第13話 最高の友達


電話の相手と合流する為、近くのバーガーショップに行く事に。


「 先輩…… さっきの電話。

誰からですか?

急に黙ったりしてるし。 」


恐る恐る村田丸が聞くと一平は不適な笑みを浮かべる。


「 お前さんにはまだ言ってなかったなぁ。

俺には最高な親友が昔から居てね。

どんな困難だって窮地に陥っても、手を差し伸べてくれる。

最強の親友であり、友が居るのだよ。 」


そう言いながら何かを思い出して笑う。

正直気持ち悪い姿でしたが、そっと流す事にしました。


お店に着くと客席に案内される。

そこにその男が居ました。


「 一平っ! ここ、ここ! 」


その男は親友、荒川健人。

昔からの幼なじみでもある。


「 悪いな相棒っ! にしても来るの早いな? 」


一平は健人が先に来ていてびっくりしました。


「 たまたまここら辺に仕事の用事で居たからな。

それより人形まだ見つからないんだって? 」


健人にこれまでのグダグタの経緯を伝える。

健人は熱心に聞いていました。


「 そうかぁ…… 相変わらずだなお前は! 」


健人は強く一平の背中を叩きました。


「 健坊も相変わらず俺のピンチに駆けつけてくれる。

本当に助かるぜいっ! 」


村田は昭和顔負けの熱い友情を目の当たりにしました。

完全にインドア派で友達がほとんど居ない村田丸には、暑苦しく見えてしまう。

でもほんの少しだけ羨ましくもありました。


「 んまぁ〜 色々大変だけど任せろ!

ここからは俺も加わる。

大船に乗ったつもりで居ろよな。 」


そうして最高の相棒の健人が仲間に加わる。

これで百人力! なのでしょうか?


次にまたおもちゃ屋をしらみ潰しに探す、ローラー作戦を開始!


「 さすがは健坊だぜ! さぁ行こう。 」


一平は健人肩を組みながら車へ。


( なんだかんだ言っても、やってることは何も変わんないじゃないか。

にしても…… 。 )


村田丸は健人の頼もしい姿に、ちょっと格好良く見えました。

その反面…… 一平には絶対言えませんが、少しばかしの違和感を感じていました。

そうして村田丸も車へ。


その後は三人でしらみ潰しにおもちゃ屋を巡り、ジェイミー人形を探しました。

ですがやっぱり見つかりません。

探す意味もないようにも感じる程に…… 。

健人はスマホで何やら検索をしていました。


「 良い作戦を思い付いたぞ。

当てにしてもらいすぎるとあれなんだけど。 」


二人は急にアイディアを提案する健人に耳を傾ける。


「 おもちゃは何処で作ると思う? 」


二人はその質問の意図が分からなく、困惑してしまいます。


「 まぁ待て! アホになった訳ではない。

答えは工場だろ? 何か思い付かないか? 」


二人はあっ! と声を出して何かに気づきました。


「 工場に直に行けばチャンスがある!? 」


一平は車から出て一つの希望に光を見る。

村田丸ももしかしたらチャンスがある。

そう思いました。


「 しかもそこの社長が一代で作り上げた会社で、沢山のおもちゃをそこで製造しているんだ。

もう年配で息子にほとんど権限を譲ってるらしいけど、一平の話を聞かせたらもしかしたら売ってくれるかもしれないぞ?

情に訴えてやろうぜ。 」


っと社長に会えればもしかしたら買える。

そう提案しました。

三人はその希望を胸に秘めて、おんぼろ車で青森へ向かうのでした。


「 ん!? 青森っ!? 」


一平達が住んでるのは東京。

青森までは約700キロ以上…… 。

最初は良いアイディアだと思いましたが、直ぐに一平は我に返る。


「 ちょいちょい待て!

そんな遠くまで行くのかよ?

しかもこんな車で700キロも!?

8時間以上かかるかも知れないし、絶対買える保証もないんだぞ?

その僅かな希望の為に行くのは…… 。 」


一平に迷いと不安が過る。

健人は直ぐに笑いながら肩に手を置く。


「 家族を守りたくないのか? 」


その言葉を言われて弱気な気持ちから、また強い想いと誓いを思い出す。


「 ふっ…… そうだったな。

健坊のお蔭で僅かな希望にでも懸けられる。

さぁ! 行くぜぇ…… 青森へ!! 」


一平と健人は大きく天へ拳を掲げる。


「 うぇっ?? 待って待って!

俺の車では無理ですよ。

もう走るのがやっとで、青森なんて……

頼むから考え直して下さいよぉ。

しかも運転は誰がするんですか!?

よぉ〜 く考えてもらってですね…… 。 」


なんやかんや言いながらも三人を乗せて、おんぼろ車で青森へ。

ガタコトと音を立てて、たまに休ませながらの運転。

もしかしたら8時間以上かかるかも…… 。

着けるだけで奇跡なのかもしれない。

だけど家族の為ならどんな事をしてでも。


( 待ってろよ…… 愛菜。

パパは今、本当に頑張ってるんだから。

絶対に喜ばせてやるんだ…… 。

だから待っててくれよ。 )


三人を乗せてゆっくり、ゆっくりと高速をおんぼろ車は走っていく。

真っ暗の暗闇を…… 。

村田丸はずっと運転しながら愚痴を溢すのでした。


その頃、家では寝る準備をしてお布団に入る愛菜ちゃんが居ました。

ママが絵本を読んで寝かしつける。


「 ママぁ? パパは仕事してるのかなぁ? 」


心配そうに尋ねるとママはニッコリしながら。


「 私達の為にいつも一生懸命仕事してるわよ。

だから早く寝てパパが帰って来たらお祝いしましょ。

もうすぐ愛菜の誕生日なんだから。 」


そう言うと笑い安心してゆっくり目を閉じて眠ってしまう。


「 本当に可愛いわね…… 子供って。

パパは何時帰って来れるのかしら。

にしてもお仕事大変ね…… 。 」


心配しつつ疲れもあってかゆっくり眠りへ。

二人は一平を心配しつつ眠ってしまいました。


( 愛菜…… 美咲…… 。

この星空を見ているかい?

絶対に買って帰るからな。 )


車から夜空を見ながら色々考えてしまう。

これからの事や無事に帰れるのか。


「 感傷に浸ってないでどちらか交代してくれませんかね?

ずっと走りっぱなしでヘロヘロなんですよ。 」


村田丸は不満を溢しながらも、安全運転でゆっくりと青森へ向かう。

一平は全然眠れていなかったので、ゆっくりと眠ってしまいました。


「 村田君は一平の後輩君だそうだね。

何故こんな面倒手伝うんだい?

何の特もないだろうに…… 。 」


健人が村田丸に疑問を投げ掛ける。

村田丸は少し考え。


「 元々は好きな人の連絡先を貰う約束で、今回のお手伝いする事に。

何だかんだとこき使うし、人使い荒いし最悪で。 」


村田丸は不満を吐き出しました。

話は長くなりそうなので、休憩がてらドライブスルーで夜の休息をすることに。

起こさないように車の外で、コーヒーを飲みつつ話をする事に。


「 最初は横暴で偉そうであまり好きじゃありませんでした。

くしゃみはかけるし、パシりなんてしょっちゅう。

でも…… 。 」


村田丸は少し言葉に詰まる。


「 俺のミスで盗人集団に絡まれて…… 。

お金出さないとヤバい状態で。

そしたら先輩はどうしたと思います? 」


健人は笑いながら答えました。


「 断固拒否して戦った…… んだろ? 」


幼なじみなので一平の事は良く知っていました。


「 そうなんです…… ぼこぼこにされても、先輩は負けずに絶対払いませんでした。

結局は気絶してお金は盗られました。

でも先輩は全く俺を怒りませんでした。

何でなんですかね? 」


村田丸はずっと気にしていました。


「 アイツは一度も悪に屈した事はない。

誰かいじめられてると、誰も助けられない場面でもアイツは迷わずに飛び込む。

俺にとってもアイツは正義のヒーローだ。 」


としみじみ語りました。

村田丸も黙って聞いていました。


「 ただアイツは何か頑張ってると、その一つの事に真剣になるから何処かおろそかになる。

今回もそれが原因だろう。

家族の為、家族の為と思ってやってたのに、家族との時間が少なくなってたんだろうな。

笑っちゃうな! 」


健人は笑いながら話しました。

村田丸も色々考えてしまう。


「 俺は…… 先輩はカッコいいと思います。 」


村田丸は目を輝かせながら話しました。

健人はそれを聞いて笑う。


「 ああ…… そうだな。

バカだけどカッコいい。

いつも一平はカッコいいよな…… 。 」


そう話す健人は何やら悲しそうな表情に。

村田丸はその訳を聞けませんでした。

村田丸は健人の事も好きになりました。

白い息を吐きながら寒い夜を堪能するのでした。

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