第25話 裏切り


村田丸に振り下ろされる石…… 。


「 誰かぁーっ! 誰か来てーーっ!!

ここに暴力を振るう大人が居ます!

助けてぇーーっ!! 」


気を失う寸前に女性の叫び声によって、犯罪動画配信者達は危険を察知して逃げていく。

一安心した瞬間に、村田丸の意識が遠退いて行く…… 。

目の前にやって来た女性。


「 村田丸っ…… 村田丸大丈夫??

今大人の人来るからね。 」


薄れ行く中見えたのは花梨の姿でした。

ゆっくりと笑いながら。


「 先輩に…… パーティーには少し遅れるって言って置いて下さい。

後から…… 必ず…… 。 」


そう言い気絶してしまう。

直ぐに大人達が勢い良く走って来て、村田丸の救護をして中へ。

犯人の動画配信者達はと言うと、トラック俺あんちゃん達にあっという間に捕まり、警察に突き出される。

当然の結果です。


店内の医務室で横たわる村田丸。

後少し着くのが遅かったらどうなっていただろうか?

直ぐに一平と健人が到着する。


「 村田ーーっ!! 」


一平が駆け寄るも痛み止めも飲み、安静に寝てしまっている。

健人も青ざめた表情になってしまう。


「 健人さん? どうしました?? 」


花梨が聞くと直ぐにいつも通りの振る舞いをする。


「 村田丸が怪我したからビックリしちゃって。

やられる理由もないし。 」


そう言い健人は村田丸の身を心配していました。


でも花梨は気になる事が…… 。

例えどんな恨みを買っていても、顔出ししてない人がこんなに簡単にバレるでしょうか?

それにそんな恨みある人達がピンポイントで、先回り出来るのは不自然に思えました。


もう一つ気になるのは、どうして村田丸現金を奪った男達がまだ残って居たのか?

遠くから見えた限りでは、後ろの席を開けられないように抵抗していたように感じました。

ジェイミー人形は価値があり、狙われる理由になるかも知れません。

更に限定のジェイミー人形なら尚更。

でもどうして箱に入って見えない、ジェイミー人形を狙ったのかは謎ばかり。


不確定の事を言うのも動揺と混乱してしまうので、自分の中に止めました。


村田丸が目覚めるのを待っていると間に合わないかもしれない…… 。

仕方なく村田丸を残して帰る事になりました。

村田丸の元には花梨が付き添う事に。

なので心配ですが、一平と健人の二人で先に高速から降りて、電車に乗ることになりました。


「 花梨ちゃんごめんね…… 。

俺達は悪いけど先に行く。

後から必ず追い掛けて来てね。

パーティー会場で! 」


そう言い二人は走ってパーキングエリアを後にしました。

花梨は不安そうに見詰める。

村田丸がゆっくり起き上がりました。


「 花梨ちゃ…… ん。 頼みがある。 」


そう言い花梨の耳元で何かを囁きました。

そしてまた眠ってしまう…… 。

少し休めば回復するでしょう。


高速道路は非常階段があって、もしものときは徒歩で降りられるようになっているのです。

二人は階段を降りて直ぐに駅へ向かう。

現在の場所は栃木県。

東京までは約160キロ程度。

まだまだ時間に間に合う。


二人は必死に駅へ向かいました。

現在の時刻は14:30。

栃木は交通量は少なく、自然に囲まれていて良い環境のようでした。

都会と違い畑も多く、雪のせいなのか?

全くすれ違う人も居ません。


大きな荷物を抱えてる為、あまり走れなくて足場も悪い。

ここまでの疲れも蓄積し、思うようには動けません。


「 駅まではもう少しかかる。

少しあそこで休もう。 」


健人は一平の体調を心配して、少しベンチに腰をかける。


「 悪いな…… 健坊には迷惑かけまくりだな。 」


「 大した事ないさ。 友達だしな。 」


そう言ってる間も雪が降り続ける。

お茶を飲みつつ二人は少し休んでいました。


「 健坊は好きな人とか居ないのか?

