第18話 大きな背中


それはまだ美咲が小学五年生の頃。

公園で友達と遊んでいると、そこへ六年生の男子達が悪さをして騒いでいました。

周りも怖くて注意出来ません。

一番中途半端な年頃の六年生。

言って聞くものではありません。


「 帰ろう…… 美咲ちゃん。

他の公園でもいいし。 」


そう友達が言うと美咲は正義感が働き、男達の元へ歩いて行きました。

恐れ知らずで誰にでも注意出来てしまう。


「 ちょっと! みんな迷惑してるんだよ?

少し静かに出来ない!? 」


男達は騒ぐのを止める。

人数は6人…… 。

女の子一人で止められる訳がありません。


「 なめんなよ…… このブス!! 」


そう言い思いっきり押されてしまい、倒れてしまいました。

男達は笑い楽しんでいる。

美咲は初めて年上で、力の強い男には敵わないのだと感じました。

正しい事を通せないのが悔しくて、涙が出そうになりました。

誰も助けてくれない…… 。


「 何だこれは?? 」


転んだ拍子にハンカチを落としてしまい、リーダーの男に拾われてしまう。


「 返して!! それは大切な…… 。 」


取り返そうにも手で届かないように、高く上げられて届きません。

周りもずっと笑いながらバカにしてきました。

美咲の誕生日に買って貰ったプレゼント。

絶対に奪われたくない…… 。

必死に抵抗するも全く敵いません。


「 男が群れてホモなんじゃないの?? 」


近くから男達に向けて罵倒する声が。

男達は周りを見渡しても誰も居ません。


「 誰だ!? 出てこいビビり野郎!! 」


手を上げて威嚇しました。

すると顔に冷たいスライムのような物がぶつかる。


「 うえっ!! なんだこれ!? 」


次々と男達にスライムが投げつけられる。

美咲は唖然としてしまい、動けずに見ていました。

男達は気持ち悪がったりしつて周りを探す。


「 トンちゃん、 あの木の上だ! 」


仲間の一人がリーダーに敵の場所を伝える。

その木の上には若かりし、一平と健人の姿がありました。


「 やべっ! もう見つかったのか。

健人、お前は近くに交番あっから行ってこい。

俺が時間稼ぐ…… 頼んだぞ。 」


一平は直ぐに木から降りて、謎のスライムを投げながら逃げました。

直ぐに男達は後を追いかける。


( 一平…… ごめん。 直ぐ戻る。

持ちこたえといてくれよ。 )


健人は走って交番へ。

健人は全速力で走るも、一平は既に上級生に捕まってしまいました。

胸ぐらを捕まれ高く上げられる。


「 てめぇ…… 見ねぇ顔だな?

殺されてぇみたいだな。 」


苦しそうに高く上げられてた一平。

もがきながら。


「 うるせぇなぁ…… 大勢で女の子をからかう野郎には、俺が相手になってやるよ。

本当の男のがな。 」


捕まってもまだ減らず口を叩く。

そしてポケットからまたスライムのような物を取り出す。


「 最後の一発…… くらえっ!

熱さまシート爆弾ーーっ!! 」


そのスライムをボスの顔に叩きつける。

凄い音が鳴り一平を放してしまう。


「 いってぇ…… 。

お前ら! 思いっきりやれぇい! 」


ボスはキレて一平の抹殺指令を出す。

大勢が一斉に一平へ拳を振るう。


「 お前らみたいなオカマ…… 。

俺が一人で相手になって!

