第12話 こぼれたカレー


怪しいおじさん達に囲まれる村田丸。


「 俺達のリスナーを盗んだ罪を裁く! 」


謎の裁きを受ける事に…… 。

男達はゆっくりと近付いて来る。

沸点が上がっていて殴るようにしか感じられない。


「 待って、待って!

俺に罪はありませんよ。

どうか許して下さい…… 。 」


謝っても止まろとしない。

もう八つ裂きにされてしまう…… 。

そう確信する。


「 なら…… 金払え! 10万。

それで許してやるよ。 」


そう言われて村田丸は考える。


( そうだ…… 払えば楽になる。

ボコられないし、痛いのは財布だけだ。

あの頃みたいに…… 。 )


そのとき過去を思い出していた。

学生の頃に村田丸は体型と性格の弱さで、いじめられていました。

殴られたりするのが嫌で、お金を払う事で助かってきました。

月のお小遣いやお年玉。

ほとんどがいじめっこに取られていました。

そんな悲しいあの頃…… 。


その記憶が脳裏を過る。

また耐えれば助かる…… 。

何度も自分に言い聞かせ


「 払う必要はないぞ!! 」


その声でみんなは後ろを振り向く。

そこには息を切らした一平の姿が。


「 お前らみたいに非常識な連中は、結局金欲しさにやってんだろ?

でもコイツは違う!!

村田丸は…… 友達が欲しかったんだ。 」


村田丸の心に突き刺さる。


「 おめぇらみたいにコイツは人を傷つけない。

ネットを通してみんなと繋がりたい。

そう思ってやってんだ。

お前らとは立つ土俵が違うんだよ。 」


一平は全然ビビる事なく訴えかける。

イライラするおっさん達。


「 誰だお前は!? 」


そう言われてクスクスと笑う。


「 ただの通りすがりのそいつの友達だ! 」


村田丸は嬉しかった。

一平が助けてくれている。

あの頃苦しかった自分に、手を差し伸べるかのように。


「 村田丸ぅーーっ!!

お前はこんなポンコツ野郎に払いたいか!?

お前が頑張って稼いだ金だぞ。

どうしたいか決めろ。

戦うなら俺は全力で助けるから!! 」


( 俺は寂しいかったんだ…… 。

だから俺は人見知り凄いのに動画を撮ったんだ。

そしていつの間にか沢山見て貰えるようになって。

本当の友達が欲しくて…… 。 )


村田丸は膝をついて泣いてしまう。

心の何処かで突っ掛かった何かが取れた気持ちに。


「 おっ…… 俺は…… 。

俺は払わないっ!! お前らなんかに!

悪い事なんかしてないからっ!

逃げるもんかぁーーっ!! 」


クチャクチャな顔で鼻水を流し、強い意思を伝えました。

あの頃の自分とは違う!

もう逃げたくない。

その強い決意を示しました。


「 最高だぜ…… カレー伯爵。 」


一平はその決意を聞いて喜びました。

あんな物事を強く発言した村田丸を見て、本当に嬉しく思いそして成長する姿に嬉しく思いました。


「 金出さないなら仕方ない…… 。

おめぇーーらっ! 袋叩きにしてやれぇ!! 」


凄い勢いで迫るおっさん達。

ビビってしまう村田丸。

直ぐに一平が村田丸の元へ。

そして小声で話しました。


「 安心しろ…… 無抵抗な人間をぼこぼこに出来ると思うか?

俺なら出来ないね!

だから少しだけ我慢しろ。

少し殴られるだけだ。

絶対に屈しないからな? 」


村田丸は少し気が楽になりました。

その通りだと思ったからです。

どんな悪い奴でも無抵抗な人をぼこぼこに出来る筈もない。


「 俺は悪に屈しない!

かかってこいっ!! 」


そう言うと想像の三倍以上の勢いでぼこぼこにされてしまう。

ここまで妬みや僻みが人を悪くするのか?

と思うくらいの勢いに。

一平もボコられながらも思いました。


( ぐぅへっ!! すげぇ…… 。

こんな無抵抗をやれるとは。

さすがは楽して稼ごうとしてる奴らは違うわ。

でも待てよ…… アイツらが怒ってるのは村田丸。

村田丸には悪いが俺は少しだけやられるだけ。

耐えろ…… 村田丸…… 。 )


なんとも無責任な事を考えている。

少しでも痛みから助かる…… 。

そう思いました。

ですが全く関係なく一平にも同様に怒っていて、蹴りやパンチ。

顔や腹に何度も貰いました。

そして強烈な一撃が顔に入る。


「 ぐぅおーーっ!!

