第22話 終着点


トラックに詰め込む従業員の元へ走って行く。

そして直ぐに。


「 勝手なお願いなのは分かってます。

それでも、どうしても必要なんです…… 。

どうかジェイミー人形を売って下さい。

お願いします。 」


そう言い土下座しました。

何度も頭をつけて。

従業員も売る権利もないので、慌ててしまい困惑してしまう。


「 あんた…… 昨日も来たな。 」


ゆっくりと現れたのは、ここの現社長。

漆黒の赤い上下のスーツに身を包み、一平の前に歩いて来ました。


「 ジェイミー人形欲しい?

笑わせないでくれよ。

人気商品だぞ?? 何で予約してない訳!?

その時点であんたは負けてんだわ。

情けなくないかい? こんな年下に頭下げて。 」


一平を蔑み、笑っている。

朝からハイテンション若社長。


「 何も言い返せません…… 。

俺は情けないバカ親父です。

だけどこんな事しか思い付かなくて、必死に頭を下げるしかないんです。

どうか…… お願いします。 」


悔しくても頭を下げるしかありません。

近くで見ていた花梨は見ていられなくて、止めに行こうとする。


ガシッ!

健人が花梨の手を掴み止める。


「 放して? 見てらんない。

あんな事言われてなんで平気なのよ。 」


花梨は一平の分まで言い返したくて仕方がない。


「 見てなよ…… いつも運命はあいつに味方する。

いつもそうなんだ…… 。 」


健人が言うと花梨には意味が分からなかった。

健人の表情は真っ直ぐ一平を見つめ、少し悲しげにも見えていた。

村田丸も当然イライラしている。

一人で行った一平を信じて、待っているしかなかったのです。


「 にしてもお前さんは大した仕事もしてないだろ?

今のご時世は転売のを買うのよ。

そうすれば手に入るのに、どうしてそうしない?

金がないからかな? 」


嘲笑うかのようにゲラゲラと笑う。


「 俺は…… プレゼントだけはどうしても、どうしても自分の手で手に入れたい。

そんな不器用な男なんです。 」


そう言いまた頭を下げ続ける。

若社長は更に、激しさを増して笑い続ける。


「 聞いたかお前ら??

あっはっは!! とんだ頑固野郎だぜい。

笑いが止まる訳ないだろうが。

あっははは、ひっひっひ! 」


従業員も一緒になり引きつった顔で笑う。

花梨は我慢の限界に。

手を振りほどき、一平の元へ向かおうとする。


「 その者を笑うのは…… 絶対に許さない!! 」


大声で叫ぶ男の声。

笑いが止み、その声の方へ目を向ける。

一平も顔を上げて声の主を見る。


「 遅くなったのう…… 。

必ず戻ろうと思っていたが、遅くなってしまったね。

本当に申し訳ない…… 。」


「 あんたは…… 。 」


その声の主は何と…… 昨日の食い逃げお爺ちゃん。

いきなりの登場に一平も驚く。


「 じーさんあんたどうして…… ? 」


「 約束を果たしに来たのだよ。

なぁ…… バカ社長くん? 」


その眼光は若社長に。

若社長は震えている。


「 パパパパっ…… パパ。

どうしてこんな早くにここ…… ここに!? 」


「 パパ…… ? 」


一平は全く状況を掴めない。

お爺ちゃんはゆっくりと若社長の元へ。


「 お前さんも偉くなったもんだな…… 。

社長になるとこんなにも変わるのかねっ!! 」


そう言い激しいビンタを浴びせる。

周りに居る人達はびっくりする。


「 見苦しいもん見せたね。

私はあの子の父。 坪井玄徳だ。 」


一平はその言葉に衝撃が走る。

社長の父親…… = 元社長。

あまりにも普通に見えてしまい、全くそのオーラを感じませんでした。


「 悟よ…… いつからお前さんはそんな金しか見えんくなったんだ?

