第7話 作戦決行前
それから数日間、教官との訓練明け暮れた。そこそこ強くなったのではないかと思う。
最近は勇者組とは会えていない。全く違う場所で訓練しているのか、勇者たちが訓練しているであろう爆発音すら聞こえない。
そしてメイドさんの衝撃の訪問から数日後。今日の訓練が終わって、椅子の上でお茶を楽しんでいるとどこからともなくヒラヒラと上から紙切れが落ちてきた。
「ついに来てしまったかこのときが……」
紙には明日の早朝に作戦決行、その決行前に部屋にメイドが来て作戦の詳細を話す旨が書いてあった。
「そういえば装備とか何ももっていないなぁ」
いま自分がもっている装備らしい装備といえば、
木剣
以上である。鉄剣や防具などは支給されていない。
「これでなんとかなるものなのか?」
木剣を手に取って顎に手を置いて考えてみる。
「そもそも今自分がどれくらいの強さなのか全くわからないからなぁ」
いままで実戦形式で戦ったのは教官のみで、他に比較対象が全くない。
まあ考えていても仕方がない。明日に備えてしっかり眠る事にしよう。訓練になれてきたとはいえ、とても疲れるのは事実。疲れを引きずって明日の作戦に支障をきたすのはまずい。
そして翌朝、作戦決行当日
一睡もできなかった。
俺は今ベットの上に座り込みながらまだ太陽も上っていない時間帯からお紅茶を楽しんでいる。あれから緊張して目がさえてしまった。鏡見なくてもわかる。目ぇギンギンなやつやん。
作戦が始まる前に作戦の詳細を説明してくれるらしい。そんなことを考えていたら憎たらしい元気な声とともに突然水が飛んできた。
「おっはようございまーす!」
「ぶうぇっへぇ!」
こいつ朝から樽いっぱいの水をかけてきやがった!
「起きてくださーい!朝ですよー!」
「おきとるわ!っていうか水かけんなや!どういうつもりだ!」
「え? 顔を洗うための水ですが?」
猫っぽい目のメイドはさも当然かの様な顔をして言う。
「ぶっかけられたら顔洗えないでしょうに」
「え?できますよね?勇者様ですもんね!」
「勇者が何でもできると思うなよ!」
「あっごめんなさい!一番よわよわでしたねプークスクスw」
「そのネタ何回こするつもり?そろそろなれてきたよ?」
「では本題に入りましょうか」
「いきなり冷静になるのやめてくれる?」
こいつの相手は毎度疲れる。まだ二度目だけれども。今日は上からではなく下から入って来たようだ、床に人一人通れる位の大きさの穴が開いている。
「で、俺はどうすればいいわけよ」
「はい。詳しく説明させていただきますと、私がさっき城中に魔石を仕掛けました。勇者様が牢屋に着いた時点で暴走させますので城中が混乱している間にお嬢様と城を抜け出して来てください。」
「ずいぶん物騒だな。ってか魔石?暴走?どういうこと?」
「説明いたしましょう。この世界には属性各種の魔石が存在します。この魔石に一定の衝撃を与えると、魔石が暴走を起こします。例えば水の魔石なら大量の水が、風の魔石なら突風が。この威力は魔石の大きさに依存します。」
「なるほど」
ちなみに魔石はダンジョンの中から採取することができ、それぞれ魔道具の動力源となっているらしい。もちろんダンジョンには魔物もいる。この世界の冒険者は魔物の素材だけでなく魔石も採取、それを売って生計を立てている様だ。
「それで城を抜け出したらどうすればいいの?」
「城を抜け出したら城下町に降りていただき、城門の前にゴールデンドーン家所有の馬車が待っています。そこからゴールデンドーン公爵領まで逃げていただきます。道中の護衛もお願いいたします。」
「了解した。ところで牢屋の鍵はどうするんだ?」
「騒ぎを起こしても牢屋の見張りは動かないとおもうので、こちらを……」
そう言ってメイドはこちらにスッときれいな瓶に入った何か紫色の液体を手渡してきた。
「これは?」
「これは一滴垂らすだけでぐっすり、寝起きはすっきりな睡眠薬です。何か飲み物にでもこれを盛ってください。勇者様は城の方々に顔をしられている上に、勇者様は王国の救世主ですので、警戒される事なくうまくいくでしょう。」
「そうかなぁ不安だな……」
「さて、説明は終わりです。さっさとイケこの豚野郎。」
「いきなりの女王様やめぇ」
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