第24話 逃げない心


ご飯を食べ終えみんなで車に戻る。

お腹いっぱいでみんなも大満足。

ゆっくりとエンジンをかけようとすると、上手くエンジンがかかりません。


「 村田丸、どうした?

エンジンかかんないのか?? 」


一平は村田丸に聞くと全然ダメな模様。

ボンネットを開けても、車に詳しくないもんには全く分かりません。


「 健坊、お前確か車少し噛ってなかったっけ?

昔は車好きで色々いじってたんだから、直したりできないか? 」


健人はボンネットを開けて調べるも、直ぐに断念してしまう。


「 悪いな…… 俺ぐらいのレベルが見てもさっぱり。

力になれなくて悪い…… 。 」


落ち込む健人の肩に手を置く。


「 気にするなよ。

俺なんかは全く分からんからな。 」


そう言って励ましつつも、どうすれば良いか考えている。


すると花梨がトラック運転手のおじさんを連れて来ました。


「 困ってるって言ったら見てくれるって。 」


花梨は何か力になりたくて、しらみ潰しに声をかけてくれていました。

ゴツい髭のおじさんで背もかなり高い。

筋肉質のゴリラの様な男。


「 まぁ直せるか分からんが見てやるよ。

可愛いお嬢ちゃんに頼まれたらな。 」


( 可愛いお嬢ちゃん?? あんな口の達者なこの子が?? )


演技でも好感を持たせるのが上手い。

女性はみんな役者なのだと悟りました。


おじさんは直ぐにボンネットを開けて見てみる。

直ぐに閉じました。


「 何だい…… 配線ケーブルが外れてるだけじゃないか。

素人には分からんだろうが、簡単に直ったよ。 」


あっという間に直してしまいました。

一平達はお礼を言い喜びました。


「 にしても何だ? このボロ車は?

金無くても車だけは良いのを買いなよ。

じゃあね。 雪降りそうだから早めに帰りな! 」


優しくてワイルドなトラック野郎。

見た目は怖そうでしたが、とても優しくてみんなお礼を言い感謝しかありませんでした。

一人を除いては。


「 レトロ車だと!?

この車は車検通ってんだよ!!

バカにしやがって…… ボロじゃない!

レトロと言って貰いたいねぇい。 」


村田丸はムキになり怒りました。

正直この車の良さが分かりません。

早く帰る為に車に直ぐに乗りました。

エンジンをかけると、ちゃんとかかりました。


「 さぁ…… 出発だぁーーっ! 」


一平の合図によりボロ車は発進する。

少し遅れましたが何とか出ることが出来ました。

また高速の長い道のりを走り出しました。


その頃我が家では誕生日パーティーの飾り付けやらで、大盛り上がりになっている。

そしてまた一人来客が。


「 ひゃっほ〜〜 いっ! 愛菜ちゃんお誕生日おめでとう。 」


一平の妹の奏が大きなプレゼントを持ってやって来ました。

愛菜ちゃんも奏が大好きなので、勢い良く走って行き抱きつく。


「 奏ちゃんいらっしゃい!

パパはまだ帰って来てないんだよ。 」


「 そおかぁ…… なら帰って来たら、みんなでイタズラしてやろうね。 」


イタズラ大好き奏はそう言いながら笑う。

そして台所に向かう。


「 お姉さんこんにちは。

お兄ちゃんまだ帰って来てないんだね。 」


奏がそう言うと奥さんもゆっくりうなずきました。

それを聞いて怒った奏。


「 待ってて! お怒りの電話するから。 」


そう言いながら電話をかける。


一平のスマホが鳴る。


「 ん?? 奏かぁ…… どうせ遅いから早く帰って来いとかだろ。

相変わらずお節介なんだから…… よいっ! 」


そう言いスマホをマナーモードにしてしまう。

一平は妹に叱られるのが怖くて、直ぐに逃げてしまう。


奏はかけても出る事はありません。


「 あのビビり!! わざと出ないな?

