第6話 訪問者
「なんかすごいものを見てしまったなあ。」
自分の部屋のベットに寝転がりながらさっき起きたことを思い出した。
あのあとパーティーはお開きとなり、俺はそのまま何もせず自分の部屋に帰ってきた。
「まるで乙女ゲームの断罪イベントみたいだったなぁ。それにしても悪役令嬢っぽい人どちゃくそ美人だったな。」
「それはよろしゅうございました。」
「……っだれよ!」
まさか自分の独り言に返事をされるとは思わず、声が裏返った上にオカマみたいになってしまった。
振り返った先には、メイドさんが立っていた。黒髪ショートですらりとしたボディラインを描き、全体的に華奢でその目は猫を彷彿させるようなアーモンド形であった。
「これは失敬、驚かせる気はなかったのですが……」
「うそつけ絶対驚かせる気だったべ。 そもそもどっから来たんだ。」
メイドさんはにこやかに微笑みながら指を上に向ける。
「……うわぁ。」
天井にはきれいな円形に穴が開いており、人一人分が通れる位の大きさであった。
「…………って何してんだよ!どーしてくれんだよ!」
「なにがですか?」
「とぼけてんじゃないよ天井の穴のことだよ」
「……ああ、勇者様ならなんとかなるのでは?」
「できるか!さらに穴を広げる事しかできないわ!」
「ええ~勇者なのに~?」
「あたりまえだ!勇者が何でもできると思うなよ!」
「あっごめんなさい!勇者の中でも最弱でしたもんね!ざーこざーこ♡前髪スカスカ♡」
「やめろおおおおおお!おまえええええ!貴様は触れてはいけない禁忌に触れたぞ貴様!」
「いま夜ですよ静かにしないと。他の人が起きちゃいます。」
「なんなんこいつ。」
なんかすごく疲れた
「っていうかなにしにきたの?君だれ?まさか俺を殺しに!?」
メイドさんは呆れを含んだ目で俺を見る。
「殺す気なら後ろに立った時点で殺してますよ。って言うか死なれたら困るんですよ。」
「死なれたら困る?どういうことだ?」
「単刀直入に申し上げます。ユーフェリア様を助けていただきたいのです。」
メイドさんが真剣なまなざしで言う。
「ユーフェリア様って……もしかしてあの悪役令嬢?」
「悪役令嬢……?ユーフェリア様の事を悪役令嬢と?死にたい様だな貴様」
周りの空気が急激に重くなっていく、部屋全体がギシギシと音をたてて軋みだす。
おおっとどうやら悪役令嬢は禁句だったようだハハッメイドさんの後ろに修羅がみえるぜぇ……
「まああの場にいたらそうとられても仕方がない事は認めます。二度と言うなよ下水。」
「すごい特殊な悪口言うじゃんやばぁ……」
「で、助けてくださいますか?」
「切り替えが早いのは美徳だね。」
もうつっこむのも疲れてしまった。
「ありがとうございます!」
メイドさんは破顔一笑して胸を張っている。かわいい。
「そうだねぇ……でも俺助けるメリットないよね?おたずね者にはなりたくないよ?」
異世界に来て結局何のチートも得ることはできなかったので、正直助け出せる自信もない上に、そのまま逃げ続けることも正直できないと思う。
「そうですか、それは残念です。ただこれはちょっと噂できいたのですがね、今までの召喚でも使えなかった勇者は事故と見せかけて殺されたとかなんとか……。」
「やらせていただきます。」
思い返してみればそうだ、ちょっと魔法が使えるやつなんていくらでもいるだろうし、最初から鍛えるのは金も時間もかかるだろう。こんな穀潰し消したいと思うのは当たり前かもしれない。
「決まりましたね、ではまた計画が定まり次第ここに来ます。それまでせいぜい鍛えておくことだな汚水。」
また悪口言うじゃんこのメイドさん。教育どうなってんの!
「……あ!あいつ天井なおしていって……る」
継ぎ目もきれいに直ってそこに穴があったという記憶を疑ってしまう。
「なんかとんでもないことになってしまったなぁ」
ベットに寝転がり、穴があった天井部分を見つめ、これからのことを考えながらそっと目を閉じた。
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