第26話 友情の思い出


今何が起きたのかまだ理解出来ない…… 。

親友が裏切り、プレゼントを失い、電車が通り過ぎるのを黙って見ていました。


「 一平さん! 大丈夫ですか!? 」


そこに現れたのは花梨ちゃんでした。

村田丸の介抱する為残った筈…… 。


「 花梨ちゃん? 村田丸は?? 」


「 実は…… 。 」


一平と健人が出た後、村田丸は眠りにつく前に耳元でこう言いました。


「 花梨ちゃん…… ここまでの災難は健人さんが絡んでる可能性がある。 」


花梨はびっくりしてしまう。

親友である筈の健人が邪魔する理由が分からない。


「 話の節々に違和感を感じる。

それと俺が前襲われたのも、今回襲われたのも偶然じゃない。

俺の事をアンチ達にリークしていた可能性がある。

100%じゃないから…… 花梨ちゃんは先輩達を追いかけて?

俺も後から…… 追いますか…… ら。 」


そう言い眠りにつきました。

花梨は村田丸の為にも、二人の後を直ぐに追いました。


そして今に至る。


「 健人が今まで邪魔していたヤツなのか。 」


車の故障やアンチから襲われたのも、全ては健人の仕業なのが今なら分かりました。


「 絶対許さないっ!!

健人さんが裏切ってたなんて! 」


花梨はイライラして地面を何度も足で踏みつける。


「 ニャローーーっ!!!! 」


駅に響く声で叫ぶ一平。

花梨は急に叫んだ一平に驚く。


( 無理もないな…… 親友に裏切られたら、普通に誰だって怒るに決まってる。 )


花梨は同情してしまう。

自分も何度も騙されたり、裏切られていたから良く気持ちが分かっていました。


「 健人の野郎めっ!!

ふざけやがって、直ぐに見つけてやるからな。

よし、追いかけようかっ。 」


直ぐに気持ちを入れ換えたのか?

一平はニッコリ笑っていました。


「 えっ? えっ!? なんで??

何で裏切られて笑ってるの?

腹立ってるんでしょ?

ならもっと怒っても良いんじゃない? 」


花梨には一平の考えてる事が分からず、そう言いました。


「 健人は俺とずっと一緒に生きてきた、相棒なんだよ?

何か理由があったんだろ。

なら理由聞いて一緒に誕生日会に向かう。 」


花梨には全く理解出来ませんでした。

人は平気で裏切り、二度と修復しない事もほとんどかもしれない。

なのに一平はイライラしてるのかもしれないが、健人を嫌いにはなっていませんでした。


「 絶対、絶対にウソ!!

イライラしてるに決まってる。

もしかしたら人形だって売ったり、最悪捨ててるかも知れないじゃない…… 。 」


花梨は一平の言葉では、全く健人を信用出来ませんでした。


「 そうか…… ならこの話を聞いたら同じ事を言えるかな? 」


そう言い昔の話をし始めました。


さかのぼる事中学生の頃。

一平と健人は夏休みを迎えていました。

残りの日にちは一日。

一平は宿題を山積み残していました。


「 やべぇーーっ! どうしよ。

もう間に合わないよー 。 」


若かりし一平は今と変わらず、困っていました。


「 あれほどやれって言ったじゃないか。

だから最後に困るんじゃないか。 」


健人は面倒くさい物を先に終わらせるタイプ。

宿題を提出し忘れたら、評価を下げられるので早めに終わらせていました。


「 やりたいこと沢山あったんだもん!

今日は寝られないよーー …… って待てよ?

健坊が宿題終わってんなら、貸して貰えば簡単に終わるじゃあないか。 」


一平はズルい方法を考えつきました。

健人は当然嫌そうにしました。


「 ダメだよ…… 明日から学校だろ?

宿題何時返すのさ。

俺達別のクラスだろ? 」


そう言うと一平は直ぐに考え。


「 朝直ぐに返しに行く!

それで良いだろ?? 」


そうして嫌々貸してしまいました。


「 …… って何処がいい話なの!?

