは勘弁してくれ」
想定外ではあるが、そのお願いは絶対にOKできない。
元々、白崎の性格上、俺とは絶対にそりが合わないのはなんとなく分かっている。
「え……」
俺の返答が想定外だったのか、幸奈の表情が凍り付いた。悪いとは思っている。しかし、無理なものは無理なのだ。
第一に、悪口の頻度が度を越している。
第二に、何かを貶してばかりで好きなものが分からない。
第三に、田中の趣味を貶した。
「――そういう訳で正直、あいつとは関わりたくない」
幸奈の願いはかなえてやりたいし、できる事ならするつもりだ。しかし、俺はどうしてもあの白崎と笑い合っている姿を想像できなかった。
「っ……あはは、そうですよね、うちの兄、あんまり評判良くないですし」
「悪いな」
寂しそうな表情を見て、良心がちくりと痛む。しかし無理なものは無理、それに、あいつの周囲で友人関係を広げたとしても、結局どこかで破綻するだろう。
「じゃ、私は帰りますね」
「あ、ああ……」
寂しそうな表情を無理やり笑顔に変え、幸奈は走って帰っていった。
仕方ないだろう。あんな奴と友達になんかなりたくないし、顔を見るのだって嫌なんだ。例えば田中に謝るとか、性根を叩きなおすとかしてくれたら考えてもいいが――
「むぅ……」
「どうした?」
千桂が唸っていた。彼女は幸奈が走り去った方向を見て、眉間に皴を寄せている。
「幸奈ちゃん可哀そうだなぁー、何とかしてあげたいなぁー」
「……たしかに何とかしてやりたいとは思うが、千桂も白崎と関わるのは嫌だろ」
「そうですけど、そうですけどぉー……」
そう言って千桂はソフトクリームのコーンを一気に食べきる。ボリボリモグモグという音を聞きながら、俺も何とかできないか考えてみる。
たとえば、白崎の根性を叩きなおすとか?
……いや、自分で言ってて非現実的だな。というかそこまでしたところで、白崎がキレるかなんかして修復不能になりそうだ。
「そもそも、なんで幸奈ちゃんはお兄ちゃんの友達を増やしたいんでしょう?」
「そういえば……あいつ、なんだかんだ友達は居るよな」
休み時間は大体騒がしくしているし、田中の一件があった時もあいつは誰かと話していた。
なんだ? 俺があいつみたいな性格になって欲しいって事か? いやでも、あいつみたいな性格って正直、かなり好みが分かれるタイプな気がするが。
「んーどういう事なんですかね? ちょっと気になりません?」
「気になると言えば気になるが……ちょっと石倉あたりにも聞いてみるか」
ゴールデンウィークが明ければ、白崎とも石倉とも会う機会はいくらでもある。その時に探りを入れてみよう。
「決まりですね、幸奈ちゃんが何であんな事を言ったのか、頑張って調べましょう!」
千桂がグッと拳を握ったのを見て、俺はソフトクリームの残りを口に放り込んだ。
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