第15話 神様と脱衣所
「ここがお風呂場よ。ちなみにその隣はトイレね」
風呂は、リビングを出てすぐの所にあった。ドアを潜ると、まず現れたのはそこそこの広さがある脱衣所だ。壁には空いた棚やハンガーが並び、部屋の隅には大きな籠が置いてあった。
「ここが脱衣所ね。服を脱ぐ場所よ。荷物やアクセサリーなんかは棚に置いておくといいわ。で、脱いだ服はあの籠に入れておくのとアリスおばあちゃんが洗濯してくれるわ」
「至れり尽くせりだな」
食事の世話だけでなく洗濯もしてくれるとは。
「ほんとよねー。これで家賃がタダなんて、信じられないわ。今日なんてすっごい宝具までくれるし、どんな聖人よって話よね。私には物語の聖人なんかより、アリスおばあちゃんの方が聖人に見えるわ」
「そうだなー」
物語の聖人か。もしかしたら、私の話もあるかもしれないな。神とはバレなかったが、聖人と謳われることはわりとあったし。
「しかし、それでアリスの生活は大丈夫なのか?」
家事もして家賃も取らないでは、アリスの収入が無いが…。
「アリスおばあちゃん、昔冒険者やってたでしょ?その時すっごい大金を稼いだんですって」
だからお金のことは気にしなくて良いらしい。すごい太っ腹な話だ。
「だが、なぜアリスは寮母のような立場に甘んじているのだ?金があるなら人を雇って、自分は遊んでおればいいだろうに」
人の一生はとても短い。その短い生を楽しく謳歌しようと罰は当たらんだろう。
「そこがアリスおばあちゃんのすごいところよ!自分の手で後進の育成?をしたいんですって。私たちをダンジョンに連れて行って色々教えてくれるわ。この間なんて、ダンジョンのボスを一刀両断にしてたのよ」
「それはすごいな」
もういい歳だろうに、自分は引退したと言いつつ、ダンジョンに潜っているらしい。元気すぎるだろ。
「っと、話してないで早くお風呂に入らないと。私は着替え持ってくるから、先に服脱いでて」
ミレイユが脱衣所から出ていく。ポツンと見知らぬ場所に残されると、少し寂しい気分だな。
そんなことを思いながら、私は服に手をかけた。
◇
「お待たせー」
ミレイユは、私が服を半分も脱ぐ間もなく帰ってきた。急いだのか、ミレイユの息が少し弾んでいる。
「はいこれ」
ミレイユが、手に持っていた服を半分こちらに寄こす。
「これは?」
「あなたの着替えよ。私の服貸したげるわ」
「いいのか?」
「いいのよ。せっかくお風呂に入るんですもの、元の服をまた着てちゃ、お風呂に入った意味ないでしょ」
そう言うと、ミレイユが髪のリボンを解く。髪を下ろしたミレイユは、少し大人びて見える。頬にかかった髪を後ろに払う姿には、まるで別人のように艶があった。
ミレイユの思わぬ一面に目を奪われていると、ミレイユがスポーンとワンピースを脱いだ。私が見ているというのに、大胆な娘だ。まぁ今の私の見た目は女の子だから普通か。
ミレイユが下着も脱ぎ捨て、あっという間に一糸纏わぬ裸体を露わにする。
うーん…。髪を下ろして大人っぽさがグッと上がったが、その体はまだまだ子どものものだ。本当に15歳だろうか?胸は平坦だし、下の毛も生えていない。唯一評価できるとしたら、プリッとした丸いお尻かな。
ミレイユが私の視線に気づいたのか、こちらを見た。
「ほら、見てないであなたも服脱ぎなさい」
「うん」
私もベルトを外し、紐を緩め、服を脱いでいく。この盗賊装備は、体にピッチリとして動きやすいが、脱ぐのにちょっと手間だな。
上半身を覆う厚手の水着みたいな装備を脱ぎ、ホットパンツと一緒に下着も下ろすと、ミレイユの視線を感じた。ホットパンツを足から抜きながら、ミレイユを見る。
「綺麗な肌…赤ちゃんみたい」
ミレイユが呟くように言う。まぁ生まれたてという意味では、赤ちゃんと変わらないからね。まだ肌にダメージが蓄積されていないから、そう見えるのだろう。
「それにしても細いわねー。ちゃんと食べてるの?」
「ミレイユもそう変わらないだろ?」
「そうかしら?この辺とか太い気がするのよねー、あとお尻とか」
ミレイユが二の腕を摘まみながら言う。幼く見えても女ということだろう、自分の体のスタイルが気になるようだ。
「でも、私の方が大人のレディね」
ミレイユが勝ち誇ったように無い胸を張る。
「どこがだ?私と変わらんだろう」
ミレイユの体は幼い。何も知らなければ10歳ほどの少女に見える。とても15歳には見えない。明らかに発育不良を起こしている。先程ミレイユに、ちゃんと食べているか心配されたが、ミレイユの方が、ちゃんと食べているのか心配になる。
「変わるわよ。私の方が背が高いし、胸もあるし、毛だって生えてるんだから」
身長は確かにミレイユの方が高いか?それでも1センチも差は無いだろう。ドングリの背比べだ。胸も、よく見ればほんの僅かに膨らんでいる気がする程度のものだ。そして、下の毛は生えてない。
「ツルツル」
「はぁ?どこに目を付けてるのよ。もっとよく見なさい」
もっとよく見ても良いらしいので、お言葉に甘えることにした。ミレイユの前に行ってしゃがみ込み、ドアップでミレイユの股間を覗き見る。
「ちょっと!顔を近づけないでよ!」
ミレイユが腰を引くのを、逃がすかとばかりにお尻掴んで引き寄せる。ミレイユのお尻はぽよぽよだった。柔らかい。ずっと触っていたくなるお尻だ。
「ひゃんっ!ちょ、バカバカバカお尻触らないでよ!」
「よいではないか、よいではないか」
ミレイユが私の頭を押し退けようとするのに逆らって、ミレイユの股間にグッと近寄る。鼻息がかかるような距離だ。
ミレイユの下腹部には、たしかに毛が生えていた。しかし、この距離まで近づかないと分からないような、透明な産毛が、ちょびっと生えているだけだ。
「これは生えていると言えるのか?産毛ではないか」
「産毛でも毛は毛でしょ!それより離れなさいよ!」
毛を確認した私は大人しくミレイユから離れた。
「あなた変態なの!?あ、あんなに近くで見なくてもいいじゃない。お尻も触ってくるし」
ミレイユが顔を真っ赤にして私に抗議する。
「もっとよく見ろと言ったのはミレイユじゃないか。それにあの産毛は、あれぐらい近づかないと見えないよ」
「うぐっ。そうかもしれないけど……」
「それより早く風呂に入ろう。体が冷えてきた」
「もー!あなたが変なことするからでしょ」
ミレイユがぷりぷりとしながら歩き出す。後ろから見ると、お尻がぷりぷりと揺れてかわいらしい。
「お風呂はこっちのドアよ」
ミレイユがドアを開けると、白い湯気が私たちを包んだ。
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