第17話 奥さんの真実


静かな昼下がり。

喫茶店で優雅にティーを楽しむ奥さん。

娘ちゃんは喫茶店の中にある、待ってる間に退屈にならない為に遊べる場所で楽しんでいる。

たまにこんな風な一日…… 。

最高の過ごし方の一つ。


ガラガラーーッ。

扉が開きまた一人お客さんが。


「 お姉さんお待たせぇ。

道が混んでて遅れちゃって。 」


可愛らしいワッフルコートを着た女性がやってきました。

直ぐにコーヒーを頼み、コートを脱いで椅子に置く。


「 久しぶりぃ。 奏ちゃん。 」


田中奏たなかかなで

一平の四つ下の妹。

奥さんの美咲に良く懐き、本当の姉妹のような関係。

今日は愛菜の誕生日の前に、下準備の為にもお茶を飲みながらお話。

奏は近くの飲食店で働いている。


「 愛菜ちゃん大きくなったよね。

綺麗になってお姉さん似かな?? 」


奏は兄似てコミュニケーション能力が高く、学生の頃からバイトしていて、そのまま就職しました。

いつも笑っていて、たまにいじったりしてイタズラしたりと好奇心旺盛。


「 全然! 一平君にも色んな所似てて。

毎日驚かされっぱなしよ。 」


二人は笑いながら話は盛り上がる。

冗談を言い合ったりと心が通じあっている。

二人は本当に仲良し。


「 お兄ちゃんは今仕事?? 」


奏は仕事で遠くに行っているので、気になり聞きました。


「 何か忙しいみたいで。

でも絶対誕生日には帰って来るって。

約束してくれたから大丈夫! 」


そう言って美咲はニッコリ。

一平が約束を守るので信用している。

夫婦の絆である。


「 ふぅーーん…… お兄ちゃん頑張ってるね。

いつも大忙しだね。 」


そう言い奏もコーヒーを飲む。

そして気になる話を振る。


「 ねぇ? 離婚届け出したんだって? 」


ぶぅーーーっ!!

急な問いかけにびっくりして紅茶を吐き出す。

息が詰まりゲホゲホ。


「 ちょっと…… いきなり。

ゲホゲホ。 誰から聞いたの? 」


その動揺っぷりを見て奏はニコニコ。


「 お兄ちゃんからよ。

電話かけた時に死んだような声で、問いただしたら離婚届け出されてって。

私それ聞いて笑っちゃって!! 」


奏は思い出して笑いが溢れる。

腹を抱えて止まらないくらい笑う。


「 ちょっと笑い過ぎよ! 」


恥ずかしそうに美咲は抑える。

少し収まり一息つく。


「 だって…… 聞いただけで直ぐに分かったよ?

お姉さんのはったりだって。 」


奏は美咲の出した離婚届けは嘘だと思っている。

美咲はティーを一口飲む。


「 私は意外に寂しがりやだったみたい …… 。

それで帰って来るまで寂しくて、一平君にどうしても早く帰って来て貰いたくて、意地悪しちゃったんだよね。

駄目だって分かってたんだけど、この方法が一番効果的なのかな? って。 」


今回の一大事…… 。

それは美咲の嘘から始まったのでした。

奏はやっぱりと言わんばかりにうなづく。


「 でもどうして奏ちゃんは分かったの?

私が嘘で離婚届け出したって。 」


奏は全く疑いもせず一平が必死に話す話は、嘘に違いないと思っていました。


「 だってお兄ちゃんとお姉さん…… 凄い仲良しだから全然疑わなかったの。

お兄ちゃんは焦りまくりで、笑わないようにするの大変だったんだから。 」


奏には全てお見通しでした。


「 お姉さんの真意が分かんなかったから、お兄ちゃんには黙ってたの。

でも嫌いになってなくて本当良かった。

お兄ちゃん嫌いになっても、私達はずっと仲良しだからね! 」


と冗談交えつつ笑って話しました。

美咲は少し罪悪感があり、苦笑いになってしまっている。


「 でもね、私が離婚届け出したときのあの顔。

凄い辛そうで…… 冗談でもダメだったよね。 」


嘘をついた事を反省していました。

奏は強く首を振る。


「 たまには良いのよ!

いつも一つの事しか見えなくなるようなおバカなんだから! 」


そう言うと二人は笑いました。

その通りで現在…… 一平は一つしか見えなくなっていました。


「 おばさん! ジェイミー人形は!? 」


一平はおもちゃ屋で懲りずにジェイミー探し。


「 んなもんとっくに無いわよ!

