第40話 神様とリリム

 むぎゅーっとリリムに抱き寄せられる。私の顔はリリムの胸に埋もれ、息ができないほどだ。


「ぷはっ」


 リリムの胸から抜け出すと、間近にリリムの顔があった。もうキスでもしちゃいそうな距離だ。その綺麗に整った双眸に、今は閉じられた瞳。目を閉じていると、睫毛の長さがよく分かる。すっと通った鼻筋に、綺麗なラインを描く柔らかそうな頬。少し緩んだ唇は、まるで私を誘っているかのようだ。


「すぅ…」


 目が閉じられている通り、今リリムは睡眠中だ。私は今日、リリムと褥を共にしている。


 いつも蓮っ葉で元気な印象のリリムだが、その豊かな赤髪を下ろし、あどけない表情で眠る彼女は、とても美しいお淑やかな少女に見える。まるで童話の眠り姫だ。


「んー…」


 またむぎゅっとリリムに抱きしめられる。顔に胸を押し付けられているみたいだ。むにゅっと形を変える乳は、弾力に富んでいてハリがある。しっとりと柔らかいディアネットの乳とは、また違った感触だ。どちらが良いかは甲乙付け難い。おっぱいは、みんなちがってみんないい。おっぱいに貴賤など無いのだ。


 おっぱいに顔を埋めると、なぜだか自然と気持ちが安らぐ。温かいし、良い匂いもする。柔らかくて気持ちが良いし、最高だ。楽園はここにあったのだ。


 惜しむらくは、私と楽園との間に壁があることだろう。キャミソールという壁が。


 幸い、キャミソールは薄手の物だ。在って無きが如し。だが、楽園への侵入を阻まれているようで、とても残念に感じてしまう。せっかくの逢瀬を邪魔された気分だ。


 邪魔物にはご退場願おう。


 私はリリムのキャミソールを脱がせることに決めた。リリムが起きないようにゆっくりと慎重に、少しずつ少しずつキャミソールを上へとずらす。なんだかすごくドキドキした。リリムの肌など何度も見ているのだが、シチュエ―ションが違うと、こうも興奮するものらしい。


 途中、キャミソールがリリムの乳につき当たってしまった。リリムの乳が大きすぎて、キャミソールを捲り上げることができない。強引に脱がせるのも手だが、リリムが起きてしまうかもしれない。


 私は違う手を取ることにした。リリムの突き出た胸が邪魔なら、胸を引っ込めれば良いのである。私は、キャミソールの中に手を入れて、リリムの胸をむにゅっと押し潰した。


 手から予想以上の弾力と、吸い付くような肌触りを感じる。思えば、リリムの乳に直接触るのは初めてだな。大きさといい、柔らかさといい、弾力といい、ハリといい、若くてエネルギッシュな良いおっぱいだ。ぽよぽよとずっと遊んでいたくなる。


 リリムの胸を押し潰している間に、キャミソールを捲り上げる。リリムの胸から手を離す時に、ぽよんっと手が押し返された。すごい弾力だ。中身がキュッと詰まっているのだな。リリムの胸はまだまだ大きくなるのかもしれない。


 さて、待望の楽園とのご対面である。と、その時……。


「ん~……」


「わぷっ」


 リリムが私を強く抱きしめた。私の顔はリリムの楽園へと沈む。全く息ができないほどの密着感だ。リリムの鼓動の音すら聞こえる。リリムの肌は、しっとりと汗をかいているのか、吸い付くように私の顔に押し付けられ、まるで呼吸ができない。


 さて、どうしたものだろう。リリムはまだ私をキュッと抱きしめ続けている。抜けだすのは容易いが、さすがにリリムを起こしてしまうだろう。せっかく気持ち良さそうに眠っているのに、起こしてしまうのは、ちょっとかわいそうだな…。


 なんてことを考えていたら、だんだんと意識が遠のいてきた。早いな、もう限界なのか。なんだかふわふわと良い気持になってきた。窒息死は気持ちが良いと聞いたことがあるが……本当らしい。


 美女と言うには少し幼いか、美少女の胸の中で窒息死というのも案外良いかもしれない。胸は柔らかくて気持ちが良いし、鼓動の音はなんだか聞いていて安心する。窒息も気持ちが良い。なんだこの3連コンボは。とても気持ちが良い。


 その心地良さの中、私はついに意識を手放した。



 ◇



「はぁー…」


 神の間で、私は盛大にため息を吐く。なんと言えばいいのか……自分でも呆れてしまう結末だ。


 目の前には、目の前にはすやすやと心地良さそうに眠るリリムが映し出されている。その胸の中にはルーの体が抱かれていたが、ルーはピクリとも動かない。呼吸すらしていない。ルーの体は死んでいる。


 なぜ、こんな間抜けな最後になってしまったのだろう?


 考えられる原因は2つだ。


 1つ目は、ルーの体にある。ルーの体に入ると、まるで幼い子どものように、好奇心や自分の欲にとても素直になってしまう。幼い体に精神が引っ張られているとでもいうのだろうか。だが、ルーの体に入ると、感情や欲の制御が甘くなるのは確かだ。


 2つ目は、私が神だから変に余裕があったことが原因だ。私にとって、死とは状態の一つでしかない。容易に変更できるものだ。私は人のように死を恐れない。ましてや、ルーの体の死なんて、私には何のダメージも無い。


 この2つが原因だろう。このままでは死ぬと分かっていたのに、欲に負けて心地良さに身を委ねてしまった。神としての余裕が、ルーの体の死を些事と判断してしまった。


 結果、私はこんな間抜けな死に様を晒している。穴があったら入りたいほど恥ずかしい。これは、他の神々には内緒にせねばな。


 さて、反省も済んだし、ルーの体を治すとしよう。こんな間抜けな最後なんて認めない、ノーカンである。


 それに、このままではリリムが人を殺したことになってしまうからな。それはあまりにもかわいそうだ。

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