第26話 神様の歓迎会

 その後も、恥ずかしがるエレオノールとミレイユを引き連れて買い物を続けた。


 服以外にも色々買ったよ。ポンチョのような外套に、携帯用の食器やコップ、食料。予備の短剣と弓、部屋に置く小物や、風呂上がりに髪に馴染ませる香油。もちろん、ちゃんと矢筒と矢、ピッキングツールも買った。


「「「ただいまー」」もどりました」


 買い物を終え、館に帰る頃には、日もとっぷり沈み、夜になっていた。


「おっ、3人ともおかーりー。よっ!本日の主役!待ってたよー」


 リビングに入ると、リリムに熱烈な歓迎を受ける。その目は私を見ていた。


「主役?」


 何のことだろう?


「そそ。まぁまぁこっちこっち!」


 パーリ―だよ、パーリ―!と言うリリムに背を押され、テーブルへと案内される。


「これは…!」


 テーブルの上に置かれた料理の数々。明らかに昨日の夕食よりも豪華だ。真ん中にあるアレは、ひょっとして七面鳥か?でかい鳥の丸焼きが鎮座している。


「エルエルもミユミユも座って座って。おばちゃーん!ルールーたち帰ってきたよー!」




 皆がテーブルに着くと、リリムが立ち上がった。


「ではでは、みんな集まったところで、エルエルから挨拶があります!」


「わたくしですか!?」


 聞いていなかったのか、エレオノールが驚きの声を上げる。


「だってパーティリーダーじゃん。エルエルやってよー」


「もう、発起人はリリムでしょうに…」


 どうやらリリムが企画したものであるらしい。私が主役で、このタイミングでのパーティー。もう察しはついている。リリムには感謝だな。


「えぇー、本日は御日柄も良く……」


「硬いよエルエル!もっと柔らかく!フレンドリーに!」


「えぇ…フレンドリーに、柔らかく…?ようこそ、わたくしたちのパーティ【赤の女王】へ。わたくしたちはルー、貴女を歓迎します。これからよろしくお願いしますね」


「よろしくー」

「よろしくね」

「…よろしく」

「まぁがんばんな」


「うむ、こちらこそよろしく頼もう」


「では、【赤の女王】の益々の繁栄を願って、かんぱーい!」


「「「「「かんぱーい!」」」」」


 まさかこうして大々的に祝ってもらえるとはな。改めて良いパーティに入ったと感じさせてくれる。降臨すると毎回、人間関係の構築に苦労するのだが、今回はすんなりといって良かったな。【赤の女王】の皆に、そしてパーティに誘ってくれたエレオノールに感謝だ。


 感謝と供に、グラスに注がれたワインをゴクリと飲み干す。ふむ、このワイン美味いな。甘味が強く、水のように澄んでいる。これならいくらでも飲めそうだ。




 歓迎会が始まって少し経った頃、ガブリと頬張った七面鳥をワインで流し込み、私はかねてからの疑問を口にする。


「ダンジョンには、いつ潜るのだ?早く行ってみたい」


 パーティにも入ったし、装備や道具も整え、ダンジョンに潜る準備は万全だ。私は早くダンジョンに潜りたくてウズウズしていた。


「まぁまぁ、慌てんなって」


「そうですね。明日は、ルーの力を見せてもらいましょう。ダンジョンはそれからです」


 私の実力を試したいということだろう。たしかに、エレオノールたちにとって、新メンバーの実力を確認するのは大事なことだ。何ができて何ができないか、それ次第では、パーティの戦略の見直しも必要になる。


「ふむ…」


 ダンジョンはまだお預けらしい。




「ふぅー。熱いですねー…」


 宴もたけなわといったところで、おもむろにエレオノールがブラウスのボタンを外していく。顔が赤らみ、目がとろんとしていて、一目で酔っていることが分かった。


 エレオノールが、胸の下までブラウスのボタンを外して、パタパタとブラウスで扇いでいる。ブラウスの合間からは、胸の谷間から今日買った黒いブラジャーまで丸見えだ。いつもとは様子が違うエレオノールの痴態に、ついつい目が奪われる。しかし、目を奪われたのは私だけではなかった。


「あー!エルエルがブラ着けてるー!おっとなー!」


 リリムがエレオノールのブラジャーに気付いて囃し立てる。そうだね、今までエレオノールはブラジャー着けてなかったからね。


「ふふん。そうです、わたくしももう大人の女性です」


 いつものエレオノールなら恥ずかしがりそうなものだが、酔ったエレオノールは、ブラジャーを見せつけるように胸を張る。もう完全に胸がブラウスから飛び出し、ひどく扇情的だ。


「私も私も―。見て―」


 エレオノールの姿に触発されたのか、ミレイユがイスの上に立ち上がり、スカートをひらりと捲り上げる。チラリと見えたパンツの白が眩しい。


「えー。見えなーい」


「そうだそうだ。全然見えないぞー」


「「ぬーげ!ぬーげ!ぬーげ!ぬーげ!ぬーげ!」」


 私とリリムの脱げコールに、ミレイユが酔って元々赤かった顔を更に赤く染める。


「やーよ、もー。……ちょっとだけよ?」


 ミレイユは困ったような表情を浮かべ、しかし、スカートを摘まむと、ゆっくりと、徐々に、スカートをたくし上げていく。ミレイユの仕草に色気を感じてしまう自分がいた。


 徐々に露わになるミレイユの太ももの白さが眩しい。


 ミレイユの太ももに目を奪われながら思う。どうやらエレオノールとミレイユの2人は、酔うと開放的になるらしい。普段とは違う様子を見せる2人をかわいらしく思ってしまう。


 それにしても、今日痴態を晒した2人は、明日はいったいどんな顔をするのだろうな?


 酔いを醒ました彼女たちは、今日の痴態を思い出して頭を抱えるだろうか?


 明日の彼女たちの反応が楽しみに思えてしまう私は、意地が悪いだろうか?

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