第20話 最後の希望、青森


一平達を乗せたおんぼろ車は高速を使い、遂に青森へ到着。

現在の時刻は16:00。

都会からここまで良く来ました。

三人は青森県の看板を見て、染々と感じるのでした。


「 一平。 生産工場は直ぐそこだ。

早く行こうか。 」


健人のナビにより工場まで一直線。

車は長旅によりエンジンからは煙が。

ゆっくりと車が止まってしまう…… 。


「 あーーっ!!?

俺の車が限界を迎えそうです。

誰か修理代を出してくれる人は? 」


村田丸が二人を見ようとするも、既に外に出ていました。


「 ふぅ〜 。 ここが青森か…… 。

行くぞぉーーっ、健坊!! 」


「 ああ…… 一平! 」


一切後ろを降り迎えらずに走って行きました。

まるでバスやタクシーを降りた人のように、真っ直ぐ目的地へ。


「 酷いですよぉーーっ!

俺を置いて行かないで下さ…… 。 」


走っている内に声は風に書き消され、聞こえなくなりました。

村田丸は一人車に取り残されてしまいました。


そして少し歩く事30分…… 目的地の工場へ。

そこはジェイミー人形やそのシリーズの人形を主に生産している工場。

凄い大きさに圧倒されてしまう。


( って言うか…… ここは作る場所で、売ってくれる訳なくないか!? )


今更ながらの疑問!

一平は急に不安になってきました。

そしてチャイムを鳴らしました。


「 はい! こちらおもちゃの森

坪井で御座います。 」


大手おもちゃ会社の坪井。

凄い大きな工場。

いきなり何と言えば良いのか…… 。


「 あのぉ…… 私達ある人形を探していまして、ここならあるかなぁ?

っと思いまして、遥々ここまで来ました。

ジェイミー人形はありませんかね? 」


自分でも何を言ってるのか分からない、自分勝手な理由。

返ってくる言葉は当然…… 。


「 すみません…… こちらで生産していても、売ったりとかはしてないんですよ。

わざわざ来て貰ったのに申し訳御座いません。

生産の量を増やしていますので、近い内には皆さんの手に届くかと思います。 」


やっぱり駄目でした…… 。

深く落ち込んでしまう。


( 近い内に…… ?

今じゃないとダメなんだよ。

明日までに手に入れないとダメなんだよ。

チクショー…… 。 )


丁寧に断られてしまい、仕方なくそこから帰る事に。

帰る様子を工場の監視カメラで見る謎の男。


「 汚いねぇい…… 汚ないねい…… 。 」


寒い中歩いてきた二人を見下す男。

坪井悟つぼいさとる33歳の新社長。

68歳の父は辞めてしまいましたが、まだこの会社に携わっているらしいです。

優しい父と違い、息子の悟は少しお金や利益を優先しやすく、いつも父に怒られている。


「 私達の人気商品欲しさにここまで来る。

醜過ぎるねぇーーいっ! 」


赤いスーツ上下に白いエレガントな靴。

金持ちなのを自慢しているような見た目。


「 そうですね…… 若社長。 」


周りの社員も逆らえずに従うしかありません。

内緒の話しによると、若社長の悪口でみんな仲良くなるのがここの当たり前になっているとか。


「 本当にさ…… ゴキブリかよって!

真央ちゃーーん。

今日の夜はル・シャトレビレのお店予約しておいて。」


シャンパンの入ったグラスを片手に持ち、楽しそうに仕事? をしているのでした。

会社の外側と内側では大違い。

理由も知らずに笑う若社長。


もう夕方…… 一平は悲しげに歩いていると、スマホに着信が入る。


「 もしもし…… 。 」


「 あなた? 大丈夫??

何か元気ないみたいだけど…… 。 」


奥さんからでした。

元気のない声に直ぐに気付いてしまう。

一平はいけないと思い、直ぐに一呼吸起き。


「 全然…… 絶好調さ。

少しまだ長引きそうでね。

明日の夕方の誕生日会には、必ずかえる帰るから安心しておくれ。 」


今のままでは帰れない…… 。

まだ人形は買えていない。


美咲さんも言いにくい事が…… 。


( この前は言い過ぎなぁ…… 。

絶対傷ついてるから謝らなきゃ。

でも電話で言うのも…… 。 )


少し無言の間が起きてしまう。

一平は罪悪感もあり、どうにか美咲さんにこれ以上信頼を失わないように、明るく何気ない会話をしました。

美咲さんも一平の空元気に気付きましたが、あえて触れませんでした。

帰って来たら謝ろうと思ってました。


「 一平君…… 愛菜が話したいって!