うわあぁーーっ!! 」


離れた場所から見ていた美咲は、男達に覆い被されて一平の姿が見えなくなる。

自分のせいだと思い、美咲は動揺してしまう。


「 やめ…… やめ…… 。

やめてぇーーーーっ!! 」


美咲は大きな声で止める。

男達の弱い者いじめラッシュは止まらない。

直ぐにお巡りさんが登場する。


「 お前らーー 何やってるんだ!!? 」


その声で一斉に散らばってしまう。

お巡りさんは直ぐに後を追う。

散らばってしまった中止に、威勢の良かった一平が静かに倒れていました。

直ぐに美咲は駆け寄りました。


「 ごめんなさい…… 私…… 。

怖くて…… 何も出来なくて。 」


泣きながら一平の側何度も謝りました。

直ぐに健人が肩を貸して帰ろうとする。


「 待って! お巡りさんに今の事言わないと。

それに怪我してるんだからじっとしてないと。 」


美咲が引き止めると、健人はこう言いました。


「 俺達も先にスライム爆弾投げたんで、怒られる前にずらかります。

それとコイツも大人にチクるみたいなの嫌うんです。

派手に負けましたしね。 」


と言いながら微笑みまた歩き出しました。

美咲はちゃんとしたお礼も言えず、そのまま別れてしまいました。

お巡りさんがその後来てくれて、状況を説明したりと大変でした。

その悪ガキ達は学校を特定され、凄い怒られたそうです。

一平を学校で探しましたが、同じ学校ではなかったので見つけられませんでした。


と長々と美咲は奏に昔話しをしてしまう。

奏もクスクスと笑ってしまう。


「 あったねぇ〜 そんな事も。

確か熱さまシートを水に浸けると、凄いぶよぶよに膨れ上がってスライムみたいになるんだよね。

お兄ちゃんハマってたなぁ。 」


奏も過去を思い出して笑いました。

それを聞いて美咲も笑う。


「 そうだったんたぁ。

それから何年か経って、サッカーやってると思って色々なサッカーチーム探したんだけど、一平何て人は何処にも居なかったの。 」


サッカーの日本代表ユニフォームジャージと、名前の一平しか目印が無くて探すのも大変でした。

それを聞き、奏は大笑いして言いました。


「 あはははっ! 全然やってなかったよ。

可笑しい…… あの頃お兄ちゃんは、やんちゃってでサッカーファンのユニフォームを私服にしてる、センセゼロマンだったの。

本当おっかしい!! あはは。 」


サッカーしてる人を探しても見つからなかった訳が分かりました。

二人は顔を合わせて笑いました。


「 ずっと片想いで探し続けてたの。

高校に入ったとき本当びっくりしたんだ。

同じ高校で女子テニス部を健人君と覗いてたの。 」


振り返りつつ懐かしむ美咲。

出会ってからも話しかける勇気はなく、そのまま学校生活を過ごしていました。


ある日の事…… 。

美咲がテニスの練習をしてるとき。

一平が近寄って来ました。


「 あの…… あのぉ…… 。

いつも練習お疲れ様。

俺は一平って言うんだ。

宜しくね。 」


おどおどしながら心臓バクバクで話をかけてきました。


( わぁっ!! 一平君。

いきなりだからびっくり…… 。

私も勇気を出して。 )


何ごともないように美咲は。


「 一平君もいつもお疲れさま!

私は美咲って言うの。

試合前で練習しててね。 」


「 試合!? 俺なんてまだまだで

そんでもってさ! 」


その日から二人は何気ない話をするようになりました。

そして直ぐに付き合う事に。

美咲は幸せでした。

結局お礼を言えずに終わっていました。


「 そうだったんだぁ…… 。

あんなお兄ちゃんの何処が良いのか。

好きになってくれてありがとう。 」


奏はそう言うと一つ思うことが。


「 お姉さん? 一つだけ良いかな? 」


「 えっ? いきなり改まってどうしたの?? 」


奏の真剣な表情になっていました。

美咲も何となく分かりました。


「 ウチは早くにお父さん亡くなったの知ってるよね?

私なんかはお父さんの顔は写真でしか知らないの。

でも寂しいなんて思った事ないの!

お兄ちゃんは小さなときから、私のお父さん代わりでもあったから。

だからいつも家族の為に頑張ってる。 」


一平はお母さんと妹を守る為、ご飯作ったりと妹が寂しくないようにしていました。


「 だからね…… 今回の働いてばかりなのも、お姉さんや娘ちゃんを思っての事だと思うの。

だからあんまり責めたりしないでね?

悪気はないからさ。 」


美咲は自分目線の気持ちしか考えてませんでした。

一平の意思を全く考えてませんでした。

少し反省する事に。

そして帰って来たら謝ろうと思いました。


「 そうだね。

ごめんね…… 奏ちゃんにも迷惑かけて。

帰って来たら謝る。

早く帰って来ないかなぁ…… 。 」


二人は一平の帰りを待っていました。

その頃、また一平は次の場所で争っていました。


「 それは俺のジェイミー人形だぁーーっ!

よこしぇーーーーっ!! 」


大勢のおばざんに踏み潰されながら手を伸ばしている。

一平が戦っているのを二人は知らない。

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