第5話 解消と破棄は違う
翌日、サラにクリス様との話し合いの事、そしてラルフ様の事を話した。
「クリスは、何がしたいのかしら?別れたい訳ではないのかしら?」
あの時のクリス様を思い出すと、身震いした。
「私が好きではないんでしょ?だからアカデミーに入ってからは、私の側にも寄らないじゃない?サラの話しは、私の中では納得出来る話しだったのよ。でも、クリス様にその話しをすると、変わらず好きだと言うし。でも前みたいに心に全く響かないのよね。」
サラは、首を傾げる。
「あと、ラルフだった?私その名前聞いた記憶がないのよね。愛称かしら?」
「自己紹介で、愛称を名乗るの?知られたくはないのかな?」
目を閉じて、上を見上げる仕草をしながら思案している。サラは公爵令嬢を自慢はしないが、その役割は、理解している。アカデミーに居る人の顔と名前は、大体認識しているらしい。今サラの脳内はフル活動している様だ。
「もしかしたらよ。聞いた事は、ないのだけれど、王太子がアカデミーに在学しているとしたら、ラルフィルス殿下を、ラルフと呼ぶ側近が居たわ。」
大体王室からアカデミーに入るのであれば、確実に在学中である事は流れる話しのはず。
幾らアカデミー内が、無礼講とはいえ、王太子に対して、本当に無礼を働く輩がいるかも知れない。当たり前の事である。
「王太子がアカデミーにいるのだったら、知らない人はいないんじゃない?」
そうよね。とサラは呟いた。サラ自身は、自分が知らない人が居ると言うのは、何となく腑に落ちないのかも知れない。
「貴族じゃないかも知れないわよ。」
「そうね。その可能性もあるわよね。また、あとで調べてみるわ。キアラが変な人に引っ掛かったら大変だから。変人は1人で充分よ。」
と言うサラの言葉には棘がしっかりと存在していた。クリス様は、かなりサラから嫌われた様だ。
「ラルフと言う男は、後にして、先ずは馬鹿男のクリスよ。」
私は、ゆっくりと頷いた。
「キアラは、どうしたいの?」
「婚約破棄したいわ。好かれているなら、勿論そのまま結婚したいわよ。でも嫌われているなら話しは別よ。クリス様は、婿入り予定だし、お父様、お祖父様が築いて来たものを、ダメにする可能性があるわ。愛人に貢がれたら、謝罪しても仕切れないわ。しかも、お父様は別に私の結婚は無理をしてまでする必要はないって言ってた事もあったし。あれ?そう言えば…婿入りはするけど、爵位継承や財産分与は別だって言っていたような…。」
サラはデスクに両手を突いて、目を瞠らいた。
「キアラ。さっきの話しでちょっと疑問に思ったんだけど、婚約破棄と婚約解消の意味は知っているのよね?」
教室に居る人達の視線が私とサラに集まった。恥ずかしくて、顔を真っ赤にしながら俯いた。
消え入りそうな声で、
「婚約をなかった事にするんでしょ。」
と目線だけ、サラに向けた。
「婚約解消は、お互いに納得をして、婚約を無かった事にする事。だから案外次の婚約がスムーズに整ったりするけど、破棄は、どちらか一方に過失があり、証拠を出して、慰謝料を貰い次の婚約の時に調べられると、倦厭されるし、噂の的にもなるわよ。だから次に結婚したい人がもし、出て来た時には、上手くいかない時が多いのよ。」
絶句した。多分表情は驚いたまま固まっているのだろう。噂の的?絶対に嫌だわ。
「婚約解消が望ましいわ。」
サラが、まぁそうでしょうね。と呟き考え始めた。
「私はも手伝うから、取り敢えず、婚約解消を目標にしましょう。その間に、証拠も集める。クリスが、嫌だ。と駄々を捏ねたら、破棄に持っていく様にしよう。どの道浮気野郎に、同情の余地はないわ。」
浮気野郎…公爵令嬢が発する言葉ではない様な…。
でも、私の代わりにサラが怒っているのだろう。サラは本当に良い友人である。
一生サラに着いて行く。
と心の中で誓った。
私とサラは、情報収集から始める事にした。
待っていてね。クリス様。私から解放してあげるから。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます