第23話 勝利の余韻


みんなで車に乗り、帰ろうとする。

先に戻っていた健人を気に掛ける一平。


「 どうした? 具合でも悪かったか? 」


健人は直ぐに笑顔になり。


「 少し仕事の電話があってな。

でもプレゼント手に入って良かったじゃないか。

これで離婚は免れそうだな。 」


やっと一安心し、ホっとする。

ブーブーと音を立てて煙を出しながら、ゆっくり車は走り出しました。

車内で一平は愛しのジェイミー人形を見つめる。


「 やっと手に入った。

やっと…… しかもなんやかんやの限定品!

愛菜も大喜びするだろうなぁ。 」


そう言い何度も人気を上に上げてニヤニヤする。

それを見ていた花梨。


「 おっさん…… 私さ…… 間違ってたかも。

自分さえ良ければ大量に買って、転売するのなんか全然なんとも思ってなかったの。

でもおっさん見て思った。

買いたくても買えなくて困ってる人が、こんなにも沢山居るんだって分かった。

ごめんなさい…… 。」


花梨は当事者の気持ちをやっと分かり、自分のしてきた事を恥じました。

今回来たのも最後まで見届けたくて、偶然聞こえていた目的地に付いてきたのです。

一平は笑いながら顔を横に振る。


「 売る側もお金欲しいから仕方ないさ。

楽して稼げるのは魅力的だからね。

俺は一平だよ。 宜しくね。 」


そう言い笑って握手しました。

花梨も自己紹介をしました。

みんなも花梨を仲間として受け入れ、首都まで戻る為に高速へ向かいました。


その頃家では誕生日の飾り付けが始まっていました。

可愛くデコレーションしたり、美味しいご飯の為にと下ごしらえ。

ママも奮発して腕を振るう。

愛菜ちゃんは隣で嬉しそうに踊っている。

とってもご機嫌の様子。


ピンポーン!!

チャイムが鳴りました。

玄関にすかさず愛菜ちゃんが走って行きました。


「 パパぁーーっ! 」


開けるとそこには隣に住んでいる、村上親子が来ました。

大きなプレゼントとシャンパンを持ち、村上お父さんがニコニコして立っている。


「 やぁ、愛菜ちゃん。

今日はお誕生日だねぇ。 おめでとう! 」


「 愛菜ちゃん、お誕生日おめでとう! 」


娘のきららちゃんも待ちきれず来てしまいました。

パーティーは夕方なのですが、お隣さんで仲良しの為フライングで来てしまいました。

愛菜ちゃんはパパだと思って開けたので、少し寂しそうな表情に。


「 どうぞ! お入り下さい。 」


そう言うと二人は中へ。

きららちゃんは愛菜ちゃんの手を引っ張り部屋へ。

子供は遊ぶのが大好き。

少し奥さんは旦那が早く帰って来ないか、心配になりつつありました。


またまたその頃、仕事場では林さんが早めに上がる事を部長に申請していました。

今日は愛菜ちゃんの誕生日パーティー。

林さんも楽しみで仕方がありません。

早く上がってプレゼントと何か、スイーツを買おうとわくわくするのでした。


( 愛菜ちゃん何買えば喜ぶかな?

ケーキあるだろうから…… チョコかな?

迷うなぁ…… 。 )


ニコニコしながら仕事の手を止め、上の空の状態に。

後は一平が帰って来るのみ。

時間は少しずつ流れていく。


現在の時刻は12:00高速をおんぼろ車で、飛ばして帰って居るのであっという間半分くらいの距離を走りました。

車は凄い煙を出しながら走っている。


「 村田丸…… この車本当に大丈夫なの?

なんか凄い煙出てるんですけど…… 。 」


心配そうに花梨が言うと、直ぐに村田丸を言い返す。


「 元々コイツは短距離型なのよ。

ってか! 村田丸って。

村田さんとか、市丸さんと呼べ!

生意気だぞバイヤーめ!! 」


タメ口を使われてムキになり怒る。

それを見て一平が大声で笑いました。

面白くなり花梨も笑ってしまう。


( 本当に楽しい…… 。

この人達と居ると何か素直になれる。

凄く落ち着く。 )


花梨は心の中でこの空間を、最高だと思いながら何度も笑いました。

初めて自分らしく生きる…… そんな意味を知れた気がしました。


その中に一人…… 静かに外を眺める男が。

一平は気付き話を掛ける。


「 健坊どうした?

