第62話 神様とディアネット③
大上段から迫る大剣を、左足を後ろに引いて、半身になってギリギリで躱す。
ボォウ！
左耳のすぐ横を大剣が通過し、鋭い風が耳を撫でた。
大剣を躱した私は、すかさず一歩前に踏み込んだ。私の得物は短剣。大剣とは間合いが違いすぎる。踏み込まねば届かない。
大剣を躱して短剣の間合いまで踏み込む。それしか勝機は無い。
その間合いの差から、必ず相手に先手を取られてしまうのが辛いところだ。だが、短剣の間合いまで詰めてしまえば、立場は逆転する。大剣のその長大なリーチが、今度は動きを縛る足枷となる。大剣の鈍重な動きでは、短剣の速さに付いてこられまい。
短剣の間合いまで、あと一歩というところで、相手が大剣を持つ手を返すのが見えた。大剣の斬り上げがくる！
私は地面に身を投げ出すように右へと跳び退く。後先考えない全力回避だ。
大剣は、振り下ろされた勢いそのまま、Ｖ字に斬り上げられ、一瞬前まで私が居た空間を斬り裂いた。危うく斬られるところだった危ない危ない。
私が回避を選んだ理由は簡単だ。あのまま一歩踏み込んで、相手の急所に短剣を突き立てたとしても、私も相手の大剣によって斬られてしまうからである。勢いの付いた大剣は、持ち主を殺したところで急には止まらないのだ。
地面に身を投げ出した私は、跳び退いた勢いを利用して、クルリと地面の上を一回転して立ち上がると、すぐに短剣を構えて相手を見る。
相手は、大剣を振り抜くと、すぐにこちらを見据えて大剣を構えた。やれやれ、また最初の形に戻ってしまったな。
相手の大剣を躱して間合いを詰め、短剣で仕留める。
言葉にすれば簡単だし、本来の私ならば容易いことだが、ルーの小さくひ弱な体ではなかなか難しい。
「おまけで引き分けってとこかね……これまでにしようか」
そう言って相手、アリスが大剣を下ろす。
「はぁー」
私も短剣の構えを解き、深く息を吐く。構えと一緒に緊張が解けると、一気に疲れがどっときたのだ。
ここは屋敷の裏庭。私とアリスが剣を交えていたのは、別に仲違いしたわけではない。アリスに稽古をつけてもらっていたのだ。最近は弓ばかりで短剣を使ってなかったからね。腕が鈍らないように、アリスに相手をお願いしたのだ。【赤の女王】は、しばらくダンジョンに潜れないので暇だったというのもある。
「おばちゃんと引き分けるなんてルールーすげー！」
「はい、驚きました。ルー、すごいです！」
「すごい…！」
裏庭で私とアリスの稽古を見ていたリリム、エレオノール、ディアネットの３人が驚きの声を上げる。ちなみに、ここに居ないミレイユは、神殿に呼ばれてお出かけ中である。
驚く３人の中でも、リリムとエレオノールの驚きは大きい。ディアネットがあまり表情を出さない質というのもあるが、２人はまだアリス相手に一本取るどころか、引き分けることもできないから、とても驚いている。２人ともアリスの強さをよく分かっているのだ。
「まったく、はしっこい子だ。これで手足が伸びたら……末恐ろしい子だよ」
そう言って頭を振るアリス。ルーの体は、まだ１０歳ほどの子どものような小柄な体だ。これから背が伸びると言うのは十分に考えられるだろう。
「いやいや、私はアリスの方こそ恐ろしいよ。その歳でこの強さは異常だよ？」
見た目６０は超えているだろう枯れ木のような老女が、ぶっとい大剣振り回してる姿とか、目を疑う光景だぞ。
「鍛えてるからね」
そう言って笑うアリス。
いや…物事には限度があると思うのだが……。
「じゃあ、次はリリムの番だね」
「うげー」
アリスは休みなしで、次はリリムの稽古をつけるようだ。ルーの体はへとへとだというのに、アリスはまだ余力があるらしい。化け物かよ。あの見た目でこの強さは詐欺みたいなものだ。
◇
ジャバーっと頭の天辺からお湯を被ると、シュワシュワと泡が溶けて流れていく。私はこの感覚がわりと好きだ。綺麗になったという感じがする。
二度三度と繰り返して、石鹸の泡を完全に洗い流す。シャワーがあれば楽なのだが……今度作ってみるか。
髪を一纏めにして、上の方からキュッキュッと手で握って水気を絞ると、髪を上げてタオルを頭に巻く。長い髪はいろいろと手間がかかるな。短く切ってしまうのもありかもしれない。
一段落ついて横を見ると、ディアネットがまだ、その長い黒髪を洗っていた。長い上に毛の量も多いから、一人で洗うのは大変そうだ。
「手伝ってやろう」
私は、ディアネットの後ろに立つと、ワシャワシャと髪を洗い始める。まるで壁のような黒髪を一纏めに手に取って、優しくもみ洗いしていく。
「あり、がとう…」
「気にするな」
髪を手に取ると、隠れていたディアネットの背中が見える。白く細い華奢な背中だ。腰なんて、下手に触れば折れてしまいそうなほどに細い。その下のお尻も小尻だ。ディアネットは、全体的に細く華奢な印象を抱かせる少女だ。その胸を除いては…だが。
そのディアネットの胸だが、なんと後ろからも見ることができる。どういうこと？と思うかもしれないが、脇の間からおっぱいの裏側、あるいはおっぱいの横部分とでも言うべき胸の膨らみが確認できるのだ。
「せいやっ！」
ディアネットの髪を洗い終わった私は、我慢できずに、ディアネットの背中に抱きつくようにして、彼女の胸を揉みしだく。
ディアネットの胸の柔らかさと弾力。そして、石鹸によって滑る手。もちっちゅるんとした、なんとも気持ちの良い不思議な感触だ。無限に触っていられる。
おっぱいをおもちゃにされているのに、ディアネットはノーリアクションだ。無表情で、捏ねられている自分の胸を見つめている。
「いいのか？おもちゃにされているぞ？」
「好きにして、いい…」
好きにしていいらしい。ディアネットって本当に寛大だよね。許可を貰った私は、ディアネットの下腹部にも手を伸ばす。もじゃっとした茂みを抜け、その奥の谷へとその指を滑らせる。
「んっ……」
ディアネットの無表情が、一瞬ピクリと崩れる。崩れきったディアネットの顔も見てみたいな。
その後、ディアネットの顔がとろとろに蕩けきるまで好きにさせてもらった。かわいいディアネットの顔も見られて大満足だ。
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