第七十三節 京都の商売敵を我が物に
1568年9月7日。
「全軍、出撃!」
既に政略結婚の道具として
盟友の徳川家康と共に
途中で
「お父上には一人でも多くの兵を率いて頂く必要があるのです」
『表向き』の理由は、
一方。
京の都のある
欲でつながった味方ほど、いざというときに何の役にも立たないものはない。
自滅の道は、家臣筆頭の
「最近。
一族の中で不幸な出来事がいくつかあったが……
もしや、
策略を得意にしている奴なら大いに有り得る話だと思うが、どうじゃ?
一族の者たちよ。
そもそも久秀は一族の出身ではなく、たまたま前の当主に気に入られて出世しただけであろう?
そんな奴が権力を欲しいままにし、一族を牛耳っているのを黙って見ているつもりなのか?」
自分より実力ではるかに上回る
この出来事は大和国の有力
『小物』たちの
今度は当主である
忍耐力に欠ける
「
当主であるわしを
老いぼれて
よし。
わしは役立たずの老いぼれどもと手を切り、
こうして。
一時は
最後は当主である
この状況を冷静に見ていた一つの『都市』が、ある結論へと至る。
「奴らも終わりが近いな。
一時は
そろそろ
今までは、奴らの軍事力を恐れて良好な関係を築いていたが……
三好一族と手を切るときが来たのかもしれん」
と。
この都市とは、『どこ』なのだろうか?
◇
京の都への進撃を開始する前。
小物だらけの
要するに。
三好一族は、戦う前から実に3分の2もの勢力を喪失していたことになる。
信長の率いる大軍がやって来ると……
三好軍はドミノ倒しのように次々と崩れ落ちていった。
満足な抵抗もできないまま山城国・
◇
1568年10月18日。
たった一ヶ月で
信長の方は、上洛戦の本当の目的を露にし始める。
「織田家は元々、幕府の
そんな程度の家が、副将軍や管領に就任するなど恐れ多いこと。
辞退させて頂きたく存じます」
「じ、辞退すると!?
それは
信長の反応は、義昭にとって想定外であったらしい。
にわかに慌て始めた。
「の、信長殿。
地位が要らないと申されるのか?
それでは……
そなたの働きに何も報いることができん。
困った、どうすればいい?」
「……」
「あ!
そうじゃ!
幕府の
織田家を、斯波家と同じ
斯波家は元々、
あの
「身に余る光栄、有難く存じます。
織田家は今後……
幕府の
「おお!
その言葉、頼もしく思うぞ!」
義昭は安堵のあまり声が大きくなったが、信長は構わず話を続ける。
「ついては……
「ん?
どうなされた?」
「幕府の
一つ、お願いしたいことがあります」
「何じゃ?
何なりと申されるが良い」
「3つの都市に代官を置いて直轄地とすることをお許し頂きたく」
「おお。
どこと、どこと、どこじゃ?」
「
そして、『
「さ、堺!?
大津と草津は良いとして……
堺を直轄地とするのは、さすがにまずいのでは?」
「『なぜ』、まずいのですか?
「それは……」
「堺が、京の都の商売敵だからでしょうか?」
「うむ。
堺と手を組んで、京の都の商人どもの憎悪を買うのは……
さすがにまずいと思うのだが」
「それがしは、堺と手を組むとは申しておりません。
直轄地として『税』を取るだけです」
「税を?
そんなことをすれば、今度は堺の商人どもの憎悪を買うことになるぞ?」
「思い出して頂きたい。
堺は、
「そ、それは」
「
堺が武器弾薬の支援を始めれば、状況は一変しますぞ?」
「一変!?」
「奴らが、いつまた京の都へ攻め上ってくるか分からないということです」
「なっ!
何と!
この
「堺を『放置』すれば……
いずれ、そうなるでしょうな」
「それはまずい!
まずいぞ!
兄の二の舞はご免じゃ!」
「
それがしは直ちに大軍を率いて堺へと進軍を開始し、力ずくで
「おお、それは良い!
そうしてくれ!」
◇
大津と草津、そして堺を直轄地とする正当な権利を手に入れた信長は……
あの日の愛娘との会話を思い出していた。
「要するに。
「はい。
だからこそ、お父上には一人でも多くの兵を率いて頂く必要があるのです。
京の都の『商売敵』を我が物とするために」
「京の都の商売敵!?
まさか!」
「その、まさかです。
あの堺を……
我が物となされては?」
「ま、待て!
我が父の
我が物にするとなれば、話は別だぞ?」
「別とは?」
「わしは一度だけ堺へ行ったことがある。
京の都を上回るほどの
「……」
「堺が、わしの支配を受け入れることなど絶対にない」
「お教えください。
お父上。
あの堺が、日ノ本一の繁栄を謳歌できたのは……
『どうして』なのです?」
【次節予告 第七十四節 応仁の乱の勝利者・堺】
父は、こう言います。
「およそ100年前に起こった『応仁の乱』の勝利者であったからじゃ」
と。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます