スパルタな児童遊具

 近所に神社運営(正式な形態名称は知らない)の保育園がある。氏子のお子さん達のご面倒を見ていただく場所らしく、立派な設備に常勤の警備、特設の遊園場などそれは立派な場所だ。

 特に遊園場はスゴイらしい。毎週、治療帰りのお参りの後で見るのだが、いつも塗装がピカピカの遊具が清潔な人工芝の上に並んでいる。

 流石に神社のへの喜捨が使われているだけあって立派な保育園だ。


 で、そんな氏子さんたちの大切なお子様を預かる場所の、例の遊園場にそれはある。


 写実描写の練習もかねて少し様子を描いてみよう。


 遊具がある。

 子供用のアスレチックだ。

 公園にあるモルタルに禿げた塗料が所々着いたそれとは比べる由も無く、光を反射する塗装に複数の素材を組み合わせたそれは、同地のどれよりも立派で新しいことは明らかであった。

 四本の鉄柱が高さ2メートルほどに足場を作り、両端からそれぞれ螺旋の滑り台と直線の滑り台を伸ばしている。

 アスレチックなのでそこへ上る足場も遊具だ。

 二つある。

 一つは鉄棒梯子。塗料が一片の剥がれも無いそれは、握る感覚が心地よくしっかりと摩擦を得られ、手が鉄臭くなることも無い。

 もう一つはボルタリングの壁だ。透明な強化アクリルに色とりどりの出っ張りを持つそれは、運動が苦手な子にはやや難しいかもしれないが、出来る様になればそれだけで楽しめる物であろう。

 まさに町一番の保育園に相応しい設備であった。


 ……おわかり頂けただろうか……。

 そう、この高価で立派な遊具、昇段方法が梯子か壁上りの二択なのである。

 階段やスロープは、無い。

 梯子の方は、「遊び」にする為とはいえ一本の間が50センチメートルほど。身長1メートル強の4歳から6歳児には結構な間隔だ。

 ボルタリングの方はもう少し足場の間は狭くて30センチメートルほど。出っ張りの方は普通の大きさだが、逆に子供の小さい手脚なら両足で乗れてしまうだろう。

 ただし、その角度は殆ど垂直である。

 垂直の2メートルを登攀するのだ。なんだったら運動音痴の大人には出来ない。


 なんか全体的に「遊び」のハードルが高くは無いかこの遊具。

 いやまあ、子供らがスイスイ上り下りする様を見ると問題無いのだろうが。

 あと滑り台の方から上る様を見て、実はそれがスロープ式の昇降機も兼ねるのだと気付き、加齢による己が頭の固さに嫌気がしたが。

 でもその設計は滑ると昇るが同時発生した際のことを考えていないような気もするが、それは滑り台という存在の根幹的瑕疵だ。


 何にせよ、ご立派な施設の割に置いてある遊具はずいぶん「スパルタ」だなあ。

 甘やかすばかりが子育てじゃ無いらしいしな。


 ちなみに筆者の小学生の頃の友人は、まだ条例で禁止されていなかった十メートル越えの超大型遊具の強傾斜高速滑り台で正面衝突してひどい目に合っていた。

 でもバブル期に作られ解体も出来なかった大型遊具って怖いけど楽しかったよね。


 余談だが、筆者は滑り台の途中の金属片に足が引っかかって長く早く皮膚を切り裂かれ、そのままけんけんで保健室まで行き廊下を血塗れにしたことがある。



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