しかも何だい!? あたしはこう見えてもまだ5…… 。」


話してる途中で帰って行く。


( また無い…… 。

こんな売れなそうな店まで。 )


悲しそうに立ち去りました。

車に戻ると二人共違う店に行くも、全滅で全然駄目でした。

少し疲れたので一休みに。

三人は焼き鳥屋へ。


「 おっちゃん、ビールジョッキで二つに焼き鳥お好みで頼む。 」


健人は村田丸以外で軽く飲んで、気を紛らわせようと考えました。


「 えっえっ?? 俺は!? 」


「 村田丸! お前は酒癖最悪だから駄目。

しかも運転手だろ?

乗客の命は任せたぜ。 」


と勝手な理屈をこねる一平。

村田丸はダダこねてる間にビールが届く。


「 乾杯!! 」


冴えない男二人の鈍い声が店内に響く。

上手く行かない不満と迫り来る恐怖。

誤魔化すかの如く酒を飲む。


「 ぴゃあおーーっ!! 」


一平の感激の声が出る。

焼き鳥を食べながらのビールは最高。

村田丸は不満そうに焼き鳥を食べながら、気になる話をする。


「 ムシャムシャ…… にしても、奥さんは高校のマドンナだったんでしょ?

そんな人が何で先輩と付き合ってくれたんですか?」


村田丸は単純な疑問をぶつける。

一平は目をつぶりしみじみと過去を振り返る。


「 それは長くなるなぁ…… まずは高校の夏にさかのぼる。 」


それはまだ一平が高校一年生の頃。

健人といつも自転車2人乗りしては、先生に怒られたり部活に励んだりと青春を謳歌していた。

二人は同じ部活のテニス部。

運動神経も良くなくて全然上手く強くなれません。


そんなある日の事…… 。

男子テニス部と女子テニス部は交代でコートを使っている。

男子が使い終わり次は女子に。

男子達からはある噂が流れていました。

それは同じ一年の女子テニス部に、凄い可愛い子が居るのだと。


当然一平も健人も彼女は居なく、女子との接点もありません。

飢えたハイエナ状態。

その噂が耳に入り、一平と健人はこっそり覗きに行く事に。


「 健人…… ぜってぇ見つかんじゃねぇぞ。

見つかったらグラウンド100周だぞ? 」


そう言いながらコート近くの茂みの中に隠れて、マドンナを見ようとする。

どんどんコートに女子が入って行く。

それをこっそりと覗いていました。


少し時間が過ぎた時、一人の女子がコートへ入って行く。

髪はロングできっちり結び、可愛いユニフォームを着こなしている。

明らかに他とは次元が違う。

その子こそまさに、今の奥さんの姿でした。

一平の目はマドンナに釘付けに。


「 そこ!! 何やってんだ!? 」


女子テニス部の先輩に見つかってしまう。

周りからはさげすみの言葉や罵倒、言われたい放題になってしまう。

直ぐに男子テニス部の部長に連行され、グラウンド100周させられてしまいました。

散々な出会いに…… 。


村田丸はその話を聞いていると、少し気になる事がありました。


「 でもおかしいですよ!

そんな最低な出会いをした先輩を、どうしてあんな綺麗な奥さんが好きになったんですか? 」


二人少し考えましたが全く分からない。


「 まず言える事は一平はその後、もじもじしてるだけで上手く誘えなかったんだ。 」


笑いながら健人が言うと、一平もやめろと言わんばかりに肩を叩く。


「 片思いも長かったよなぁ? 」


一平も恥ずかしそうにうなづく。

村田丸は未だに真相が分からなく、モヤモヤしてしまうのでした。


その頃奥さん達も出会いの話に。


「 お兄ちゃんさぁ、お姉さんに一目惚れしてから告白するまで長かったよね。

ずっと片思いでさぁ。 」


奏があの頃を振り返りながら笑っていると。


「 実は違うの…… 私が先に好きになったんだよ?」


「 えぇーーーーっ!? 」


一平達の話とは全く違く、美咲の方が先に好きになっていたのです。


「 そんな…… そんな訳。

あんな最低な出会いだったんでしょ?

その前に知ってる訳…… 。 」


美咲は恥ずかしそうに飲み物を飲み、真相を話す事に。


「 もっと前に会ってたの…… 。 」


「 えぇぇぇーーっ!? 」


奏はまた驚く!!

一体何があったのでしょうか??

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