…… ゴミ野郎は違う…… ぜいっ。 」


そうして二人は気絶してしまう。

そして疲れて気が済んだのか、おっさん達はゆっくり帰って行きました。

二人は出血や打撲により気絶していました。


夕方…… 。

ふと目が覚めて起き上がる。

隣を見ると泣いている村田丸が居ました。


「 どうした…… ?

そんなに痛いのか? 」


一平がそう言うと大きく首を振る。


「 ジェイミーが…… ジェイミーが。

ぐすっ! ジェイミーがぁーーっ! 」


ふらふらな体を起こして一平が周りを見ても、ジェイミー人形は見当たりません。


「 俺のせいで…… 俺のせいで盗られたんです。

すみません…… 本当にすみませんっ!! 」


何度も頭を下げました。

泣いて謝っても許して貰えない。

分かっていてもやれる事は限られている。

何度も、何度も頭を下げました。

それを見てゆっくり近付いて来る一平。


( ヤバい…… 殴られる!! )


そう確信したそのとき!?

ゆっくりと村田丸の肩に手を乗せました。


「 えっ…… ? 」


村田丸は何も理解出来なくなっていました。

一平は笑いながら手を退かす。


「 本当アイツら好き勝手やりやがってな。

社会人たるもんはケンカなんかしなくていい。

やられたら被害届出して倍返しだ。

にっしっしっし!! 」


そう言いながら笑いました。

直ぐに村田丸は立ち上がる。


「 ジェイミー人形盗られたんですよ!?

あんなに頑張って買ったのに…… 。

何で怒んないんですか!? 何で殴らないんですか?

俺は…… 納得出来ません。 」


一平は全く顔色を変えずに言いました。


「 村田丸は充分頑張ってくれた。

今回のフォロワーに呼び掛けしたから、あんな輩も来てしまった訳だし。

むしろ悪かったな。

俺は感謝しかないよ? 」


村田丸は一平の全く気にしていなくて、逆に自分を気にしてくれてる姿に、格好いいと思いました。

そして一枚の紙を一平に渡す。


「 先輩…… これは返します。 」


そうして手渡ししたのは林さんの連絡先の書いた紙でした。


「 お前…… これは。 」


「 決めました…… ジェイミー人形見つけて、その後に貰います。

だからそれまで持ってて下さい! 」


そう言われて一平はポケットにしまう。

そして二人は笑いました。

ぼろぼろになってしまったけど、村田丸は少し気持ちが良かったのです。

逃げずに戦いあの頃の自分より成長出来た、そんな気がしました。


二人の友情は更に強くなったと感じるのでした。

二人はヘロヘロになりながら荷物を拾う。

一平はパパのナマケモノを見つけました。


「 やっぱりお前は人気ないのね。

盗まれもしないし…… 。 」


悲しく自分に似たナマケモノを、拾いあげて車に戻りました。

そしてまた、オススメの穴場のおもちゃ屋へ走りました。


その少し後車内では?


「 とか言ってはみたものの、今回は後少しまでいったのに失敗かぁ。

多分アイツらに転売されてるだろうな。 」


車内で愚痴を溢す一平。


「 ちょっと先輩っ!

さっきの熱い友情はどうしたんすか? 」


村田丸もさっきまでの熱い友情が嘘かのような態度に、つかさずにツッコミを入れる。


「 熱い友情なんてあったって、離婚されたらおしまいだぞ?

タイムリミットは迫ってるし。

はぁ〜〜 。 カレー大臣だかも大したもんじゃないぜ。 」


「 カレーライス男爵!

わざと間違えないで下さいよ。 」


と焦りと冗談を交えつつまた旅は続く…… 。

とそこでスマホに着信が。


「 もしもし…… おっ! うん…… 。

実は全然ダメダメでさぁ…… 。

本当にか!? 助かる。 」


一平は電話をしながら喜びを隠せない。

そして電話を切りました。


「 誰からですか? 」


村田丸がそう言うと一平はクスッと笑う。


「 アイツが来てくれる…… 。

俺の最高の相棒…… 。

アイツが来たら百人力だぜ。 」


一体その人物は誰なのか?

ジェイミー人形は手に入れられるのか?

まだ旅は続きそうです…… 。

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