ただのぐ〜たらな男のお話じゃない! 」


花梨は聞いていても全く感動もしませんでした。


「 待て待て! 話には続きがあるんだ。 」


一平はまた昔の話の続きを話しました。


( 俺は必死に頼んで借りた宿題を、死に物狂いで書き移した。

たまに名前までも忠実に書くことも。

必死にやって夜中の3:00近くに終われて、その後はぐっすり眠りについた。 )


その次の日…… 。


( お母さんは早くから仕事へ。

妹は俺を起こさずに学校に行ってしまった。

そのせいで俺は起きれずに、昼まで爆睡してしまったのだ。 )


その日は午前中で終わる学校の為、一平は学校には行けませんでした。

なので宿題は出せず、しかも健人の宿題を全て自分が持っていました。

その日一平は何て酷い事をしてしまったのか。

何度も自分を攻め続けました。


罪悪感と共に次の日学校へ。

直ぐに健人がクラスにやって来ました。


「 だから言わんこっちゃない!

夜中までやってれば起きれる訳ないんだよ。

宿題持って来てくれたか? 」


「 お…… おうよ。

悪かったな…… 休んじゃって。 」


そう言うとそれ以上健人は怒りませんでした。

嫌みは言っても笑って許してくれました。


「 俺はその時思った…… 。

コイツは最高の親友なんだって。

だから俺も絶対裏切んない!

そう誓った…… 。 」


一平が話し終わり花梨を見ると、呆れて口が開きっぱなしになっていました。


「 おっろ?? 感動しない? 」


「 全然!! 全部一平さんが悪い!

だから今、その復讐してるんじゃない??

聞いて損しちゃった…… 次の電車来たよ。 」


そう言い二人は電車に乗りました。


( おかしいなぁ…… 俺にとっては最高の想い出なんだけどなぁ…… 。 )


一平は価値観を分かって貰えず、電車で健人の後を追うのでした。

当然この電車代は花梨が代わりに出す事に。

一平は本当に感謝しか出来ません。


( 健人…… お前は今何処に向かってるんだ? )


悲しそうに外を眺める一平。


その頃健人は電車から外を眺めていました。


「 転校生だ! 変な鞄ーーっ! 」


幼き自分がいじめられていた事を思い出していました。

いつも一人で新しい学校にも慣れず、泣いてばかりいました。


席に一人悲しくしていると、目の前にいきなり誰か現れました。


「 その下敷き良いなぁ!

何処で買ったんだよ?? 」


( また思い出してしまったな…… 。 )


健人はふと昔を思い出していました。

人形を見つめながら時間はゆっくりと進んでいく。


外は雪景色。

早めにケーキやらなんやらを買い、雪が強くなる前に家に戻ってきていた家族達。


「 さむぅ〜 いっ! 本当遅いね。

お兄ちゃん仕事どんだけかかってんのよ。 」


家ではプンプンと怒る妹。


「 もう直ぐ帰って来るわよ。 」


ピンポーンっ!

家のチャイムが鳴りました。


「 パパだぁーーっ! 」


そう言い走って玄関に向かう愛菜。

玄関を思いっきり開けました。


「 どうも。 お誕生日おめでとう!

私の事は覚えてるかな? 」


やって来たのは同僚の林さんでした。

少しガッカリしてしまいましたが、愛菜は家へ林さんを入れました。


「 どうも…… お久しぶりね。 」


奥から奥さんがやって来ました。


「 お久しぶりです。

係長にお呼ばれして甘えて来ちゃいました! 」


嬉しそうに話す林さんに、笑って中へと案内しました。

リビングにはお祝いしようと集まる人達が。

でも周りを見渡しても一平は居ません。


( げげっ! 先輩…… もしかしてまだ帰って来てなかったのかしら。 )


林さんの嫌な予感は的中してしまう。

飲み物を持って奥さんが運んで来ました。

冷や汗をかきつつ恐る恐る聞いてみる事に。


「 あのぉ…… 先輩はもしかしてまだ仕事でしたか?」


そう言うとため息を吐きつつ。


「 そうなのよ…… 今日必ず帰って来る筈なんだけど、さっきから連絡も繋がらないのよね。

大丈夫かしら? 」


( やっばーーっ!

やっぱり帰って来れてない。

しかも連絡取れなくなってるし。

何かトラブルが起きてないと良いけど…… 。 )


林さんの予感はことごとく的中。

何も知らずに電車に揺られている一平。


( 健人…… 待ってろよ。

絶対に捕まえてやるからな。 )


健人の乗る電車の後を追うのでした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る