第14話 一日目終了……


ドライブスルーで少し休憩してまた高速道路を使い、暗い闇の中を走り出しました。

只今の時刻は21:00を過ぎていました。


その頃、会社では?

みんな一平と村田丸の穴を埋めようと、残業している人が多い。

林惠子もその一人でした。


( 先輩達…… 大丈夫かなぁ?

変なとこ怒りやすいから心配。 )


と心配しながら書類整理していました。

その合間には一平からの良い報告があるか確認しては、また仕事に戻るの繰り返し。


「 どうしたの?

浮かない顔して…… 話聞こうか? 」


同僚のモテ男が話をかけてきました。

仕事はイマイチだけど手が早くて有名。

林さんは正直苦手なタイプ。


「 あぁ…… 別に。

全然大丈夫ですよ。

気にして頂きありがとうございます。 」


軽くあしらって仕事に戻ろうとする。


バンッ!!


強く机を叩くモテ男。

その音にビックリする林さん。


「 良くないなぁ〜 。

何でも抱え込むなよ。

俺に相談しなっ? なっ? 」


いきなりの俺様喋り。

嫌な予感がして周りを見ると、やっぱりいつの間にか二人きりに。

だから態度がでかくなったのです。


「 本当に大丈夫ですから。 」


直ぐにまた突き放しました。

変な気を起こされたら迷惑なので、そこだけでも強く断る。


「 もしかして係長の事気にしてます? 」


ビクッ! と動きを止めてしまう。


「 やっぱりぃ〜 !

分かりやすいなぁ。

係長は妻子持ちだよ。

止めとき! 止めとき!

しかもいきなり有給何日も取る、自分勝手な奴だよ?

あんな男の何が。 」


その言葉を聞いて何かが切れた…… 。


バンッ!!!!


さっきよりも強く、激しい音が社内に鳴り響く。

モテ男はビックリして少し林さんから距離を置く。


「 あなたに何が分かるんですか!?

勝手な事言わないで下さい!!

係長は仕方なく休んでるです。

後…… 迷惑なんで。

失礼致します…… 。 」


そう言いすたすたと荷物をまとめて出ていきました。


「 えっ…… えっ!?

いきなりなんでなのよ? 」


モテ男は一人社内に残されてしまいました。


駆け足で会社から出て駅へ向かう。

何故かイライラして駆け足になってしまう。


( 何よアイツ…… 。

イケメンだか何だか知らないけど、私は全く興味ないんだから。

しかも先輩の事好きな訳…… 。 )


といきなり足を止める。

暗い公園に一人缶コーヒー片手に、少しだけ落ち着く為に一休みする事に。

そして一つ昔の事を思い出していました。


会社に入ったばかりのとき…… 。

右も左も分からなくて、何をやればいいのか?

何をしたら怒られるのか?

上手くスムーズに出来ないでいました。

お茶汲みをしても遅くて、上司に皮肉を言われたりして自分を見失い始めていました。


「 林さんお茶汲みすらまともに出来なくて、良くもお給料貰えてますね!

凄い図太い神経です事。 」


同じ女性の先輩にモラハラ発言されても、何も上手く出来ないのは事実なので、悔しくていつも泣きたくなっていました。

唯一の楽しみは屋上で一人お弁当を食べる事。

その日はどうしても悲しくて食欲を失っていて、泣いていました。

あまり大きな声で泣くとバレてしまうので、声を殺して悔しくて泣いてしまっていました。


「 日本パンってなんでないんだろうな? 」


ビクッ! いきなり背後から男の声が。

直ぐにハンカチです涙を拭き、後ろを振り返る。

そこには一平の姿が。

一平は昼休みに空を眺めて横になっていました。


「 …… えっ? あの…… どういう意味ですか? 」


林さんが一平に意味を聞くと、急に立ち上がり近寄って来ました。


「 だって思わない??

フランスパンがあったり、ナンがあるなら日本パンがあったって良いだろ?

もしかして誰も気付いてないのかもな! 」


そう言いながは歯を見せながら笑っていました。

その時は一平とはまだ自己紹介した程度。

林さんは一平が少し変わってる人だと思いました。


「 そうですね…… 考えた事もありませんでした。

パン買ってただ食べてた気がします。 」


変わってると思い、一平を適当にあしらって仕事に戻ろうとする。


「 ウチのとこの茶菓子すげぇ不味くない?

あのカステラ部長が選んだんだけど、どうも口の中の水分持っていかれるんだよね。

でも最近はカステラうまいんだよね。

あれは林さんが選んだのでわ? 」


一瞬ドキッ! としてしまう。

その通りで茶菓子を勝手に林さんが変更していました。

実家が和菓子やだった為、沢山部屋に和菓子があったので黙って自分のとこのカステラと交換していました。

部長が選んだカステラは美味しくなかったからです。


「 えっえっ!?

私がカステラ変えたって、どうして分かったんですか? 」


林さんは当然気になりました。

変えてる所や誰にもこの事は話していません。


「 だって自己紹介のときに、和菓子屋実家でやってるって言ってたじゃないの!

お茶汲み以外基本、茶菓子はいじらないし。

後は林さんの実家の袋、ゴミ箱で偶然見つけたんだぁ。

本当にありがとう。 」


笑いながら話していました。

林さんは誰かにお礼を言われたくて、カステラを変えた訳ではありませんでした。

それでも気付いてくれた一平に、凄く嬉しくて涙目になってしまう。


「 あそこの先輩キツイでしょ?

あぁ言うの良く居るんだよ。

林さんは頑張ってる。

自信を持て! 俺はいつも見てるから。

またキツく言うようだったら、俺がガツンっ! と言ってやるからさ。

あっ! 部長に報告書出すの忘れてた。

先戻るよ。 」


そう言い一平は戻っていきました。

林さんは気持ちが軽くなっていました。

一人でも自分を見ていてくれていた。

それだけで頑張っていて良かった。

そう思いました。


「 係長…… ん? これは? 」


林さんの座っていた椅子に、いつの間にか何か置かれていました。

それは少し形が崩れたお菓子でした。

一枚のメモが添えられている。


( 色々大変だけど頑張ろう!

悩みならいつでも聞くよ。

スーパー係長より。 )


林さんはそのメモを読みながらお菓子を食べる。

我慢してた反動で目から涙が溢れる。


「 ありがとう…… 係長。

もう少し頑張ってみます。 」


林さんはまた頑張ろうと思い、やる気を出して仕事場へ戻るのでした。

次の日から女性の先輩から理不尽に怒られる事は無くなりました。

分からないときは色々教えてくれるようになっていました。

多分、一平が何かしていたのでしょう。


林さんは一平との心暖まる想い出を思い出していました。

モテ男の言う通り、林さんは絶対に想いを告げないが一平に恋をしていたのです。


「 良いんだもん…… 少しだけ片思いさせてもらうから。 」


林さんは早く離婚の危機を乗り越える為に、全力で協力する。

ゆっくりと立ち上がり家へ帰りました。

密かにモテる一平なのでした。


ムクッ!!

一平は車で寝ていたが急に目が覚めて立ち上がる。


( 身体中が筋肉痛だわ…… 。

この車寝心地悪いし。

少しは回復したかな? )


外で一服している二人と合流して、腹ごしらえする事に。

三人はラーメンやご当地グルメを堪能。

こんな旅なのだから少しは楽しまなくてわ!

一平は少しの間はジェイミー人形を忘れ、一時の休息を味わうのでした。


時刻は0:00…… 。

一日目が終わってしまう。

誕生日までに間に合うのか?

そして離婚の危機を乗り越えられるのでしょうか?

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