1:美しき、美男性の恋。

昔々、それは、それは、美しい美男性が、居ました。


『“桜散る。

夜の曙に、尚も、君は、舞うのか”』


妖しく、だけど…。


切実な想い。


『あの少女は…』


この、神影家に生まれた跡取り。


あの…。


ニッコリとした笑顔が、特徴的な術を使うという男の一人娘。


幼子だった時に、私を見て『綺麗』と、発言した子。


覚えているよ…。


君が、私に、触れる手が、とても温かった。


初めて感じた。


人間とは、不思議な物だ。


『初めまして、私は、神影に生まれた娘。名を、秋夜と、言います』


ほんわかと笑った顔が、何だか、可愛かった。


それが、今では…。


-…十六か。


こぞの、景色は、映える。


『懐かしいな…』


白い手が、空気に触れた。


その瞬間に、ピリッと、走る静電気。


『出られないのは、悲しいな…』


触れてもらわなければ、触れられない。


悲しい性だ。


彼は、大木から出られない。


其処に、掟が存在する。


天界の姫神が、それを作った。


破る訳にもいかない。


しかし、一度だけでも良いから、触れてみたい事には、嘘はないのだ。


『春、舞う、花弁に、かほりを付けて…。


君に…。


贈りたい、ことの葉を』


彼女に、届けたい。


今の、想いを。


満開に、咲く桜の花弁を、一片。


秋夜が居る部屋に、届けておくれ。


毎年、綺麗と、口にしてくれる愛し彼女に。


夜風に、吹かれる葉が、ササッと、音を立てる。


私の想いに、答えてくれる様に。












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