第7話 自慢のお兄様
お父様と別れてから、一刻程過ぎてから、自室扉がノックされた。このタイミングならば、間違いなくあの人しか居ない。
「どうぞ。お入りになって。」
「こんばんは。ホットミルクは如何かな?俺の可愛いお姫様」
扉から顔を覗かせたのは、兄のテオドール。私とは、違いプラチナブロンドヘアに蒼眼で長身。痩せ型ではあるが、剣を持たせても大会では、1.2位に必ず入る腕前。お父様の次の宰相候補と言われるだけあり、智略家で冷徹な時もあると言われるが、私には1度も見せた事がない。優しいと言うイメージしかない。
この兄が微笑んだだけで、女性達は悲鳴をあげる。
男性に苦手意識がある私でも、兄は尊敬しているし、異性の中で好きな人。世の中の男性で唯一認めている人である。
「私は、可愛げのない女ですよ。」
と苦笑すると、
「俺にとっては、世界一可愛いお姫様だよ。隙だらけで心配だよ。」
私の髪を撫でながら、優しく微笑んでくれる。
「先程隙が無くて可愛げが無いと言われたばりですよ。お父様から、私に説教する様に頼まれたのでしょう?廊下迄お父様の何を言っているのか分からない叫びが響いていましたから。」
優しく髪にキスをして、抱きしめながら
「父上もお年だから、余り虐めないであげて。サラの話しなら、幾らでも俺が聞いてあげるよ。もしかしたら父上よりもサラの役に立つかも知れないよ。」
言われてみたら、王太子殿下に一番近いのは、この兄ではないだろうか?
クリスと同レベルで警戒しなければいけない相手は、間違いなく、お忍びで登校している殿下である。疾しい事がない限りお忍びなんて、どう考えても可笑しい。
「それはそうと、サラはキアラ嬢が好きなの?生涯を共にしたい相手として。父上が困っていたよ。ほら最近は小説か何かの影響で同性同士の恋愛が注目されているらしいからね。」
血の気が引いた。意味が違う!私の考えている事とは違う!
「そう言う意味ではないのよ!キアラは、騙され易いのよ。ダメ男磁石なのよ。気を抜くとダメ男が吸い寄せられるのよ。クリスと殿下が良い例なの。」
「サラの中では、殿下はアカデミーにいるんだ。遊学中の筈なのに。」
兄は苦笑しながら呟いた。私は逃さず
「それは間違いないわ。居ても良いけど、キアラを良い様に使う事だけは、許せないのよ。だから、ダメ男に引っかかる位なら、お祖父様から頂いた領地で、キアラと一緒に自分らしく生きていきたい。と思っただけよ。
私別に女性が好きな訳じゃないわ。お兄様は大好きよ。兄妹でなければ、結婚したい人よ。もし、結婚するなら、お兄様と同等…いいえ!お兄様以上のスキル持ちでなければ嫌だわ。でもお兄様以上の人は絶対にいないから。結婚は…仕方がないわ。」
兄は、微笑んで、頬にキスをした。
「そうだね。実の兄は、ダメだけど、従兄弟なら結婚出来るね。じゃぁ、サラ今後は、何かあったら、俺が対応してあげるからね。相談でも、対処して欲しい事でもね。この書類にサインしてくれる?これを父上に出せば、サラを俺が守ってあげるよ。この書類は正式な物だから、仮に殿下相手であってもこれがあれば問題ないよ。サラを守る事はキアラ嬢を守る事にもなるんじゃないかな?」
兄は、本当に頭が良い。直ぐに了承して、内容は見ずにサインした。お兄様が変な書類なんか私に出す筈がないから。
お兄様は、嬉しそうに受け取り、ホットミルクを私に出して
「安心して、ゆっくりと休むんだよ。」
と優しく抱きしめて、髪にキスをしてから、書類をヒラヒラと靡かせて出て行った。
他の家は知らないが、お兄様は私には甘い気がする。髪や頬へのキスは親愛の証だから、家族でもすると思うが、大好きなお兄様からのものでは、心臓が早鐘の様で辛い。
でも、兄が味方になってくれるなら、心強い。お父様も偶には良い事をするのね。
と思いながら、ミルクで温まった身体を、ベッドに潜り込ませた。
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