第27話 逃亡者健人


やっとの事で東京へ戻って来れました。

ただここからが問題…… 。

人形を持った健人は何処へ行ったのか?

もしかしたら東京には来ていないのかも?

人形は何処かへ捨てたのかも…… 。

色々な疑念は残っている。


「 一平さんどうするの?

健人さんの情報も無しにここまで来ちゃったけど。」


花梨も打つ手なく一平に不安をぶつけてしまう。


「 ちなみに言うと…… かくれんぼはあいつに勝った事ないわ。 」


絶体絶命の状態が続く…… 。

花梨も健人とは会ったばかりで、何を考えているかは全く分かりません。

一平はゆっくりと考えました。


「 あいつの行きつけの店を回る…… 時間の無駄かぁ。

仕事場には戻っていないって。

なら何処に…… 。

友達もあんまり居ないから聞く事も出来ない。 」


必死に考えても見つからない。

花梨は一つだけ気になる事が分かりました。


「 健人さんは彼女居ないの?? 」


「 彼女?? そう言えば居ないなぁ。

あんまりあいつから恋愛相談された事ないなぁ。 」


その瞬間に一つだけ疑問が生まれました。


「 もしかして奥さんとも知り合い?? 」


「 そりゃそうだよ。

俺が付き合って良く三人で居たし。 」


花梨は健人が何故今、一平に酷い事をしたのか?

何故このタイミングなのか?

一つだけの可能性が分かりました。


「 もしかして健人さん…… 一平さんの奥さんの事好きだったんじゃないかな? 」


「 えっ!? んな訳ないよ!

だって最初から俺の片想いが実って、奥さんと付き合ってたし。

もしそうなら何で俺に一言も言ってないんだ?? 」


一平はどれだけ思い出しても、健人が奥さんを好きだったとは考えられませんでした。

ずっと一緒に居て何も聞いていなかったのだから。


「 だって何で人形手に入れるの邪魔するの?

プレゼント買えなかったら離婚される。

って聞いたから今邪魔してるんじゃない?

そう考えると全て一致しない?? 」


一平は黙って考えました。

健人がもしそうなら…… 全く考えた事もありませんでした。


「 分からない…… 。

健坊が!? …… んな訳。

考えられない…… 。」


一平は困惑してしまう。

何故今まで一度も考えなかったのか?

その瞬間に一つだけ分かった事が。


「 花梨ちゃん…… 今までありがとう。

先に家に行っててくれるかい?

少し遅れる事だけ皆に伝えてくれ。 」


急な事に花梨も良く分かりません。


「 えっ?? どうしていきなり!?

だって健人さんの居場所分からないじゃない。 」


「 誰かが先に行って理由話さなきゃいけない。

後…… 花梨ちゃんのお陰で一つだけ心当たりが分かった気がする。

本当にありがとう!! 」


そう言い走って行きました。

花梨はため息を吐きました。


「 本当男って分からない…… 。

無事に来れると良いんだけど。 」


花梨も仕方なく家へ向かいました。

外は雪が降り積もっていました。


一平は走りながら色々考えました。


( 俺はいつもあいつに相談乗って貰ったけど、俺はあいつの力になった事あったのかな?

あいつが美咲の事好きだったのなら、俺はあいつの事なんか気にせずにずーーっと目の前で自慢してたようなもんなのかな?

…… 考えても全く分からない。 )


必死に走り続けました。

寒い冬の中で白い息を吐きながら、必死に前へと足を踏み込みました。


夕方なのに雪のせいで外は真っ暗に。

愛菜ちゃんは一平の帰りを楽しみに、家の窓からずっと外を見ていました。


「 愛菜ぁ…… もう誕生日会始めようか?

パパはもう少し遅くなりそうだし。 」


奥さんは少しでも愛菜ちゃんを励まそうと思い、仕方なく始めようとしました。


「 いい…… 。 もう帰って来るから。

パパはね? 約束は絶対に破らないから! 」


そう言いまた外を見ていました。

奥さんも仕方なくゆっくり離れる。


「 お姉さん? 愛菜ちゃんは?? 」


妹の奏も気にして奥さんの元へ来ました。

深くため息をついてしまう。


「 もうダメね…… 変なとこ頑固なのよね。

誰に似たんだろかね。 」


その瞬間に一平は。


「 へっくしゅん!! 風邪引いたかな? 」


そう言いながら街中をかけて行きました。


「 本当仕事優先しちゃって大変…… 。

プレゼントも任してあるし。 」


ピンポーーーーんっ!!

