第15話 栄えゆく海の街

王様の支援を受けてから、かれこれ1年が経過した。

イストリア海の開拓は順調に進んでいき、ついに今日リゾート地 《シー・イストリア》が完成した。


「この海も去年とは見違えたな」


浜辺に出店するたくさんの飲食店。

少し離れたところには住宅地も開拓され、移住する住民も増えた。その他インフラも最低限整った。一番建設に時間がかかったのがキャッスルホテルだ。他の国の魔法使いも集め大人数で建築系の魔法を駆使し、本日建設が完了した。


そして今日、リゾート地生誕の祝いを込めた宴がこの地でとりおこなわれる。


「多くの民よ、今日までお疲れ様であった。我はイストリア小国国王、アデル=イストリアである」


キャッスルホテル最上階のテラスからビーチにいる民衆に向けて王様は労いの言葉をかける。俺たちも聴衆に紛れて、王様の演説を聞く。


「この場を持ってシー・イストリアの発足を宣言する!」

「「「うおおおおおお!!」」」


これまで開拓に従事してきた民衆の歓声が鳴り響く。


「今後は漁業、酒場等の事業も開拓し、さらなる発展に勤めていきたい所存である。やがてこの地はイストリア小国第二の都市になるであろう!」


これ以上発展させたいのか。王様もかなりの野心家だな。


「今日は夜まで宴である。食を楽しむもよし、ビーチで戯れるもよし。この場をめいいっぱい楽しんでくれ!」


そして王様は続ける。


「余興のイベントを用意したのである。ビーチを見るのである!」


王様の指差す方を見ると、砂浜上に多数のビーチバレーコートが用意されていた。


「ビーチバレー大会を開催するのである! 優勝賞金は金貨100枚である。参加を希望するものは受付で手続きを行うように。以上をもってシー・イストリア誕生記念祭、開会の挨拶とする」


王様の話が終わると民衆は好きなように過ごす。

砂浜で寝たり、海を泳いだり、釣りを嗜んだり。あるいはビーチバレー大会に参加したり。


去年では想像もできないくらい活気溢れた街になっていた。


「マスター、ビーチバレー大会に参加するのですわ」


シルシィに手を引っ張られ俺たち《黄金の竜》一同はホテルへ。大会の受付はホテルの1階だそうだ。


「シルディさん、チームの組み合わせどうしますか?」

「2人で1チームのようですよ、リーダー」

「え、それなら私がシルディと組むー!」


そうだな。組み合わせどうしようか。

今いるのは俺、シルシィ、メイア、マギナ、アリエスの5人。


「奇数か。俺は遠慮するよ。4人で楽しんでくれ」


そう言うと4人は寂しそうな顔をする。本当は俺も参加したかったんだけどな。ここは涙を飲んで我慢する。

結果、メイアとシルシィ、マギナとアリエスでチームを組むことになった。


受付を済ませた4人はホテルの更衣室へ。数分後、水着姿の彼女らが現れた。


「どうですかシルディさん。似合ってますか?」

「もちろんだ。似合っている」


去年海のクエストに行ったときと同じ白ビキニ。正統派だな。


「マスター見ててください。必ず優勝してきますわ」

「おう。期待している!」


シルシィは銀の競泳水着。元は馬なので力や運動神経は抜群。優勝が期待できる。


「見てみてシルディ! どう、気合い入ってんでしょ」

「そうだな。目のやり場に困る!」


自信満々に出てきたのはピンクのひらひらビキニを召した皇女アリエス。布の面積が狭く、一番攻めた水着だ。


「まさかパーティメンバーとこんなことをする機会があるなんて思いませんでした」

「確かに。昔はひたすら冒険者として戦い続けてきたからな。昔の《黄金の竜》では考えられないことだな」


マギナはオレンジ色のワンピース型の水着か。この中では一番年下で胸もこぶりだが、それもまた可愛らしい。


「それではいってきますね。シルディさん応援よろしくお願いします!」

「ああ。みんな頑張ってこい!」


4人がコートへかけていく。

大会が始まり、楽しそうに競技に興じる彼女たち。いい眺めだ。こんな平和な毎日が続いたらなあ。



――そう感傷に浸っているときだった。




「緊急クエスト! 緊急クエスト! 魔族が街に攻め込んできました!!」


ゲートをくぐってきた受付嬢が冷や汗を流しながらそう伝えにきた。

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