第2話 嘘?聞き間違い?
我が国には、女神信仰が根強い。
女神ファミアは、転生する。転生のファミアを手にした家門は、必ず繁栄する。その代わりファミアを慈しみ、決して裏切らず、生涯ただ1人の女性として裏切らない。裏切った時には、家門に災いが襲う。だから、学園や城、広場と言った、主要な場所には女神像があり、恋人達はそこで、愛を誓い合う。
転生した女神を一途に思い大切にする。が、何故銅像の前で愛を語らい合う事が、二人の愛を永遠に。なるのかは、不思議でならない。
私は、違うと思っている。
言葉には出さないけどね。
※※※※※※
学園時代は、クリスは私を大切にしてくれていた。
定期考査で、1番を取ればご褒美デートをしてくれた。落ち込んでいれば、抱きしめてくれていた。
もうかなり甘やかされている自信があった。
自分も何か出来ないかと、思案してサラにも相談したりしながら、良い関係を保てていたと思っていた。
アカデミーに進学して、暫くするとクリスは私に近寄らなくなった。何かしたのかと考え抜いたが、答えは全く出なかった。本当に毎日、毎日考えた。
ある日サラが、不穏な話を聞いて来た。
「クリスは、侯爵家に婿入りするの?」
「その予定だよ。クリス様は三男だし、私ひとりっ子だし。なんで?」
「婚約言い出したのは、確かクリスよね?」
「ん?何を今更。サラに報告したじゃない。どうしたの?」
「いつかはキアラの耳に入るから、私がたち聞きしてしまった話しをするわね。」
「えっ?何?」
サラは、いつもより少しだけ早口で
「クリスは、断ったけど、婚約者位欲しいと侯爵家からお願いをされて、侯爵家には興味はないが、嫌々婚約をした。らしいわよ。」
は?
間抜けなこの言葉を出して、きっと間抜けな顔もしていたと思う。
「えっ?嫌だったの?えっ、向こうから言って来たけど?何処情報?人って怖いね。」
「私もそう思うわよ。キアラ。クリスは怖いって。」
あれ?脳の処理能力がフリーズしている。動け!と考えても、指1本動かない。脳が拒絶している?
どう言う事?
「おーい。戻ってこーい。」
目の前でサラが手を左右に振っている。
「誰に聞いたの?」
やっと出せた言葉だわ。私良くやった。
「クリス。」
ん?今クリスって言った?そんなバカな。だって自分が言った事ですよ?
「だーかーらー。クリスが廊下で言っていたのを偶々聞いてしまったのよ。心臓飛び出るかと思った。違う意味で。」
バツが悪そうに顔を顰め額に片手を当てながら大袈裟にもう片手を広げて、さながから舞台女優の様に告げられた。
「あれ?私?えっ?私が勘違い起こしていたのかな?」
何故か視界がぼやける。私の顔を見てサラは慌てて
声を張る。
「イヤ。クリスが嘘を言っているから。キアラは悪くないわよ。しっかり!」
色々頭の中を整理しようとしても追いつかない。
気がつくと、私の頬に布の感触がした。
サラがハンカチを当ててくれている。左右交互に。
あぁ私泣いているんだ。涙を自分が流している事すら気が付かなかった。
ありがとう。サラ。暫くハラハラと落ちる雫をどうする事も出来なかった。
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