第8話 へっぽこ探偵誕生
翌日、教室でサラと今後の話しを聞いて貰おうと話し掛けたら、サラは、口に人差し指を当てて、止めた。
「誰が聞いているか、分からないから、ランチに個室を取ったから、そこで話しをしましょう。」
小さく頷いて、教室内では、たわいも無い話しをした。クリス様が女生徒を口説きまくっているなら、この教室内にもいるかも知れない。敵は何処にいるかも分からない状態。男子生徒だって、浮気は甲斐性位に考えている人もいるかも知れない。用心に越した事はない。
※※※※※※
ランチタイムになり、私とサラは、サラが予約してくれた個室へ向かった。
いつもは、食堂で好きな物を選ぶが、今日は個室なので、先に要望を伝えておくと部屋には既に用意されている仕組みになっている。なので、今日はサラがチョイスしてくれたランチセットになっている。
女の子受けが良い
サーモンのカルパッチョ
カボチャのポタージュ
ハンバーグステーキ
アイスティー
カシスジュレ
運び込まれて、給仕が居なくなる迄は話しをしない。誰も居ない時に話しをする。なので食べるスピードはかなり緩やか。
「今日は、何をする予定?」
サラから口火を切った。
「放課後、クリス様の後をつけてみようと思うの。クリス様が何処で口説いているのか分からないから。先ずは場所を知りたいかな?」
「普通は同じ場所で口説く事は無いけど、大体どの辺りが多いと言う目星にはなるかも知れないわね。人気が少ない所なんて限られて来るだろうし。」
小さく頷いた。正直虚しい。何年も好き同士だと思っていた人の裏切りの証拠を集めるのだから。クリス様は申し込んで来た時は、本当はどう思っていたのだろう。男爵から勧められて、イヤイヤの婚約だったのか。
「何かしたかなぁ。」
知らず知らずに呟いていた。
「何もしていないわよ。何かしたのはクリス。そしてクリスは、アカデミーに来てからキアラに対して何もしなかった。他の誰かには口説いたり、していたみたいだけど、キアラには何もしなかったのよ。
だから、キアラは余計な事は考えないで。そしてクリスの事は呼び捨てにしなさいよ。あんなヤツに敬語は勿体ないわ。」
はっきりと言ってくれるサラに目線を移すと涙が出て来た。サラは自分のハンカチを出して拭ってくれた。
「この前ラルフ様にも涙を拭いて貰って。申し訳ないから、新しく出来たお友達用に作った刺繍ハンカチ渡したの。」
サラの手が止まった。首を傾げると、
「未だ持ち歩いていたの?」
と聞かれたので、頷くと
「キアラ。私にはくれないのね。」
と拗ねてしまった。サラは私が刺繍ハンカチを持ち歩いている事を知っている。
「あっ!今回の図柄渡してなかったかも。試験勉強の合間の気分転換で作ったのよ。ごめんね。後で渡すわ。」
サラは笑顔で返してくれた。
さぁ今日から探偵キアラの誕生ですよ。
待っていなさいよ。クリス。
胸の辺りで拳を握って、気合いを入れた。
いつの間にかランチはお皿からキレイになくなって私とサラのお腹に移動していた。
ご馳走様でした。
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