第5話 乙女ゲーム?
「んごおおおっ ぐがっ! ふぐううううううう すぴぴぴぴぃー」
誰かが俺の隣ででっかいいびきをかいているようだ、実にうるさい。せっかく人がパーティーまで時間があるから昼寝をしていたところなのに、せっかくのスーパーすやすやお昼寝タイムが台無しじゃあないか、どおれ、一つ文句を言ってやろう。
むくりと起き上がり寝ぼけた目をこすりながら周りを見渡す。
「あら?誰もいない……」
どうやらいびきをかいていたのは自分のようだ。自分が起きる位のいびきってどんだけでかいいびきだったんだ……。
そしてふと時計を見ると、勇者の歓迎パーティーが始まる時間を一時間ほど過ぎていた。
「うおっ!やっべえ寝過ぎた!」
つい寝過ぎてしまった。午前中の訓練が終わって、一週間休みなしで訓練続きだったため、すごく眠かったので、歓迎パーティーの時間までお昼寝をしていたのだが少々寝過ぎてしまったらしい。
「どうして誰も起こしてくれなかったんだ。」
時計の針は無情にもカチコチと小気味よい音を立てながら俺をせかす。
昨日担当のメイドさんから受け取ったパーティー用のこじゃれた服に急いで着替て部屋を出る。王城の窓から見える空はもうすっかり暗くなっている。
会場の広間に近づくにつれて、人々の喧噪が大きくなっていく、完全に始まっているようだ。
「む?」
突然喧噪が止まった。何か偉い人でも演説しているのだろうか?だとしたらかなりまずい。一応勇者である自分がその場にいなかったら後で何が起こるわかったものではない。まあ自分は勇者と思われていないかもしれないので、何もないかもしれないが、急いできました感は出しておこう。
少し息を切らしながら会場について、少し大きめの扉を静かに申し訳なさそうに開けると、
「私はいまこの場で、ユーフェリア・ゴールデンドーンとの婚約を解消する!」
「むむむ?」
あら?また異世界転移して乙女ゲームの世界にでもきてしまったのかしら?
やりやがったこの男、いつかやるんじゃないかと思っていたけどこの国王のいないタイミングで来たか。この場でたよりになるであろう国王は今、同盟国に様々な援助を求めに自ら諸国を回っている。
今日はこのパーティーに参加するため学園を公欠して、ユーフェリア様と一緒に勇者たちに挨拶をしようと思ったのだが、
勇者たちが壇上で挨拶と短めのスピーチをされた後、勇者たちに変わって殿下たちが壇上に上がり、こう言ったのだ
「すまないが、この場を借りて言いたいことがある!みんな聞いてほしい!」
そのときユーフェリア様とともに他の参加者に挨拶をしていたところであった。
その言葉を聞いて、素直に聞こうとしている者や、ニヤニヤと下卑た笑みを浮かべた者までいる。そしてみんなが静かになったと見たら、あの特大爆弾を投下したのである。
「理由はもちろん!学友に対する態度だ!こいつは最近転校してきたエリーにむかって言うのも阻まれる言葉で彼女をけなし!あまつさえ授業にかこつけて彼女を傷つける始末!到底国の母になる者の行いとは思えない!」
その言葉に負けじとユーフェリア様は反論する
「それは誤解ですわ! あれはじ「事故だとでも言うのかね。実はクラスメイトがおまえが授業にかこつけて危害を加えようと計画しているところを見たという証言があった。」
「そんなことしてませんわ!」
「だまれ! もう証拠はそろってるんだ!衛兵!やつを引っ捕らえろ!」
人混みをかきわけて大広間の端に控えていた近衛兵がぞろぞろとユーフェリアを囲み、やがて手錠をつけた。
「まって!ユーフェリア様は冤罪です!そもそもそんな不確かな証言でユーフェリア様に手錠をかけるなど、公爵家を敵にしますよ!」
「ふん、そのあたりはクリフに任せてある。そういえばおまえはこいつといつもいっしょにいたな。おまえもこいつと共謀したのではないか?もう一度同じ発言をすることができるか?ん?」
「……いえ出過ぎたことをいたしました。」
ユーフェリア様には悪いが、家に迷惑をかけるわけにはいかない。
「ふん、こんなものか。衛兵!そいつを牢屋にぶち込んどけ。」
「ちょっと!もっと丁重に扱ってくださる!? 」
殿下に命令された衛兵たちはユーフェリア様を連れて行こうとする。私は罪悪感からユーフェリア様と目を合わせることができなかった。
「そんな悲しい顔をなさらないで。私は大丈夫ですわ。あいるびーばっくですわ!」
「ユーフェリア様……」
目を合わせる事ができずうつむいて地面を見ていた私に言葉をかけてくださった。
「何を話している!さっさと連れて行け!」
そうしてユーフェリア様は連れて行かれてしまった。
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