A Quick One While He's Away

空が大分暗くなってきた頃。

家の駐輪場に自転車を止めて階段を上がり少し進んでドアを開ける、何も言わず靴の片方を脱いでいると母親がトントンと小走りで駆け寄ってきて

「おかえり~お母さんまた行って来るから。ご飯はお鍋のカレー温めて食べて、行ってきます」

と言い何かに急ぐようにそそくさと外に出て行った。靴を脱ぎ廊下の右側にある自室に入る、リュックを降ろしてベッドに寝転がり壁に貼り付けられてるアーティストの写真を眺める。4年前ガンで死別した父親がよく聴いていてその影響で自分もハマったアーティストだ。突然だが僕の母親は不倫している。普段ならとてもやさくて心配性で僕や一つ上の姉の事を大事に思ってくれている母なのだが、夜は違うようだ。死別なら不倫とは言わないのでは?と思うかもしれない、確かにそうだが死んだら次の奴を見つけりゃ良いやという覚悟の薄っぺらさが気に入らない。いや確かに僕は結婚の覚悟の重さはしらないしそれどころか男女の交際の楽しさや辛さも知らない。多分これは逆恨みというやつだ、(自分がなついていた)あんなに良い父親が死んだのに他の男に身を委ねるとは何事だ!って感じだ。

そういう自分の図星を自分で突いているとイライラしてくる。そこで少し気持ちを切り替えるためにご飯を食べることにした。そう思い廊下に出てキッチンへ行くと、姉がリビングで寝そべりながらテレビを見ていた。そのまま特に会話も無く淡々と皿に白米・カレーを入れて自室に戻った。自室に戻り小さなテーブルに置きBluetooth付きの長方形のスピーカーと音楽プレーヤーを接続してシャッフルで音楽を付けた。

【Her man's been gone For nigh on a year He was due home yesterday But he ain't here...】

いつも好きなこの曲は、今日は聴きたくない。そう思い次の曲に変えた。

「ごちそうさま」と心の中で思い、食器を片付け風呂に入りベッドでゴロゴロ携帯をいじっていると着信で『ゲームしようぜ』と友人から連絡がきたので『OK』と返してPCの電源を入れた、電源を入れていつも使っている通話アプリを起動して通話サーバーに入った。

「ういっす」

と僕が言うと友人は

「ァアアイ!」

というなんとも頭の悪い挨拶を返してきた。この友人は同じ高校でも中学の友達でもない、中学の頃から遊んでいる友達に紹介してもらった友達だ。だから彼の事はよく知らない、でもなんとなく遊んでいるうちに仲良くなり今では一緒にFPSゲームをしている。

この時間が今のところ一番落ち着く時間だ。そこから12時半くらいまでゲームをして1時間ベッドでゴロゴロして寝た。

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My generation @sumire0601

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