会社の同僚とかで好い人居るだろ?? 」


健人はちょこちょこ彼女が居ても、直ぐに別れてしまうので未だに独り身…… 。

一平はいつも気にしていました。


「 どうだろうなぁ…… 。

可愛くて好い人でも、運命の人って感じではないんだよな。 」


そう言い遠くを見詰めている。


「 運命の人!? お前って恋愛関係は意外に純情だよな。

もっと視野広く持てよ。 」


一平は思い出した事がありました。

健人は一平といつもくっついていた為、腰巾着のように思われ勝ち。

一平は器用貧乏の為、意外にモテたりはしていました。


対照的に健人は控え目で、本を読んだりと女子には人気ではありませんでした。


「 俺はあんまり学生の頃は、女子と話せてなかったけど、美咲ちゃんだけは俺に優しく接してくれたよな。

今でも良く覚えてるよ。 」


「 そうだよな…… 俺達付き合ってたから、良く三人で帰ってたもんな。 」


二人は染々と過去を懐かしみました。


「 だから…… 二人には簡単に別れて欲しくないのよ。

そろそろ行くか! 」


その時一瞬だけ健人が悲しそうに見えました。

一平は移動の為、その訳を聞きませんでした。

二人はまたゆっくりと歩きだしました。


駅にやっと着き、電車の切符を買って車内へ。


「 はぁはぁ…… 疲れたぁ。

腹も減ったな。 」


一平はそう言いお腹が鳴る。

健人も一緒にお腹を撫でる。


「 軽く何か食べるもんあればなぁ…… 。

ん? あんなとこに売店が?? 」


健人が指差したとこに売店が。

一平は沢山迷惑かけてる為、何か恩返しをしたいと思い立ち上がる。


「 俺、買ってくるわ。 」


「 まだ電車出るまで時間あるしな。

ゆっくり行ってこいよ。

俺はコーヒーと焼きそばパンとガム。

後はポテチ頼むわ! 」


一平は任せろと走って外へ。

売店までほんの少し距離が離れている。

言われた物を買おうとしていると、発車するアラームが鳴り響く。


「 なにぃーーっ!?

まだ大丈夫だって言ってたのに!!

ヤバい、早く戻らないと。 」


荷物を両手で抱え、凄い勢い良く走って行く。

ギリギリのとこで扉が閉まる。


「 えっ!? ちょっ…… ちょっと!! 」


一平のスマホに着信が。


「 何で…… 健人!!

ヤバい、乗り遅れたわ。 」


焦りながらしどろもどろしている。


「 ああ…… 知ってるよ。 」


落ち着いた口調で話す健人に、何か違和感を感じました。

そして閉まった扉の前に健人が現れる。


「 健人!? 何言って…… 。 」


目の前に立っている健人は、先程とは何か様子が違う。

冷たい目でこっちを見ている。


「 悪かったな…… ここまでだよ。 」


「 ここまで!? 一体何を言ってんだ? 」


すると通話口から笑い声が聞こえて来る。


「 あっははは…… まだ分から分からんのか?

俺はお前の味方ではない。

お前を邪魔する為に今まで付いて来てたんだ。 」


一平は何が何だか分からなくなっている。


「 財布見てみろよ? 」


そう言われて見てみると、中にはクレジットカード類は殆ど抜かれている。

しかも急な旅のせいで現金は殆どゼロに。

さっきの買い物で小銭も…… !?


「 お前…… だからあんなにいっぱい頼んだのか?」


やっと合致しました。

あんまり食べない健人が、あんなに頼んでいた事も。

全ては電車に乗せないようにする為だったのです。


「 本当に悪いな…… スマホ見てみ? 」


そう言われスマホを直ぐに見る。


「 電池がない…… 。 」


スマホの電池残量が極僅かになっている。

これも健人の仕業なのだろう…… 。


「 健人…… どうしてこんな事を…… 。 」


一平は悔しくも悲しくて仕方がない。


「 お前には一生分からないだろうな。

悪いがプレゼント貰ってくぞ。 」


そう言い電話を切りました。

悲しくもその電車を見送るしかありませんでした。

そしてスマホの電池も切れる…… 。


呆然と立ち尽くすしかありませんでした。

まさかの親友の裏切り。

一ミリも考えた事がなく、ショックで動けなくなっていました。

現金もゼロ…… スマホも使い物にならない。

プレゼントまで取られてしまいました。


一平の最大のピンチ…… 。

只今の時刻は…… 15:00。

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