第25話 神様とパンツ②
「でも、エルもこのパンツよっ!」
ミレイユの発言に私は驚いた。幼い外見のミレイユだけかと思ったら、まさかエレオノールまで、かぼちゃパンツの愛用者だったなんて。
「ちょっとミレイユ!?」
エレオノールが慌てたように叫ぶ。顔を赤くしているし、この慌て様、まさか本当なのか?
私は真実を確かめる為に、エレオノールのロングスカートの中へと潜り込んだ。ロングスカート裾を摘まんで捲り上げ、開いた空間に身を滑りこませようにスライディングする。
「ルー!?」
スカートの中は暗かった。しかし、私の目をもってすれば、このくらいの闇など見通せる。伊達に神ではないのだ。
私の目に映った光景は……!
「はぁー…」
「ひゃんっ。もう!出てってください!」
エレオノールにスカートの中から追い出された。正確には、エレオノールが後ろに下がって逃げた形だ。
「エルよ…。まさかエルまで女児パンツだとは……」
「見えたんですか!?いえ、その、何を身に付けようと、わたくしの自由では?」
「それはそうだが……」
一瞬、エレオノールのような女の子が、かぼちゃパンツを穿いているのは、それはそれでギャップがあって良いのでは?と思ったが、慌ててその思考を捨てた。
「まさかとは思うがエルよ。さすがにブラジャーは着けているよな?」
「………」
まさかとは思ったが、図星のようだ。これは由々しき事態だな。エレオノールの美しい体のラインを守る為にも、彼女の下着事情も改善せねば。
「エルよ、そしてミレイユも、聞いてくれ。今から話すのはとても大事な話だ」
エレオノールとミレイユは、お互いの顔を見合わせてから、私に頷きを返した。
「女性の体はな、崩れるのだ」
「崩れる…?」
「物騒ね。どういうことよ?」
私は語った。女性の胸やお尻のラインがいかに崩れやすいかを。そして、それを防いでくれるのが、私の勧めている下着だということを。かぼちゃパンツでは、その力が弱いことを。自分に合った下着を身に着けることの重要性を。そして、私の勧める下着の方が体のラインが美しく見えることを。なんだか気分は下着のセールスマンだ。
「分かってくれたか?」
語り終えた私は、2人に確認する。伝わっただろうか?
2人の顔は少し青ざめていた。眉をハの字にして、不安そうな表情だ。
「まさかそんなことが……」
「嘘よ…。嘘だと言ってよ…」
「残念ながら本当だ」
2人が、がっくりと肩を落とす。まぁたしかにショッキングな話だったかもしれない。だが、下着を変えれば、かぼちゃパンツから卒業すれば良いだけの話だ。
「2人は、どうしてそこまで女児パンツにこだわるのだ?」
「それは…」
「恥ずかしいじゃない。だって、こんなに小さいのよ」
「そうですね。布面積が少ないですし、生地の薄さも不安です。それに、小さな頃からこの下着でしたので、安心感が…」
「なるほど。だが、体のラインを保つためにも、下着は変えた方が良い。2人も15歳、成人し、大人になったのだ。そろそろ勇気を出して下着を変えてみても良い頃合いだろう」
「そう、ですね…」
「分かったわよ…」
やっとの思いで2人を説得できた後は、さっそく2人の、私の分も合わせて、3人分の下着を見繕っていく。
「ミレイユ、これなんかどうだ?」
「スケスケじゃない!?ハ、ハレンチよ!」
「見てください、これなんて後ろが紐ですよ!こんな物をいったい誰が…」
「私が穿こうかな」
「「えっ!?」」
エレオノールには、ブラジャーも見繕う。
「どうだ?」
「やはり違和感があります。でも、胸は少し楽になった気がします」
「そうだろう、そうだろう」
「なんであなたが、そんなに訳知り顔なのよ…」
私よりも胸無いのに…と呟くミレイユ。私は、今でこそ貧乳を通り越して無乳だが、前前前回は巨乳の女だったからね。乳の苦労は分かるつもりだ。
「ねぇ、私はどんなブラ着ければいいの?」
「ミレイユは…もう少し大きくなってからだね。胸が小さすぎて着ける意味が無いよ」
「あなたに言われると、釈然としないわね…」
◇
「ありがとうございましたー!」
元気な店員の挨拶を背に、私たちは、文字通り装いも新たに服屋を後にする。
それにしても、あの店員ニコニコだったな。まぁ大量に服や下着を買ったからね。商品が売れて嬉しかったのだろう。
装いも新たに、と言ったのは、私たちが買った服に着替えたからだ。
ミレイユは、先程から着ていた白の袖なしワイシャツと赤のギンガムチェックのミニスカートに。私は、白の袖なしワイシャツと青のギンガムチェックのミニスカートに。ミレイユと対になるように色違いのお揃いにした。ミレイユが赤、私が青だ。エレオノールは、見た目に変化はないが、実は下着が上も下も変わっている。
新しい服というのは気持ちが良いな。ついつい風を切るように、格好つけて歩いてしまう。
「ん?」
しばらく歩いてから、私は横にエレオノールとミレイユの姿が無い事に気が付いた。
振り返ると、2人は私に遅れてのっそりと歩いてくるのが見えた。両手でスカートを押さえ、顔を俯かせて、いかにも頼りない姿だ。
「どうしたんだ?気分でも優れないのか?」
「いえ、その……」
「恥ずかしいのよ……」
よく見ると、2人の顔が赤い。本当に恥ずかしがっているようだ。
たぶん下着を穿き変えたせいだと思う。2人とも下着を新しい物に着替えていた。と言うか、着替えさせた。善は急げって言うしね。
「そんなに恥ずかしいの?下着なんてスカートに隠れて見えないよ」
2人がなぜそこまで恥ずかしがるのか、謎だ。
「それはそうだけど、すっごいスースーするのよ……」
「そうですね。とても頼りないです……」
たしかに、2人の股間部を覆う布は激減したからね。それに、通気性も上がっているだろう。スースーするのは当然だ。
「あなたは恥ずかしくないの?あんな、後ろが紐みたいで、お尻丸出しで…」
「Tバックのことか?涼しくて快適なくらいだ」
2人がまるで信じられないものを見たかのような表情をする。
「それに、この形にもちゃんと意味はあるんだぞ?」
「どんな意味よ?いやらしい意味じゃないでしょうね?」
「違う。蒸れないし、擦れないからお肌に優しいし、下着のラインが出ないから着る服を選ばない」
「へー」
「ちゃんと意味はあったのですね」
2人がホッとしたような、納得したような声を出す。
「2人の分も買っておいたからな、後で試してみるがいい」
「「え…?」」
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