叫んで五月雨、金の雨。

新吉

第1話 叫んで五月雨、金の雨。

 五月雨式に、だらだらと続く物語。彼は村人の絶叫ともに終わらせにやってきた。金の雨は何も金貨や宝石の雨ではなく、文字通り金色の雨だ。魔王は黒い体に金色の雨を浴びながら、その地に降り立った。


 雨はどこからくるのか、空からだ。雲で覆われた空は金色に光っている。一見神々しく綺麗だからこそ恐怖を感じる。


「村人はもう地下にいるか、懐かしの故郷だというのに寂しいなぁ」


 笑いながら両手を広げた動作だけで、近くの家は吹き飛んだ。


 魔王はここの元村長。この村の歴史をすべて知るもの。この世界の仕組みをすべて知るもの。その闇と怨念をまとうもの。この村は村長の教えが全て。勇者は魔王を倒さなければいけない。伝説の剣を引き抜きにいく勇者候補は村長が選ぶ。


 村長の教えも聞かぬまま飛び出した少女、魔物から逃げ抜いてダンジョンを進み、剣を抜いた。15才の勇者。立派に成長した彼女は故郷に戻ってきた。魔王城にいた魔王を引き連れて。


「ようこそ!」


 大声と剣が空から落ちてくる。体ににまとった水魔法で金の毒の雨を防ぎながら勇者は伝説の剣を振り降ろす。まるで名画のような攻撃も、魔王の体には届かず。地面に叩きつけられる。勇者トナ。


「トナさん!」


「だい、じょうぶ」


 魔王はとても楽しそうだ。


「懐かしいなぁ、トナ、この問題児が!なぜ、伝説の剣は小娘なんぞ選んだのか!」


笑いながらも火の玉を飛ばしながら、挑発を続ける。


「そんな調子で村人を守れるのか?」

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