第2話 咲かないで寂しい、君は誰。

 たとえもう親父が親父でなくなっても、それでもいいんだ。

 魔王は親父だ。俺は皆に伝えた。

 なんとかして魔王城から連れ出す。


「なるほどな、城から出ればお前の大好きな親父とやらがお前を思い出すと考えたのか」


「違うよ。親父の顔も声も変わってても、中身が歴代村長の恨みの固まった魔物でも、魔王でも、世界中の悪いものの集まりでも、変わりない。親父だったものに変わりはない、だから俺は親父を助ける」


 俺はそういうとまた姿勢を整える。目の前の黒の塊に、闇そのものに、この村の、世界の地肉を吸ったこの剣で。


「おい、トナ。我らもいるぞ」


「わかってる、頼りにしてるぜナナちゃん」



 精霊のナナナナから声がかかり、我らがパーティーが頼もしい顔を見せてくれる。若手のノーマル魔術師、ハヤテが背中に手を当ててくれる。


「いったん回復しましょう、ね?」


「ありがとうハヤテん」


「遅れてすまねぇ、連れてきたぜ!」


 大声とともに鮮やかな赤の鳥にのったオッサンが来た。引退した赤魔術師、ライト。


「おお、フェニックス!久しぶり!!ライトのおっさんも」


「おっさん言うな、お前が若いんじゃトナ!しかしこんな村あったんだな」


「あったんだよ、地図に載らない始まりの村」


 ここには咲かない種がたくさんある、勇者になるものが生まれる村、なれなかったものが集まる村、次の赤ちゃんは勇者になるかな?女の子は勇者になれない。ずっと言われてきた。だけど俺は勇者になりたかった。

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