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 しゃべっている途中、視界が歪んだ。側頭部に違和感が走る。いつものアレだった。

「おかしいわね、改良に改良を重ねたモーニングスターなのに。なぜ死なないのかしら」

 そう、刹那がトゲトゲ鉄球付きの棍棒をフルスイングしたのだ。血が噴き出して大変なお祭り騒ぎだったが、一分後には血が止まり頭蓋は再生していた。

「不意打ちはよせよ……」

「正面からじゃだめよ、死なないわ。不意を突かないと。うっかり死んでくれるかもしれないじゃない」

「とんだうっかりさんだな、おい」

 刹那は嘆息すると、凶器をしまい、諦めた様子で切り出した。

「ずっとあなたを殺そうとしたけどダメだった。毒物を混入したり、計画的なトラブルに巻き込ませたりもした。物理的に常人が死ぬような攻撃を与えても死なない。だから3年に及ぶ藤一生の殺害計画は今日で終わり――」

「ちょっと待て、なぜ今日で終わりなんだ。明日も何か企んでいるんじゃないか」

 うっすらと涙を浮かべると刹那は小声で言った。

「私、もうすぐ死ぬわ」

 ――

 一瞬、沈黙が流れた。俺はすぐに理解できず、掛ける言葉を探し当てることもできなかった。

「死……ぬ……?」

 ようやく捻り出した言葉は単純で短いものだった。

「そう、私、死ぬの」



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