第11話 愛しのジェイミー人形


裏道を駆け抜けて目的地へ。

そこは昔からあるようなおもちゃ屋さん。

日は差し込まずに暗い雰囲気の場所にありました。

二人は緊張しながら店内へ。


「 いらっしゃいませ…… どうぞゆっくりしていってくださいね。 」


優しそうなお爺さんが接客に。

二人は懐かしい匂いと雰囲気の店内に、言葉を失ってしまいました。

店内をゆっくり見て回る。

昔見ていたアニメのおもちゃや、今のおもちゃと色々ありました。


( 凄い…… 全然売れてないのかな?

人もあんまり来なそうだし。

でもおもちゃにホコリ一つ乗ってない…… 。

お爺さんは毎日掃除してるんだなぁ。 )


一平は見えない所やおもちゃにホコリが乗っても、直ぐに綺麗にしていたのです。

自分のお店やおもちゃを愛しているのです。


「 お爺さん。 あのぉ…… 。

ぐ〜たらファミリーの人形ありますか? 」


そう言うと笑顔でおもちゃの置いてある棚まで案内されました。

そこには綺麗に飾られたぐ〜たらファミリーの人形が。


「 何か凄い人気なんだってのう。

昔からの付き合いの業者さんだから、ウチには決まった量を持ってきてくれるんです。

どうぞお好きなだけ御覧下さい。 」


そう言ってお爺さんはレジに帰って行きました。

そして二人は静かな空間でジェイミー人形を見詰める。


「 先輩…… やりましたね、俺達。 」


村田丸が言うと一平は静かに一言。


「 いや…… まだだ。

俺はこの前は買う前に謎の強いおばちゃんに、無理矢理取られてる。

最後のお会計までがこの任務だ。 」


そう言いながらジェイミー人形に手を伸ばす。

あまりにも神々しい姿に、一平はゆっくりと抱き締める。


( うわぁ〜〜 っ。 変な客が来たもんだ。

でも相当あの人形が好きなんだなぁ。 )


お爺さんはニコニコ笑いながら、レジ周りの掃除をしました。


「 先輩! 先輩! さすがにやりすぎです。 」


村田丸は気持ち悪い行動をする一平を揺すって、現実の世界に引き戻しました。


「 おっ…… つい夢の世界に。

本当にこれがジェイミー人形かぁ。 」


ゆっくりとかごに入れて他の商品も見て回る。


( うわっ!! こいつは…… 。 )


一平が見つけたのは、何処の店でも売れ残っている不人気人形。

ナマケモノのパパ。

だらしなくていつもママに怒られている、どうしようもないナマケモノ。

一平はゆっくりとナマケモノを手に。


「 可哀想だし何だか他人のように思えなくてはな。

家族はみんな一緒だ! なぁ? ナマケモノ。 」


そう言ってついでにナマケモノも買うことに。

レジに持って行きお会計へ。

二つの合計金額を出して、おつりを受けとりました。

お爺さんからおつりを受け取ると、ゆっくりと涙を流しました。

後ろにいる村田丸もやっと林さんの連絡先を貰えると思うと、涙が溢れてきました。

お爺さんは長年の接客対応により、笑顔で対応しました。


( 本当に…… 気持ち悪い。

今日は早く閉めるとしようかのう。 )


店長のお爺さんからは変わり者扱いされましたが、やっとの事でジェイミー人形と+パパのナマケモノを手に入れました。

二人は人形が入った袋を持ちながら、あまり人の居ない商店街の中を歩きました。


「 先輩っ先輩っ! 約束の…… 。 」


村田丸がそう言うと一平は一枚の紙を手渡す。


「 村田丸…… お前さんは凄かったよ。

お前が居なかったら離婚されてたかも。

ありがとうな…… 。 」


二人は染々話しながら、近くの高いところから街を見渡しました。

美味しいホットドッグとコーラ。

揚げたてのポテト。

二人は密かに幸せを感じるために、宴をあげていました。


「 かんぱぁ〜〜いっ! 」


そう言ってコーラの入った紙コップを、激しくぶつけ合いました。

二人は海賊気分!

財宝を手に入れて祝杯をあげていました。


「 んっ…… ぐっ…… ぐっ!

うめぇ〜〜 いっ!! 」


あまりにも美味くて、飲んだ後に激しく息を吐きました。


「 先輩っ! すげぇ唾かかりましたよ!

でも良いかぁっ?

あっはっはっは!! 」


二人は祝杯を楽しみました。

鼻にケチャップを付けたり、ポテトを投げて口でキャッチしたり。

まるで子供のような二人…… 。


「 がっはっはっは!! 」


一平の笑いも止まりません。

そして一平はママに電話を一本入れる為、そこから少しだけ離れる事に。

村田丸も一段落して草むらに横たわり、達成感に酔いながら景色を堪能する。


ぶるぶる〜〜 っ! ぷつ!


「 もしもしあなた? どうかしたの? 」


愛する奥さんが電話に出る。


「 オレオレ! ちょっと一段落してね。

もしかしたら早く帰れるかも! 」


そう言って喜びを隠しきれずに話しました。

奥さんも何故か嬉しそうに話す一平に、そうか、そうかとそこには触れずに、優しく聞いてくれていました。


色々話している中で話はカレーライス男爵の話へ。


「 俺の部下の村田丸って居たろ?

あいつは今動画主の中でも人気な、カレーライス男爵だったんだぞ?

凄くないか? 俺良く分かんないけど、有名人みたいなの近くに居て興奮しちゃって。 」


そう言いながら興奮を隠しきれずに、奥さんにその喜びを分けたくて必死に話しました。


「 カレーライス男爵??

あぁ、あの365日カレー食べてるとかで良く分かんないけど人気な人かな? 」


全然興奮せずにさげすむ応対。

一平は全く分かっていないと思い、どうにか分かってもらおうと話しました。


「 カレーライス男爵って凄いんだね。

そう言えばアンチの人達が凄いって良く聞くなぁ。

この前も殺害予告とか、イタズラされたとか良く聞くけど大丈夫なのかしら? 」


初耳の噂の話を聞きました。


「 そりゃ良くある事だよ!

有名な動画主になると良くあ…… るんだ。

多分…… そろそろ仕事が!

またかけるからね。 愛菜に宜しくね! 」


そう言い直ぐに電話を切りました。

いきなり切ったのには理由が…… 。


( アンチだと!? …… 嫌な予感が!

こんな所でのんびりしてないで早く帰ろう。

俺の嫌な勘は…… 当たる!! )


そして直ぐに村田丸の元へ。


その頃村田丸は沢山食べすぎて、妊婦さながらのお腹に変貌していました。


「 んぷっ! もう食べれんっ…… うぷ!! 」


妊婦のようにお腹を大きくして、草むらで重たいお腹で横たわる。


( 林さん…… 今回の一件で俺を見直すかなぁ?

両思いになれるかなぁ? )


と妄想を膨らませてニヤニヤしていました。


「 おいっ!! カレーライス男爵! 」


いきなりドキツい罵声のような声で呼ばれる。

急に大声で耳元で呼ばれたので、びくっ! として起き上がる。


「 ふぁいっ!? 人違いでは? 」


自分を呼んだ男達は中年で金髪や、紫とか奇抜な髪色の男達。

何処からどう見てもヤバそうな連中。

普通の仕事をしていたら働けない髪色の人ばかり。

こう言う人達が怒ってるときは構わないに限る。


「 俺を知らねぇのか!? あっ? 」


紫のおっさんは言いました。

よぉ〜く見ても見覚えがありません。


「 俺は登録者500人の紫芋だ! 」


「 えっ!? 紫芋?? 」


それは同じ動画配信者。

だが圧倒的に村田丸より少ない。


「 でもその紫芋さんが何のご用で?? 」


困惑している村田丸。

それもそのはず、全くの面識がなかったからです。

すると金髪のおっさんが前に。


「 俺は登録者700人の金のタピオカ。 」


次に緑の男が。


「 俺はミックスベジタリアン! 」


次々に自己紹介していきました。

村田丸は何が何だか分かりません。

そしてリーダー的で偉そうな男、紫芋が凄い剣幕で口を開く。


「 おめぇが動画配信してから俺らの動画、全然見られなくなったんだわ。

あんなつまんないのにみんな夢中になって。 」


なんと! 彼らの正体は、低視聴配信者のひがみだったのです。

解説すると村田丸は敬語で、みんなに分かりやすくカレーの魅力を伝えたりしている。

対して彼らはぶっちゃけたり、過激に店の料理をレビューしたりとやりたい放題。

視聴者は最初は面白く見ているが、段々とマナーの悪さに嫌気をさして見るのをやめてしまう。


そんな視聴者のほとんどはカレーライス男爵の元へ。

これが登録者が多くなった理由でした。


そして何故村田ま…… カレーライス男爵の元に現れたのか!?

そして一平は凄いスピードで村田丸の元に走って行くのでした。

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