チャイムが鳴り響きました。


「 パパだぁーーっ!! 」


叫びながら玄関に向かう愛菜ちゃん。

扉を開けてみると?


「 こ…… こんばんは。

私…… えっと…… その…… 。 」


そこには大きめなパーカーでフード被った女の子が、テンパりまくりながら立っていました。

直ぐに奥さんが愛菜ちゃんと変わりました。


「 あの…… どちら様ですか? 」


「 すみませんっ…… えっとそのぉ。

柊木花梨って言います!!

初めまして…… 。 」


立っていたのは花梨でした。

焦り過ぎて意味不明な説明…… 。

クスッと笑う奥さん。


「 もしかして…… 主人の友達ですか? 」


恐る恐る聞いてみました。

花梨はびっくりしてしまう。


「 えっ? えーっ!?

何で分かったんですか!? 」


またクスクスと笑ってしまう。


「 だってこんな日に来るなんてそれ以外ないかなぁ? って思って。

それに初対面ですけど、好い人な気がして。 」


花梨は少し恥ずかしくなってしまう。

そんな事言われたのは初めてでした。


「 寒いでしょ? ほら!

早く中へ上がって、上がって! 」


そう言い手を引っ張られて中へ。

リビングに案内してもらうと、中は誕生日の為に綺麗な飾り付けがされていました。


「 はいっ! 温かいココア。 」


直ぐに温かいココアを出されました。

花梨の頬は寒さで少し赤らめている。


「 …… いただきます。 」


熱かったので息を吹きかけながら、ゆっくりと飲みました。


( 美味しい…… 奥さんも凄く綺麗…… 。

一平さんには勿体ないくらいの美人。 )


失礼な事を考えていました。

ソファーでココアを頂いていると、ゆっくりと小さな足で一生懸命ソファーに上がって来る愛菜ちゃん。


「 お姉ちゃん?? パパの友達なの? 」


純粋な瞳で健気に聞いてきました。


「 うん…… 私は友達だよ。

お父さんには色々迷惑ばかりかけてるけど。 」


「 ふ〜 ん …… 。

パパまだ帰って来ないのかなぁ??

私の誕生日忘れてないかなぁ?? 」


愛菜ちゃんは必死に花梨に聞きました。

花梨は何処まで話していいか考えながら、言葉を選びました。


「 もう少しかな??

パパが忘れる訳ないでしょ?

愛菜ちゃんのパパなんだもん! 」


そう言い愛菜ちゃんを励ましました。

不安そうにしてた愛菜ちゃんは、それを聞いて元気になりました。


「 ありがとうお姉ちゃん!

きららちゃんに教えてくるねん。 」


そう言い喜んで友達の元へ走って行きました。

その後ろ姿を笑って見ていました。


( 一平さん…… 本当にあなたが必死に守ろうとする家族は、凄く暖かくてお金なんかでは絶対に手に入らないモノなんだね。 )


花梨は改めてそう感じました。

ですが…… 不安要素は残ったままに。


( 一平さん…… 絶対帰って来るんだからね? )


花梨は信じて待つしかありませんでした。


外は暗く、雪は段々と粒が大きくなり積もっていく。

デパートの屋上の遊園地から、遠くを見渡している男の姿が…… 。

ベンチに一人悲しげに座り、周りには雪のせいで誰も居ない。


そこへ一人、ゆっくりと階段を上がってやって来る人影が。


「 一平…… 。

良くここが分かったな。 」


白い息を吐きながらゆっくりやって来た一平。


「 探したぜ…… 相棒。

もうかくれんぼは終わりだ。

おれには帰らないといけない場所がある。 」


遂に二人は再開する…… 。

見詰め合う二人。

静かに戦いが始まろとしていました。

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