帰って来たら苦手な、漬物大量に食わせてやるんだから。

覚悟しとけーーっ! 」


怒りながら電話を切りました。

ぶるぶるっ!! 一平に何か嫌な寒気が。


「 奏ちゃんにシュークリームでも買ってやるか。

たまにはね。 」


お菓子でご機嫌を取ろうと考える。

本当にビビりのようでした。


家では料理を作って居る奥さん。

その手伝いをお隣のきららパパがしている。


「 皮剥きでもなんでも言って下さいね。

私になんでもお任せを! 」


本当にいつも優しいきららちゃんパパ。

育児や家事も手伝う。

こんなお隣さんとの誕生日パーティーにも、喜んで参加する良いお父さん。

理想を絵に描いたような男。


「 ありがとうございます。

きららちゃんママは今日は?? 」


「 ママは友達と旅行へ。

たまには良いかと思いましてね。 」


奥さんへの気配りも完璧。

言うこと無し。


「 愛菜ちゃんママはパパいつも居なくて寂しいのではないですか? 」


そう言われるとその通りでした。


「 何か大変なときはいつでも言って下さい。

私が旦那さんの分までお手伝いしますので! 」


優しい言葉が奥さんには痛い…… 。


「 私思うんですよ…… 男は仕事って言いますけど、ちゃんと子育てや家族の為に早く帰ったり休んだりも必要だと。

今も寂しい思いさせてるのも事実。 」


そうだと思いました。

もう少し手伝って欲しい…… 。

今回のケンカもそれが大きな理由。

ですが他人に指摘されて、凄い気分が悪くなりました。


「 ウチのパパはいつも一生懸命なんです。

仕事だっていつもサボらず、部下の為にも優しく接していて、忙しくしてるのも家族の為なんです。

それがやっと分かったんです。

だから私に出来る事は…… いつも温かい食事を作って、頑張ったパパを出迎える事かな? って。 」


奥さんにはこの前の怒りは失くなっていました。

きららちゃんパパも少しビックリしましたが、直ぐにこう言いました。


「 家族の形は人それぞれです。

答えなんてありませんよね…… 失礼な事言いましたね。

旦那さんは奥さんに分かって貰えて幸せですね。 」


そう言いニンジンの皮剥きをしました。

大きくうなずいて料理を進めました。

隣の部屋でこっそり聞いていた奏は嬉しそうに、ゆっくりとちびっこ達の部屋へ戻りました。


その頃車はまた近くのドライブスルーへ。

休ませる頻度がどんどん早まっている。

外は天気予報通りの雪が降り、地面は真っ白になっていました。

飲み物を買いに村田丸以外は店内へ。

村田丸は一人車のメンテナンスをしている。


そこへ…… 三人の男達が近寄って来ました。


「 よぉ…… カレーライス男爵さん。 」


びくっ!! 村田丸のニックネームを呼ぶ声が。

聞こえないふりをしてボンネットの中を覗く。


「 お前さんの動画のせいで、俺らの動画…… 全然視聴されなくなってるんだわ。 」


その三人は底辺動画主。

マーボー坊やにサツマイモ男。

カレーナン太郎。

またもやライバル視している輩でした。

更に全員30代は越えてる良い大人。

しかも髪を派手な色に染めたりして危なそう。


「 そう言われても…… 。

俺にはどうにも出来なくて。 」


そう言うとカレーナン太郎のパンチを顔面に食らってしまう。

その衝撃で勢い良く地面に叩きつけられる。


「 お前さんのせいで苦労してるんだわ。

オラーーーッ!! 」


そう言いながら何発もパンチを貰う。

外には人があまり居なく、視界も悪い為誰も助けてくれません。

逆恨みされ何度もやられてしまう。

この前とはまた違う人にボコられ、ヘロヘロにされてしまいました。


それを見て三人はへらへら笑う。

気分が良くなり財布からお金を抜いていく。

村田丸は一切動きません。


「 おっと…… 忘れてた。

人形があるからそれも頂くか! 」


そう言い後ろの席のドアを開けようとする。


( 村田丸…… ありがとうな。

俺達は上下関係はあっても、最高の友達だ。 )


人形が手に入ったときに、一平に言われた言葉を思い出しました。

弱虫で逃げてばかりの男が動く。

勢い良く男達に飛び付く。


「 俺を殴ろが、お金を取ろうが勝手にしろ!

でも人形にだけは手は出させない!!

それは大事なもんなんだっ! 」


そう言い三人を掴み、動けないようにする。

凄い力で掴んでいるので全く動けない。

三人は必死に抵抗し、村田丸を殴ったり蹴ったりする。

村田丸は泥だらけになりながら守る。

大切なプレゼントの為に…… 。


一人どうにか抜け出し、近くにあった石を掴む。


「 はぁはぁ…… うぜぇんだよ。

これで大人しくしてやるからよ!! 」


勢い良く振り下ろされる。

全く避けられない村田丸。


「 先輩…… 俺も仲間です。 」


抵抗出来ない村田丸にゆっくりと石を振り下ろされる。

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