いざっ! 魔王城!

「いよーしお前達! 今日から魔王討伐への旅立ちを開始する!」

「「おー!」」


 自称勇者さんの合図に元気よく応じる私とセシリア。

 本当は「めんどくせー」と言いたいところですが……お仕事上の約束なので仕方がありません。


「……よしっ! 頼んだぜセシリアさん。 転移魔法で魔王の所へ連れて行ってくれ!」

「了解した……が。 大丈夫なのかい? ここ一週間まともに動いていなかったようだし……」


 心配そうに声をかけるセシリアに「んなこた関係ねぇ!」と笑ってみせる自称勇者さん。

 いやいや絶対大丈夫じゃないでしょう。

 だって……自称勇者さんは今日の今日まで、衛兵さん達によって逮捕されていたのですから。

 お勤めご苦労様ですと言ってお花でも渡すべきでしょうか?


「……まぁ君がいいのなら別に私に異論はないさ」


 やれやれと首を振りながら、セシリアは魔法を詠唱します。

 セシリアに固くてを握られると共に……私たちの視界が暗転しました。

 いざっ! 魔王城へっ!


 ★★★★★


『くわっ!? この魔力反応は……』

『んにゃ? どーしました? 魔王様ー?』


 ゴロゴロと地面にころがってリラックスをしていた魔王は、ひしひしと感じるその力に大きく身体を震わせた。

 そのただならぬ様子にあてられたのか、猫耳の獣人の少女はかるーい感じて魔王へと問い返す。


『やつが……くる!? 来てしまう!?』

『……やつ?』

『いいから早く逃げるぞ! このままではまたあの恐ろしいことに……』


 そういうが早いか我先にと逃げ出そうとした魔王の耳に、肝を冷えさせるには十分な「コツン……」という音が届いてきた。


『おや? 逃げるだなんて興ざめなことは止めてくれよ?』

『でたぁあぁぁ!?』

『ふふっ。 また会ったね魔王くん』


 叫ぶ魔王の視界に映っていたのは、自分に向かって優雅に一礼する青髪の少女……彼が知るところの最強魔法師であるセシリアの姿であった。

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