第21話 謎の飲み会
もう日も暮れて夜に。
謎のお爺ちゃんと共に夜の街へ。
居酒屋や美味しそうなお店の明かりによって、とても綺麗に輝いている。
( このモナカジジイ…… 本当に売ってる店なんか知ってるのか?
ホラ吹きしやがったら、年配の方だろうと容赦はせんぞ…… 。
今の俺はふざけてる余裕なんてないんだ。 )
若干殺気立ちながら歩いていると、目的の居酒屋に着きました。
「 ここで飲むぞ。
さぁ〜 入った、入ったぁ。 」
あらゆるつまみやお酒を取り揃えているお店。
メニューを見るとお刺身とかがとても美味しそう。
お爺ちゃんはメニューをほとんど見ずに、店員さんに声をかける。
「 お姉さん、おすすめのを適当に頼む。
後は私はワインを一つ。
兄ちゃんはジョッキビールで良いな。
お願いします。 」
慣れた口調で注文を終える。
一平はメニューをまだ見ていましたが、あっという間に終えられてしまう。
( モナカジジイ…… 新手の詐欺師か!?
見た目もそんなに金持ってそうに見えん。
勝手に注文をしてしまうなんて、大人として絶対にありえない。
やっぱり怪しい …… 。 )
一平の不信感は消えません。
村田丸と健人も後から合流する事に。
その間は二人で飲み始める。
「 ん〜まろやかで美味しいぞ。
さぁさぁ、どんどん食べておくれや。 」
お爺ちゃんはワインを飲みつつ、つまみに刺身や揚げ物とどんどん食べていく。
一平も観察しつつビールを飲む。
「 じいちゃんはどうしてジェイミー人形に詳しいんだい?
あんな人気商品の流通経路なんて、どうやって知るんですか?
本当はでまかせ何かなのでは? 」
怪しくて遂、追及してしまいました。
こっちも焦っているので仕方がありません。
「 兄ちゃんも疑い深いね。
ほいっ! 見てみぃ。 」
そう言い一枚の紙を手渡しました。
そこに書いてあったのは、納品先のリストでした。
しかも極秘の物。
一平は驚いてしまう。
「 じ…… じいさん。 これを何処で!? 」
お爺ちゃんは蟹クリームコロッケを食べつつポカンっとしている。
( 分かったぞ…… このじいさんはどっかで拾ったんだな。
それでその情報を武器に俺に交渉してきたのか。
あのデパートに居たのは、俺みたいな飢えた親父を捕まえに来ていたのかも。 )
謎にそんな頭も良くないのにも関わらず、心理戦を始めました。
「 兄ちゃんは名前は? 」
「 一平…… 田中一平です。 」
そう言いビールを飲む。
「 兄ちゃんはどっからここまで来たんだい? 」
「 東京の方からでして…… 。 」
そう言うとお爺ちゃんはびっくりする。
青森から東京なんて凄い距離です。
「 そんな遠くからまたまたどうして? 」
そう言うと一平はこれまでの経緯を話しました。
娘の為に人形が欲しい…… 。
これ以上家族を裏切りたくない。
離婚されない為にも死に物狂いでやって来たと。
「 そうだったんかぁ…… 。
あんたは間違ってないよ。
家族の為に働いてたんだ、ふざけて遊び回ってた訳じゃないんだ。
話せば分かって貰えるよ。
それが夫婦ってもんだ…… 。 」
謎のお爺ちゃんに諭されました。
一平はうなづきながらまたお酒を飲む。
「 私は小さいながら会社を築き上げてね、頑張って大きくしてみたんだが、自分の思うようには成長しなくてね。
人気になったかと思えば、災難、災難と続いては坂道の連続だったよ。 」
お爺ちゃんは染々と昔話をしました。
「 息子もすくすくと育っていったが、私の思うような大人にはならなかったなぁ。
ワガママに育ち、自己中心的な考えでいっぱいだ。
困ったもんだよ。 」
お互いに父親の辛さを語りました。
「 そうなんですかね…… 。
子育てって難しいですよね。 」
一平も酔ってしまい顔は赤くなり、段々と相手のペースに飲まれて行く。
その後も何気ない世間話を楽しみました。
一平も完全に酔い、べろべろになりながらお喋りをしました。
また少しして健人と村田丸もやって来て一緒に宴を盛り上げました。
愛菜の誕生日は遂に…… 明日。
このお爺ちゃんのメモさえあれば、まだチャンスは残されている。
安心して笑い、深い眠りへ落ちて行きました。
次の日の朝…… 。
「 おっさん、おっさん。
いつまで寝てんだよ! 」
一平が寝ている所を誰かが揺すっている。
寝ぼけながらも目を開ける。
「 ん…… んぅ? …… キミは? 」
そこに立っていたのは転売ヤーの女の子、花梨でした。
どうして居酒屋なんかに居るのでしょうか?
