0ー2
噂では、美人薄命と言われているが、現実の秋夜は違っていた。
肌色は白いが健康そのものである。
「ね、もう少しだけ…。もう少ししたら、ちゃんと…お布団に入るから」
「…はぁぁ、もう少しだけですよ?良いですか、あまり夜更かしはしないで下さいね。朝、熱を出されていたら、この卯月が、怒られてしまいます」
「解ってるわ。体を冷やさない様、唐衣を羽織る」
秋夜の押しに負けた卯月は、閉めようとしていた襖から手を離した。
頑固な部分は、父親である龍詠譲りなのだろうか。長年と神影家に支えているが、どうも、押されてしまったら断る事が出来ない。
秋夜が、今宵に限り我が儘を言うのは珍しいのだ。
襖外は、静寂な暗闇だけ…。
それは恐ろしく、酷く、恐怖を煽る感じだった。
卯月は、自分の手で自分を抱き締め、部屋を出て行った。
こいゆう夜に、限って、獣が出ると言われている。
一月前は、狼の遠吠えが、聞こえていたのを、彼女は、思い出す。
あの時は、月が紅い十六夜の時だったか。
それとも…。
満月だったかは、不明だ。
こんな夜に、桜を眺めている主が、不思議で、妖しく見えてしまった。
儚げな少女なのに。そう、感じてしまうのは、春の夜のせいだろう。
思い込みは、禁物だ…。
全ての、感覚を、鈍らせる。
暗く、長い廊下を、歩いて行った。
桜木漏れ日ー君が想う、華の季節 黒薔薇 隗斗(こくふうび かいと) @rizuya25
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