愛菜ちゃんパパだよ。 」


そう言い電話を変わりました。


「 パパぁ! パパぁ!

いつ帰って来るのぉ?

明日は誕生日だよ。

愛菜はうどん食べたい。 」


愛菜ちゃんは必死に一生懸命一平に想いを伝えました。

一平は泣きそうになるくらい、その声が愛おしくて仕方がありません。


「 明日には必ず帰るよ。

うどんなんて誕生日じゃなくても食べられるだろぉ?

ハンバーグとかピザとかお寿司。

いっぱい食べよう。

分かったね!! 」


「 うんっ!!

パパ大好きだよ。 仕事頑張って。

おやすみなさい…… 。 」


「 パパ…… パパもだよ?

ママの言うこと聞くんだよ。

おやすみなさい。 」


ブツッ!

電話が切れました。

そして呆然と立ち尽くす。


「 一平…… 美咲ちゃんからか? 」


健人が気になり聞くと、一平は黙ってこくりとうなづく。


「 俺はパパであり旦那だ。

どんな困難だって、災難だって越えてやる。

それが父親ってもんだろ? 」


そう言い笑いました。

何か吹っ切れてたのか車に走って行きました。

健人は黙って立っていました。


「 そんな所が…… 。 」


何かを言いかけて止めて追いかけました。

健人にも何やら不満なのか悩みがありそう。


車に戻り、まだ夜までには時間があるので三人は、別れておもちゃ売り場を探し回る。

慣れない場所でナビを頼りに走り回る。


一平が何店も回りましたが、当然売っていません。

デパートのおもちゃ売り場を見た後に、少し疲れたので腰を下ろす。


「 兄ちゃん必死だねぇーーっ。 」


笑いながら話しかけてきたのは、ベンチに座っていたお爺ちゃん。

デパートの中でアイスのチョコモナカを食べている。


「 じいさん…… 店内で食べちゃダメだよ。

ほら! こぼしまくってるし。 」


お爺ちゃんは地面にバリボリと、モナカのカスをこぼしている。


「 うるさいなぁ!

んな事よりも兄ちゃん…… ぐ〜たらファミリーの人形探してんのかい? 」


お爺ちゃんはそう言いながらまた、モナカに噛りつく。


「 そうなのよ…… 。

娘が凄い欲しがってさ。 」


仕方なく老人の暇潰しに付き合う。

少し疲れていたので丁度良かった。


「 ふむふむ…… バリバリ!!

あの人形なんか直ぐに人気なくなるさ。

そんなの買うくらいならもっと、良い物買いなさい。」


悲しそうにそう言いました。


「 そうしたいけどね…… 。

ウチの娘はジェイミー人形に夢中でね。

いつか飽きちゃうのかもだけど、娘にはその人形はとっても大事な物になると思う。

大切なのは結果じゃない…… 共に歩んだ思い出と時間な気がするんだ。

いつもCMに釘付けさ。 」


そう言いクスクス笑いました。

お爺ちゃんも笑いました。


「 あっはっは…… 兄ちゃんは変わってるね。

私は玄徳じゃ。

宜しくのぉ。 」


何故か自己紹介してきました。

そして手を出してきました。

仕方なく握ると、アイスでべたべた。

一平は本当に運がないと思いました。


「 兄ちゃん…… 良かったら夜ご飯一緒にどうだい??

ご馳走するからさ! 」


いきなり何を言い始めているのか?


( コイツ…… いきなり何なんだ?

初対面でご飯だと??

お年寄りになるとこうなるのか? )


一平はかなり警戒している。

それに食べている場合ではない。

老人の遊びに付き合っている時間もない。

少し強めに断ろう!

そう思うのでした。


「 お爺ちゃん…… いきなりあなた、俺はそんなに暇では。 」


「 ネコのジェイミー売られる店教えてやっても良いぞい。 」


いきなりの発言に動揺してしまう。


( 怪しい…… モナカジジイが何言ってんだ!?

モラルの欠片もない食いしん坊が、知ってる訳ないだろ…… 。

大人をなめるな…… 。

そんな嘘に乗るわけには。 )


「 玄徳お爺ちゃん、一緒に食べに行きましょ!

レッツゴー!! 」


謎の誘惑に負けた一平。

ジェイミー人形は手に入るのでしょうか?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る