第34話 離婚されない条件とは?
一平のケガがそこまで酷くなかったので、一日安静にしたら帰れるとの事。
でも一平には一つ大きな心残りが…… 。
「 愛菜…… ごめんな。
パパのせいでパーティー台無しにして。 」
申し訳なさでいっぱいになりながら言うと。
「 ううん。 全然!
だってパパ仕事から帰って来たもん。 」
パーティーの事より自分の事を気に掛ける娘に、一平は嬉しもあり、情けなくて涙が溢れる。
仕事ばかりを気にしたあまり、家庭を
「 ありがとうな…… 。
後はプレゼントなんだけど…… 。 」
一平は哲太にあげてしまい、もうジェイミー人形は持っていません。
あげるときに覚悟していました。
「 離婚 」 の約束を…… 。
愛菜ちゃんはベッドに座っている一平に、手に持っていた物を見せました。
「 プレゼントありがとう!!
ぐ~たらファミリーのパパ。 」
持ち上げて見せてくれたのは、ぐ~たらファミリーの一番の不人気のナマケモノのパパでした。
一平はその人形に驚きました。
それはあまりにも不人気で、自分と似ていてイライラしながらも何となく買ってしまった人形でした。
でもどうして車に置きっぱなしだった、ナマケモノのパパを持っているのでしょうか?
「 田中さん…… 私が渡しちゃいました。 」
それは花梨でした。
花梨が健人と村田丸から話を聞き、一平が買っていた人形を渡そうと閃きました。
「 田中さんは一生懸命探しました…… 。
ならそれで良いじゃないですか。
価値や人気じゃなくて、想いが大切なんじゃないですか? 」
花梨は一平の事を思い、代わりに手渡そうと考えました。
一平もその花梨の思いは嬉しい…… 。
でも子供にはそんな事関係ありません。
一年に一度の誕生日プレゼント。
「 ナマケモノって…… それは違うよ!!
それはただの…… 。 」
一平はあまのじゃくに買っただけ。
そんな物がプレゼントな訳ありません。
「 うん?? 私はこの人形大好きだよ?
だっていつもママに怒られてるパパに、そっくりなんだもん!」
そう言いながらナマケモノを抱き締めました。
不人気だと思っていましたが、自分の娘は違うようでした。
奥さんはいつものようにクスクス笑う。
「 あはははは…… あなたの帰りが遅いから、何度もぐぅたらファミリー見ていたから、推しのキャラクターが移ったのかしら? 」
そう言いながら笑いました。
それでも一平は納得いきません。
「 でも…… 俺は結局ジェイミーを買えなかったんだよ?
それにあの約束だって…… 。 」
離婚の条件…… 愛菜を悲しませない事!
約束のプレゼントが買えませんでした。
なので別れる覚悟もしていました。
「 約束?? これの事? 」
離婚届けを見せました。
一平に見せた後に直ぐに破り捨てました。
「 えっ…… 。 どうして…… 。 」
「 誕生日に間に合ったし、プレゼントだってあるんだもん。
愛菜の事ちゃんと見た??
これの何処が悲しんでるのよ!
約束は充分守ってくれた。
お疲れさま…… パパ。 」
一平は肩の力が抜けてしまい、嬉しくてまた泣いてしまいました。
「 パパ…… 私の方こそごめんなさい。 」
奥さんがいきなり謝り始めてしまう。
一平は直ぐに止めると。
「 違うの…… いつも寂しくて、こうでも言わないと早く帰って来てくれないんじゃないのか?
と思って色々酷い事や傷つける事しちゃって。
本当にごめんなさい…… 。 」
奥さんは深く頭を下げて謝りました。
直ぐに一平は止めさせてしまう。
「 いや良いんだよ。
こうでもしないと気付かないのは本当だし。
家族の大切さが目に沁みてるよ。
今度からは少しでも早く帰る。
休日は出来るだけみんなで出掛けよう! 」
奥さんも優しい一平の言葉に、嬉しくて涙が出てしまう。
そして何度もうなづきました。
どんなに相手に分かって貰おうと思っても、心の中までは分かりません。
喧嘩や不満に悩みなどがあるときは、自分の意思を伝える。
それが仲直りの秘訣であり、喧嘩しないようにする為です。
一平はそれが良く分かりました。
それを分からせて貰う為には、充分過ぎるスリルのある長い旅でした。
「 係長はやっぱり愛されてて良かったぁ。 」
廊下で一安心してため息を吐く林さん。
ゆっくりとボロボロな男が近寄って来る。
「 あ…… あのぉ!! あのでしてね。
今度、そのーー …… ご飯とか食べたりします? 」
村田丸が勇気を振り絞り、林さんをデートに誘う。
でもこの誘い方は、そう簡単には居ないくらいの最低な誘い方。
林は直ぐに笑いました。
「 一応毎日三食食べますけど?? 」
笑いながら言うと村田丸は、もじもじしながら何か言いたそうになっている。
「 よよよよ…… 良かったら、俺と今度ご飯でも行きませんかね? 」
勇気を振り絞り放った告白は、村田丸の全ての想いが込められていました。
「 うふふ。 あははは。
いきなり言い出すのかと思ったら。
そんな事なの? 私で良ければ行こう! 」
想いもよらない返答に、村田丸も動揺を隠しきれない。
「 ほ…… 本当に!? やったぁ!
