第16話 魔族ソルドの襲来
突如発せられた緊急クエスト。
宴を楽しんでいた俺たちは急いでゲートを通りイストリアの街へ。そして冒険者一同とともに街の正門に集合する。
そこには一人の魔族が立っていた。
「ソルド……なのか」
「ククク、正解だ!」
正直信じたくはない。
禍々しく捻れた角。先端の尖った長尾。呪印が刻まれた青白い肌。特徴こそ魔族のそれだが、ソルドの面影がある。
ヒトを辞め、忌々しい魔族の姿に堕ちてしまったかつての仲間がそこにいる。
「待っていたぜシルディ。ほら見てくれよ、このオレの姿をよぉ!」
ソルドは両手を広げ、誇らしげに笑う。まるで今の自分の姿を気に入っているかのように。
「魔族と契約したようだな」
マギナから聞いてはいたが、本当に実行するとは思ってなかった。実はあきらめて帝国に戻ってたんじゃないかと、希望的観測をしていたが現実は非情だ。
「それにしても魔族はいいぞお? 力がみなぎってくる。負ける気もしねえ。契約して正解だった!」
「そのような力は偽りだ!」
「黙れ! オレはてめえが憎くて仕方ねえ。てめえを殺らない限りこの心のムカムカが収まらねえんだよ!!!」
邪悪に満ちた憎悪を向けられる。嫉妬が膨れ上がり生まれた復讐心。俺を殺すことしか見えていない。こいつはもう止まらないだろう。
「お前がこんなことになってしまったのは、俺にも責任があるのかもしれない。これで最後にしよう。……俺がこの場でお前を介錯する!!」
これは俺とソルドの問題。他の人たちを巻き込むわけにはいかない。
「タイマンか。上等じゃねえか!! ぶっ潰してやる!!」
「かかってこい!」
俺とソルドの最後の戦いが始まった。
「しねえええ!! 超級剣術、死の舞!!」
いきなり超級スキルか。力も速さも以前のソルドに比べて格段に上がっている。さすが魔族と契約しただけのことはある。だが防がせてもらう。
「嘘だろ!? 超級の技を無傷で!? ありえねえ!」
「何を今更。昔から無傷だっただろう。俺がダメージを受けたところを見たことがあるか?」
「黙れええ!!」
今度は連続で超級剣術を放つ。しかし俺はそれを無傷で防御する。
「ありえない!! どうなってる!? オレは魔王の力を得たんだぞ」
「何度も言うが防御力には自信がある。覚えてないのか? お前と魔国領を攻略していたとき、俺は本当に無傷だったんだ。モンスターの攻撃をノーダメージで抑えていた」
それなのにお前はあのとき無傷の俺をサボっていると烙印を押して追放した。
「そんなバカな話があってたまるか! オレは認めないぞ!! 無傷なのはお前がサボっていただけだ!!」
「なら何度だってかかってこい。いくら魔族の力を得ようと、俺の防御力に勝ることはない」
「ぐぬぬ〜!! うわああああ!!!」
ソルドは何度も斬りかかってきた。斬りつけるたび息が荒くなる。
しかし、俺の鎧に傷一つつくことはなかった。
「はあはあ……」
ソルドの動きが鈍くなってきた。チャンスだ。今なら魔法を当てられる。
「疲れてきたようだな。ではこちらからも行かせてもらおう」
「ほざけ。守ることしか取り柄のないてめえの攻撃なんざ怖くねえ!!」
「エクスプロージョン!!」
「なにいいい!! 盾職のくせに魔法だとおおお!!」
魔法はないと油断していたな。しかしその隙が命取り。エクスプロージョンは直撃する。
「俺は魔法職に転職した。言ってなかったか?」
「言って……ねえよ……」
ソルドはバタリと倒れた。
エクスプロージョンは超級の最強攻撃魔法。魔族の力を以てしても致命傷は避けられなかったようだな。
これで俺の勝ちだ。
「決まったよう――」
「誰が決まったってえ?」
倒れたと思ったソルドがゾンビのようにヌルっと立ち上がった。
「ククク、てめえ相当な化け物だったんだな。認めてやるよ。てめえはサボりではなかったようだ」
やっと認めてくれたか。ただその様子じゃ仲直りってわけにもいかなそうだな。
「オレはお前の全てを奪ってやる! どんな手を使ってもなあ!」
ソルドはニヤッと口を歪ませた。
手から禍々しい魔力を生み出し、それを放った。
「
俺ではなく街の中心――王宮へ向けて。
もう2発、もう3発と放たれ、王宮が崩れ落ちていく。街の中から民衆の逃げ惑う声が聞こえる。
「ヒャーッハッハッハーー!! これが魔族の力だああ!! 別にお前を潰せなくともお前の国を潰すことはできるっっ!!」
ソルドが勝ち誇ったように高笑いを見せる。
「さあて。次はどこを攻撃してやろうかあ! 言っておくが得意の【挑発】スキルもこの身体には効かねえんだよなあ!」
「この野郎……」
俺とのタイマンを放棄し、関係のないところに手を出した。こいつのしたことに心底腹が立つ。
だが、今はそんなことよりも街の中にいる人たちの安全が第一だ。
「冒険者のみんな! ここにいるのは危険だ!」
やつは街を標的にする作戦に切り替えた。
「街の人たちと一緒に急いで冒険者ギルドへ行ってくれ。そこに俺の立てたゲートが残っている! シー・イストリアに避難するんだ!」
指示を受け取った冒険者一同は一斉にギルドへ移動を始めた。
「お前たちはどうして行かないんだ?」
避難するように言ったはずだ。しかし4人とも俺のそばから離れようとしない。
「私は最後までシルディさんのそばにいます」
「わたくしもマスターと一緒に戦いますわ!」
「昔の仲間として、私もソルドと戦う義務があります」
「アンタのことが好きだからに決まってんじゃん!」
メイア、シルシィ、マギナ、アリエス……まったくお前らというやつは。
「やれやれ、誰も巻き込むつもりはなかったんだけどな。くれぐれも無茶はするなよ。それじゃあいくぞ!」
《黄金の竜》vs魔族ソルドの戦いが始まった。
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