この人を見て良く笑ったり、蔑んだり出来たなぁ。

私は見てて怒りを押さえられなかったぞ。 」


そう言いながら一平の元へ。


「 一平くん。 楽しい飲み会だったなぁ。

また一緒に親の苦労を話し合おう。

それと…… 息子が本当に申し訳なかった。 」


そう言い深くお辞儀をする。

一平は直ぐに立ち上がり、お辞儀を止めさせました。


「 いやいや…… おじ、玄徳さんが謝る事ではないですよ。

若社長さんが言っている事が真実ですから。 」


そう言うと若社長が走って来る。

そして流れるような土下座をする。


「 なんと、何と申し上げたら良いか…… 。

私が間違えていました。

大切なお客様なのにも関わらず、あのような対応をしてしまい。

本当に申し訳ありませんでした!! 」


何度も何度も地面に頭をぶつけました。


「 頭を上げて下さい。

もう全然気にしてませんから! 」


そう言うと若社長は直ぐに工場の中へ。

何分か過ぎて戻って来ました。

手には大きな人形が。


「 反省して色々見つめ直します。

お詫びと言ってはなんですが、ジェイミー人形の初期版で限定50個作った内の一つです。

良かったら娘さんに持っていって上げて下さい。 」


その人形は一般化されている製品とは、完成度が明らかに違っていました。

素人でも分かるくらいに…… 。


「 えっ!? …… こんな物受け取れませんよ。

俺は何にもしてないのに…… 。 」


そう言い断ろうとする。

するとお爺ちゃんは笑って言いました。


「 息子の反省と私と話してくれたお礼だ。

娘さんにプレゼントしてあげてくれ。 」


そうして受け取るジェイミー人形。

その重さと価値が一気に実感する。

遂に…… 遂に手に入ったのです。

一平は震え上がるくらいに喜びました。

そして天高く掲げる。


花梨や村田丸は大きく喜びました。

花梨は少し涙が出そうになるも、拭いて誤魔化しました。


「 おっさん…… 良かったじゃん。

これで離婚されずにすんだね! 」


自分の幸せのように喜ぶ。


「 言ったろ? あいつはいつも上手く行く。

今も…… 昔もな…… 。 」


そう言い車に戻る健人。

花梨はその言葉に少しの疑問を持ちました。

ですが今は喜びの余韻を味わいたくて、見てみぬフリをする。


そしてやっと任務を果たし帰る事が出来る。

家族の待っているあの場所に…… 。

急いで家に電話をかける。


「 美咲?? オレオレっ!

今、仕事終わったからぼちぼち帰る。

誕生日に必ず間に合う。

直ぐに帰るからねぇ〜 。 」


そう言い電話を切りました。

奥さんは嬉しそうにスマホをテーブルに置く。


( 良かったぁ…… 間に合わなかったらどうしようかと思ってた。

来るまでにご馳走とケーキとか飾り付け。

私も大忙しだぞ!! )


嬉しそうに奥さんは少しずつ準備をする。

大切な娘の誕生日。


一平は電話切った後に、お爺ちゃんと連絡先を交換してまた会う約束をする。

恐る恐る村田丸が一平の元へ。


「 先輩…… そろそろ例の物を。 」


その表情は下心丸出しのけもののようになっていました。

一平も察して紙を渡す。


「 本当に助かったよ。

好きに使いなさい。 」


その紙には同僚の林さんの番号が書いてありました。

村田丸は直ぐに番号を登録する。

そして今ならなんでも出来ると思い、直ぐに電話をかけました。


「 もしもし…… ?

林ですが?? 」


緊張しながらも大きく深呼吸して。


「 俺ですっ! 村田市丸です!!

お疲れ様です。 」


「 あっ! 村田くん?

番号知ってたっけ??

部長は急な有給でお怒りよ。 」


仕事場は二人の急な欠員で大忙し。

特に新人の休みは偉そうだと思われがち。

築き上げてきたイメージは破綻している。


「 先輩から聞いて…… 。

部長には明日謝ります。

人形…… 人形が手に入りました!

だからこれから帰ります。 」


嬉しそうに伝えると林さんも直ぐに喜びました。

一平を心配していた一人。


「 先輩が今日の夕方の誕生日会においでって。

良かったら来ませんか?? 」


「 本当に!? 行く行くぅ〜 。

なら早く仕事終わらせて、プレゼントも買わないとね。」


林さんは嬉しそうに話しました。

夕方の誕生日会に参加する事に。

当然村田丸や健人も参加予定。

村田丸も嬉しくて仕方がありません。

その後に電話を切りました。


「 やった…… やったぞ…… 。

このまま二人の関係は発展し、そして…… 。 」


ゆっくりと妄想の世界へ。

帰りにの綺麗な夜景を楽しみながらの帰り道。

林さんはほろ酔い状態。

妄想の世界では三割増しの村田丸。

目は二重で足も長い。

妄想は誰にも迷惑をかけないので自由。


「 林さん…… 良ければ俺と付き合ってくれませんか?

絶対に不幸にはさせません。 」


キザに顔を近づけて話す。


「 係長をあんなにもフォローした村田くんなら。

私で良ければ…… 。 」


頬を赤らめて恥ずかしそうに話す。

村田丸はゆっくりと顔を近づける。


「 そして…… 最高な夜に。

イーーーヤッホーーイッ!! 」


勝手に妄想を膨らませてヘラヘラする。

最高の一日になりそうだと思いました。


ゆっくりと帰る準備をそれぞれするのでした。

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