第60話 神様とディアネット②
チュンチュンチュンッと小鳥のさえずりが聞こえる。
早朝。まだ薄暗い中、窓から穏やかに朝日が差し込み、ディアネットの淡くピンクに染まった白い裸体が照らされる。白く輝く裸体と、黒く広がった長い髪とのコントラストは、芸術的な美しさすらあった。
ディアネットは、私の横で一糸纏わぬ生まれたままの姿で横になっている。2人でベッドの上で横になって見つめ合っている形だ。服? 服なら情事の際に脱がせてしまったよ。かく言う私もすっぽんぽんだ。
情事。情事か……。ついに抱いてしまったな。今まで、
私は後悔していないが……むしろ満足したのだが……ディアネットはよかったのだろうか? ディアネットが後悔していないか、それだけが心配だ。
「ディアはよかったのか? 私で」
「いい…」
ディアネットは、コクリと言葉少なに小さく頷いた。
ディアネットは、嫌がるそぶりは見せなかったし、初めてなのに意外にも積極的だった。本人が納得しているのならよかったのかな?
「だが、女同士だぞ?」
「変…?」
一般的には異性愛者の方が圧倒的に多いが、同性愛者も少なからず存在している。そして、この世界は同性愛に比較的寛容だ。なにせ、同性愛の神様すら存在している世界だからね。同性愛者は、珍しがられるが、とくにバッシングの類は無い。しかも、同性間で子どもを授かる方法すらある。神の奇跡ってやつだ。
「別に変じゃないか」
「そう…」
ディアネットが納得しているなら問題は無いか。私はホッと胸を撫で下ろす。酒に酔った勢いで、無理やりディアネットを手籠めにしてしまったわけではないと知って安心したのだ。
そんな私をディアネットが心配そうな瞳で見つめてくる。
「後悔、してる…?」
「後悔? していないよ」
私は、少しでもディアネットの心配を拭いたくて、きっぱりと答える。
「でも、みんな、私より魅力的…」
ディアネットが悲しげに目を伏せる。みんなとは、おそらく【赤の女王】の仲間たちのことだろう。たしかに皆それぞれ魅力的な美少女だ。
「ディアも同じくらい魅力的だよ」
言ってしまってから、私は自分の間違いに気が付いた。ディアが一番と答えれば良かったな……。
「あり、がとう…」
しかし、思いの外ディアネットは嬉しそうだ。彼女にとって、仲間たちと同じというのは嬉しいことなのかもしれない。
「でも、私は、4番目で、いい…」
4番目? 何の話だ?
「どういうことだ?」
「きっとみんな、ルーを好きになる…」
たしかに今のところパーティメンバーとは良好な関係を気付けていると思うが……。彼女たちが私を恋愛的な意味で好きになるかと言われると……分からない。だが、ディアネットは確信でもあるのか自信ありげだ。
この世界は、同性愛に対して寛容だし、いろいろ制約があるが、重婚もわりと一般的だ。王族や貴族はもちろん、市民でも重婚している人もいる。もちろん、一途に一人を愛して重婚しない人も多い。むしろそっちのほうが多数派だ。ハーレムや逆ハーレムは少数派だが、違法ではない。
「だから、私は、4番目でいい…」
ディアネットは相変わらず自己評価が低い気がする。何時も眠たげな瞳が縋るように私を見つめていた。
「4番目もなにも、ディアが初めての恋人だよ?」
「えっ…!?」
そんなに予想外のことだったのか、ディアが目を瞠って驚く。
「でも、みんなとも寝てる…」
「あれはただ一緒に寝てるだけだよ」
たまに
「びっくり…」
ディアネットに驚かれてしまった。どうやらディアネットは、私が皆にも手を出していると思っていたらしい。
「ルーはエッチ。意外…」
私は……あれだよ?ちょっと
「私が、初めて…」
ディアネットが微かな笑みを浮かべて呟く。その手を伸ばし、私の頬を愛おしそうに撫でた。
「でも、私は、4番目でいい…」
「やけに4番目にこだわるな。なぜだ?」
「みんな一緒がいい、から…。でも、5番目は、嫌…」
ディアネットは、私の想像以上にパーティメンバーのことを気に入っているようだ。ずっと彼女たちと一緒に居たいらしい。そのために、私にハーレムを作れと囁く。
そして5番目。つまり、パーティメンバー以外の人が、ハーレムに加わるのは嫌だという。
「ハーレムを作れと言うが、私は一途にディアだけを愛し続けるかもしれないよ?」
「ルーには、無理…」
ディアネットにきっぱりと言い切れてしまった。ちょっと悲しい。まぁそれも仕方ないか。私自身、自分を一途な神だとは思わないからね。据え膳はとりあえず食べるスタイルだ。
しかしハーレムか。【赤の女王】のメンバーは、皆美少女だし性格も良い。一緒に暮らしていて楽しいしな。ハーレム……目指してみても面白そうだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます