2ページ



「黙れ、バカ佐藤」

 佐藤に聞こえないように小さな声でつぶやいた。すると、脂の乗った体を揺らし佐藤が近付いてきた。

(ヤバッ、聞こえてた!?)

 しかし、用があるのは海人にだった。

「来週の試合、代打での出場を期待しているようだけど、お前じゃ無理。諦めな」

(嫌な奴)

 確かに海人の野球の技術は低い。そもそも運動神経が悪く、どのスポーツも上手くない。だからって……。

 佐藤は佐藤であまり野球は上手ではない。けれど海人よりは野球ができるため一応レギュラーになっている。海人より体も大きいし送球も悪くない。性格は悪いけど。

「……」

 海人は何も言わずに自分の席に座った。


 放課後、私は海人に「一緒に帰ろう?」と誘った。まぁ、互いに家が近いので必然的に一緒に帰ることになる。でもその日海人は私の誘いを断った。もしかしたら初めて断られたかもしれない。それくらい海人は私の誘いとか提案を受け入れる。

「よる、ところ、ある……」

 そういうとランドセルを背負い急いで走って行った。私は何か怪しいと、海人を後ろからバレないようにこそこそとついて行った。

 たどり着いたのは河川敷。橋の下にランドセルを置き、木の棒を力いっぱい振る海人。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る