美味しいちゃんこ鍋の店があるんだ。
そこに連れて行くよ。 」
「 違う店にしよ…… 。 」
初デートはもう少しおしゃれなお店が良いようでした。
今はまだ恋愛感情は薄いのかもしれませんが、これからゆっくりと発展するのかもしれません。
花梨は一人病院の外へ。
そしてある所へ電話する。
「 もしもし…… お父さん。 私…… 。 」
ずっとケンカしてから一人暮らしをして、お父さんとは全く口を聞いていませんでした。
当たり前に話してた相手なのに、何故こんなにもドキドキしているのでしょうか?
「 …… 近いうちに帰る。
だから心配しないで。 」
仲直りしたくても不器用で、いい言葉が出てきません。
どう謝れば良いのか?
お父さんは怒っているのか?
全く分かりません。
「 そうか…… 体にだけは気をつけてな。
花梨はお父さんの自慢の娘だ。 」
花梨は謝れないでギクシャクしていると、お父さんの優しい言葉が胸を引き締める。
「 お父さん…… ごめんなさい。
ワガママで本当ごめんなさい。 」
寒い夜に悲しい声が響いている。
お父さんは全く怒っていませんでした。
近いうちに帰り、また話すのでしょう。
病室を微笑みながら悲しそうに見る者も。
「 何たそがれてんだよいっ!! 」
健人は後ろから頭を叩かれる。
「 痛いな…… 何だ…… 奏か。 」
一平と昔からの友達なので、二人も同様に仲の良い友達。
健人にとっては妹のようなもの。
「 花梨ちゃんから聞いたぞ??
ずっと我慢してるから爆発するんだ。
次があるさ。 」
「 そうかな…… 。
村田丸にも凄い迷惑かけたのに、あいつは全く怒ってなかった。
俺は本当心が狭いな…… 情けない。 」
今回の事で罪悪感でいっぱいに。
「 ネガティブは悩むな。 前をみろ! 」
そう言い笑いました。
奏らしい全快ポジティブに、少しだけ救われている感覚になっていました。
「 もっと…… 周りを見なよ。
意外に好きな人も居るかもよ? 」
奏は直ぐに病室へ戻る。
健人にはこの言葉の意味が分かりませんでした。
もしかしたら意外にも、好意を寄せる人は居るのかもしれません。
みんなは病室に戻り、凄い遅くなりましたが愛菜ちゃんの誕生日会が行われる。
周りには迷惑かけないように、うるさくならない程度に。
「 おめでとう!! 」
ケーキのろうそくを勢い良く吹き消す。
みんなからの大きな拍手と、祝福の声が愛菜に送られる。
沢山のプレゼントに、美味しいご飯。
愛菜ちゃんは大喜び。
一平も最高の誕生日に大いに喜ぶ。
「 一平君…… 最高のパパだね。
俺も見習なくちゃね。 」
そう言い一平の肩に手を置くお隣さん。
恥ずかしげもなくキザな事が平気で言えるお隣さんに、相変わらず嫉妬してしまう。
「 ありがとう…… あんたもカッコいいよ。 」
珍しく嫉妬をしつつも誉める事が出来ました。
二人の友情? も気になる所。
「 一平君…… お疲れさま。
いつもありがとう。 」
奥さんが一平に感謝を伝える。
当たり前の事でも言わないと伝わりません。
またお互いもっと絆が深まった気がしました。
「 美咲…… いつも本当ありがとう。
美咲と結婚して本当に良かった。
愛してるよ。 」
( 今回の長い…… 長い俺の戦いは終わった。
身から出た錆なのだろうが、これからはもっと家族を思いやる。
そしてこの最高の仲間の大切さ。
俺の人生は捨てたもんじゃないな? )
一平は一人染々と干渉に浸る。
まさに自分に酔っていました。
愛菜ちゃんはプレゼントのコートを着たり、踊ったりと楽しそう。
そしてパパの元へ。
「 パパありがとう。
明後日はサンタさんからもプレゼントが貰える。
楽しみだなぁ〜 。 」
その言葉を聞き、目を見開く!
「 えっ!!? 明後日ってクリスマス…… 。 」
一平は忘れていました。
誕生日の後に直ぐにクリスマスがあるのを…… 。
「 そうよ? プレゼントのミントちゃん買ってあるよね?? 」
一平は放心状態に!
まだまだお父さんは大忙し。
完
離婚されない条件 ミッシェル @monk3
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