具合でも悪いのか? 」


健人は直ぐに振り向き笑い。


「 何でもないよ。

考え事してただけさ。 」


そう言い笑っていましたが、明らかに作り笑いだと感じました。


「 一平…… 俺はいつもお前の後ろを走ってたよなぁ。

金魚の糞みたいにさ。 」


いきなり少しネガティブな事を話し始めました。

一平は直ぐに言いました。


「 お前さんはいつもそんな事言ってる。

友達はいつも立場は同等。

俺はいつも助けられっぱなしさ。

今回も同様にな! にっひっひ! 」


笑いながら言いました。

健人笑いました。


「 相変わらずだな。

でもな…… 絶対に一平には分からない。

そんなしょうもないやつもいる。

それだけは覚えといた方が良いぞ??

世の中にはいつの間にか恨んだり、妬んだりするやつが居るんだからさ。 」


そう言いニコっと微笑む。

一平にはその意味が分かりませんでした。


「 一平覚えてるか??

昔に行ってたデパートの屋上。

あそこで良くくだらない話とか、恋愛話とかしたりして楽しんだよな。 」


健人の話を聞いていると、何か話せない悩みを抱えているそんな気がしました。


「 ああ…… 。 あったよな。

健人? 何でも良い…… 何かある時は話せよ?

俺とお前は大親友だろ? お前は困ってるとき、だれよりも早く駆けつけてくれる。

だから俺も駆けつけてやる! 」


そう言いながら自分の胸を叩きました。

大船に乗った気でいろ! と言わんばかりに。

健人はまた笑い。


「 相変わらずだよな。

俺達は…… 友達だからな。 」


そのときの表情は少し悲しそうに見えました。

でも一平は聞きすぎてもあれなので、少し様子を見ようと思いました。

その光景を花梨は見ていました。


サービスエリアに止まり、車を見るとやっぱりそろそろ限界が近い。

車を休ませるのも含め、少しご飯を食べる事に。

みんな豪勢な料理? とは言えないが、大盛りのラーメンやチャーハン。

餃子にデザートの数々。

全て一平の奢り。


「 さぁ、どんどん食べてくれ! 」


そう言うとみんなは大はしゃぎで食べる。

花梨もゆっくり食べる。


「 美味しい…… 。 」


いつもと同じラーメン。

多分安物であろう。

でもどうしてでしょうか?

笑って食べる食事は、高い料理よりも美味しく感じました。

村田丸がふざけて沢山頬張り、一平が悪乗りして口へもっと詰め込む。

健人もそれを見て笑っている。


「 本当楽しい…… 。

またこんな風に食べたりしたいな。 」


そう言うと一平達は優しく言いました。


「 当然じゃないか。

もう俺達は友達なんだからさ! 」


「 そうだよ、先輩の奢りで沢山食べよう! 」


その優しい言葉に花梨は喜びました。

お金や仕事としての仲間は居ましたが、こんな風に笑える友達は居ませんでした。


「 花梨ちゃんさえ良ければ、今日の誕生日会においでよ。

みんな大歓迎だからさ。 」


そう言うと花梨は驚きました。

この前まで見ず知らずだったのに、本当に仲間のように接してくれました。


「 えっ…… ?

良いの? 私なんか行って。 」


「 色々なんだかんだ旅した仲間だ。

俺の奥さんにも紹介するからさ!

愛菜も凄い喜ぶぞぉーー っ。 」


そう言うと花梨は誕生日会に誘われたのは初めてで、少しドキドキしてしまいました。

でも行きたい好奇心が勝っていました。

みんな仲良くて和気あいあいに。

ゆっくりと健人がトイレへ。


一人でトイレへ歩いて行きました。

途中トイレとは違う方向に。

外へ出て行きました。

そして村田丸の車の前へ。


「 …… 悪く思うなよ。 」


ボンネットを開けて何かをしている。

直ぐに終わりみんなの元へ。

一体何をしていたのだろうか…… 。

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