しかも青森に。
「 暇潰しにおっさんがどうなるか見たくなって、興味本位で見に来た。
良いでしょ? 」
何故か急な心境の変化。
一平もびっくりしました。
「 良いよ、俺がジェイミー人形手に入れる所をしっかり目に…… あれ?
あのじいさんは? 」
周りを見てもお爺ちゃんは居ない。
寝てる村田丸と健人しかいない。
テーブルの上には手紙が。
( 急に帰る事に。
昨日は本当に楽しかったぁ。
また飲もう、また食べよう! )
クシャクシャっ!!
「 あの野郎!! 逃げやがった。
散々食っては飲んだのに。
んっ? 約束の店舗リストは!?」
何処を探してもメモは見つからず、逃げられてしまったようでした。
一平は絶望的な状況に。
「 お客さぁ〜 ん。
お会計そろそろしてもらえるかい?? 」
お爺ちゃんはお会計もして行かなかったようでした。
一番食べたり飲んだりしていたのに…… 。
「 やっぱりタダ食いじーさんかよ!!
信じたのが間違ってた。 」
一平は強く後悔しました。
現在の時刻は7:00。
帰る時間もあるのでどうすれば良いのか。
皆も一平の選択を待つ。
( 決めた…… あそこしかない。
何度断られてもあそこしかない。
行くぞ…… 。 )
一平は覚悟を決めてお会計をして外へ。
村田丸のポンコツ号は、また何とか乗れる状態なので煙を出しながら、目的地へ向かうのでした。
向かった場所は…… おもちゃの森坪井でした。
この工場に懸けるしかなかった。
トラックに大量のおもちゃを詰め込もうとしていました。
一平は頭を下げに行こうとする。
「 あんた…… 止めなよ?
絶対怒られるだけだよ。
私がどうにかしてやるから。
お金さえ出せば良いんだから。 ねっ ? 」
花梨は断られる姿を見たくなくて、必死に止めようと一平を掴みました。
「 ありがとう…… 。
でもね、男にはやらなきゃなんない時がある。
どんなに分かっていてもね。 」
そう言い優しく振りほどく。
そして一平は従業員の元へ…… 。
その頃、家では?
「 愛菜ちゃん。 起きてぇ? 」
奥さんが愛菜ちゃんを起こしている。
いつもと違い、一瞬で起き上がる。
「 ママおはよう! 私の誕生日っ! 」
そう言い飛び起きる。
奥さんもクスクスと笑う。
「 そうね! お誕生日だね。
今日は最高の誕生日になりそうね。 」
そう言いながら抱っこしました。
嬉しそうに抱きつく。
そして周りを見渡す。
「 ママぁ…… パパは?
パパは居ないの? 」
愛菜ちゃんはまだ帰って居ない一平を探す。
「 大丈夫! パパはね、約束は絶対守るの。
早く帰って来るからね。 」
そう言うと大きくうなづきました。
二人はリビングへ。
奥さんもキレイな空を見て。
( あなた…… 早く帰って来てね。
その時にちゃんと謝るんだから。 )
奥さんも一平の帰りを楽しみにしてました。
今日は愛菜ちゃんの誕生日。
一平は間に合うのでしょうか?
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